REVIEW

ミッシング【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ミッシング』石原さとみ

REVIEW

𠮷田恵輔監督、石原さとみ主演の本作は、行方不明になった6歳の娘を必死で探す夫婦と、その姿を報道するテレビ局の人間を通して、社会の歪みを映し出しています。娘が行方不明になってからなかなか手掛かりが掴めず、情報を集めるにはテレビの報道に頼るしかないと必死な沙織里(石原さとみ)は、焦りばかりが募り、ネットの書き込みも見ずにいられず、どんどん精神的に追いやられていきます。一方、沙織里達を報道する砂田(中村倫也)は、沙織里達に協力したい半面、大衆ウケの良いネタを求める上司との板挟みで葛藤します。そんななか、思わぬ人物に疑いがかかったり、手掛かりになりそうな状況が出てきたり、沙織里達は周囲で起こる出来事に翻弄されていきます。

映画『ミッシング』中村倫也/小野花梨/細川岳

幼い娘が突然いなくなってしまった夫婦を描いているので、どうしても最終的に娘がどうなったのかを知りたくなるところですが、物語の軸は情報社会の闇、そして報道の在り方です。映画公式資料の𠮷田監督のコメントによると、最初の構想では、主人公は石原さとみが演じた森下沙織里ではなく、その弟の土居圭吾(森優作)だったそうです。構想は『空白』制作中からあり、『空白』の登場人物との繋がりのあるストーリーにする予定だったところ、現状の設定の一部分を思い付き、沙織里がメインのストーリーに発展したとのことです。また、脚本の骨子ができた段階で、スターサンズの故・河村光庸プロデューサーに話したところ、マスコミの存在に触れる部分に興味が示されたことから、𠮷田監督も「『空白』で描き切れなかったマスコミの描写を掘り下げたい」という考えに至ったとあります。スターサンズの故・河村プロデューサーは、藤井道人監督の『新聞記者』を企画・製作された方です。社会に問題提起をする本作の姿勢にもその精神が受け継がれていると感じます。

映画『ミッシング』石原さとみ

本作では、石原さとみ、青木崇高、森優作、中村倫也の演技力が存分に発揮されていて、個々のキャラクターの心情がリアルに伝わってきます。良い意味で大変重い映画です。リアルにきついし辛いです。だからこそ、劇中で沙織里達に浴びせられる酷い仕打ちが平然と起きてしまっている社会の闇深さを実感します。

デート向き映画判定

映画『ミッシング』石原さとみ/青木崇高

当てもなく娘を探し続けるなかで、夫婦のスタンスにもズレが出てきたり、生々しい様子が描かれています。私達がこうした問題に直面する確率は低いとしても、非常時こそ夫婦でお互いを理解できるかどうかが試されるんだなと客観視できます。かなりシュールなムードになりそうですが、綺麗事では済まされない状況になった時でも協力できそうかどうか、2人で一緒に観ながら各々想像してみてください(苦笑)。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『ミッシング』石原さとみ/中村倫也

SNSやテレビ報道などで情報がどういう風に扱われ、ねじ曲げられていくのか、その実態を知ることができます。情報源にも、情報の先にも生身の人間がいて、深く傷付いているかもしれないという想像力を働かせるきっかけになります。また、親にとって子どもの存在がどれだけ大きいかも実感できると思います。

映画『ミッシング』石原さとみ/青木崇高/森優作/中村倫也

『ミッシング』
2024年5月17日より全国公開
ワーナー・ブラザース映画
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

©2024「missing」Film Partners

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年5月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ 心理学から観る映画59:研究倫理に反する実験とその被害『エクスペリメント』『まったく同じ3人の他人』

『まったく同じ3人の他人』というドキュメンタリーを観ました。生き別れた三つ子が再会する感動のストーリーかと思いきや、驚愕の背景を知り、研究倫理について改めて考えさせられました。そこで今回は研究倫理をテーマとします。

映画『コンビニ・ウォーズ~バイトJK VS ミニナチ軍団~』ヴァネッサ・パラディ ヴァネッサ・パラディ【ギャラリー/出演作一覧】

1972年12月22日生まれ。フランス出身。

映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮 ブルーボーイ事件【レビュー】

高度成長期にあった1965年の東京では、街の浄化のため、警察はセックスワーカー達を厳しく取り締まっていました。ただ、セックスワーカーの中には性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けて女性的な体をした通称ブルーボーイが…

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 君の顔では泣けない【レビュー】

高校1年生の夏、坂平陸(武市尚士)と水村まなみ(西川愛莉)はプールに一緒に落ちたことで体が入れ替わってしまいます。2人はすぐに元に戻ることができず15年を過ごし…

映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト スプリングスティーン 孤独のハイウェイ

物語の舞台は1982年。ブルース・スプリングスティーン(ジェレミー・アレン・ホワイト)は、名声を手に入れながらも、葛藤を抱えて…

映画『2つ目の窓』松田美由紀 松田美由紀【ギャラリー/出演作一覧】

1961年10月6日生まれ。東京都出身。

「第38回東京国際映画祭」クロージングセレモニー:受賞者 東京グランプリは『パレスチナ36』!第38回東京国際映画祭ハイライト

2025年10月27日(月)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕したアジア最大級の映画の祭典である第38回東京国際映画祭が、11月5日(水)に閉幕。今年も個性豊かな作品が多数出品され、さまざまなイベントが実施されました。以下に、第38回東京国際映画祭ハイライトをお届けします。

映画『平場の月』堺雅人/井川遥 平場の月【レビュー】

朝倉かすみ著の同名小説を実写化した本作は、『ハナミズキ』『花束みたいな恋をした』(2021年)などを手がけた土井裕泰が監督を務めて…

映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル ぼくらの居場所【レビュー】

カナダのトロント東部に位置するスカボローを舞台に、さまざまな背景を抱えた3組の親子の姿を…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  2. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  3. 映画『おーい、応為』長澤まさみ

REVIEW

  1. 映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮
  2. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人
  3. 映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト
  4. 映画『平場の月』堺雅人/井川遥
  5. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP