REVIEW

Rodeo ロデオ【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『Rodeo ロデオ』ジュリー・ルドリュー

主人公のジュリアは、バイクをこよなく愛しています。彼女は金持ちを騙してバイクを盗む犯罪を繰り返しています。ある日、盗んだバイクで走っていたところ、ヘルメットを被らずアクロバティックな運転をしているバイカー集団に出会います。ひょんなことから彼等のアジトに踏み入れたジュリアは、バイクの闇の取引に加担していきます。でも、バイカー集団のメンバーはジュリア以外男性ばかり。血の気の多い男達の中には、ジュリアを生意気な女として見下す者もいます。そんな集団の中でジュリアが居場所を見つけようとする姿を映し出しています。
映画が始まるなり荒々しい態度で登場するジュリアはどんな人物なのか、まずそこが気になり物語に引き込まれます。物語が進むにつれジュリアはただただバイクが好きな人であることが伝わってくると同時に、周囲はふとした瞬間に彼女を“女”としてカテゴライズし、同等に扱おうとしていないことがわかります。そんな男性達の態度に屈せず我が道をゆくジュリアの姿は潔く、男性の前では安易に笑顔を見せないジュリアのことをもっと理解したいという気持ちが湧いてきます。
ジュリアが平気でバイクを盗んでしまうことに対しては正直共感できない部分もあります。ただ、ふとこれが男性キャラクターだったらどう見えるのだろうと考えました。共感できないというのは同じだとして、男性キャラクターならこういう設定の作品はこれまでもたくさんあり、それほど違和感はなかったかもしれません。それはつまり、私も無意識にジュリアを女性にカテゴライズして観ていたということです。ジュリアには男性的な面も女性的な面もあって、どちらかにカテゴライズする必要はありません。時代の変化によってそれが頭ではわかっていても、男女で分類するという考え方が無意識に私の中に擦り込まれてきたことを実感しました。
本作の監督ローラ・キヴォロンは自らノンバイナリーを公言している方です。本作には余計な説明もなく、意外な結末に唖然とする方もいるかもしれません。だからこそ、キヴォロン監督が本作にどんな思いを込めたのか想像せずにはいられません。個人的には、まだまだジェンダーレスな社会になっておらず、不自由な世の中であることを象徴する結末であると捉えました。皆さんもさまざまな解釈をもって観てみてください。

デート向き映画判定
映画『Rodeo ロデオ』ジュリー・ルドリュー

ジュリアの他に、オフェリーの物語も印象的に描かれています。彼女は夫との関係でとても窮屈な思いをしています。恋愛関係においては、オフェリーの様子を観ることでいろいろと思うところが出てくると思います。束縛が厳しい相手と付き合っていたり、相手の価値観に押し込められている感覚に悩んでいる方は、1人でじっくり観て自分達の関係を客観視するのも良さそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『Rodeo ロデオ』

バイカー達のアクロバティックな運転は映画で観る分には楽しさもありますが、言うまでもなく絶対に真似をしないようにお願いします。ストーリーについては、まだアイデンティティを模索中のティーンの皆さんは共感できる部分が大いにあるのではないでしょうか。周囲に流されず、自分は自分という態度を貫き通すジュリアの姿に勇気をもらえる部分もあるでしょう。

映画『Rodeo ロデオ』ジュリー・ルドリュー

『Rodeo ロデオ』
2023年6月2日より全国順次公開
リアリーライクフィルムズ、ムービー・アクト・プロジェクト
公式サイト

© 2022 CG Cinéma / ReallyLikeFilms

TEXT by Myson

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚 映画に隠された恋愛哲学とヒント集80:おしどり夫婦こそ油断禁物!夫婦関係の壊れ方

どんなに仲が良く、相性の良さそうな2人でも、夫婦関係が壊れていく理由がわかる3作品を取り上げます。

映画『マルドロール/腐敗』アントニー・バジョン マルドロール/腐敗【レビュー】

国民を守るためにあるはずの組織が腐敗し機能不全となった様を描いた本作は、ベルギーで起き、1996年に発覚したマルク・デュトルー事件を基に…

映画『消滅世界』蒔田彩珠 消滅世界【レビュー】

ジェンダー、セックスのどちらにおいてもこれまでの常識を覆す価値観が浸透した世界を描いた本作は、村田沙耶香著の同名小説を原作として…

映画『ナイトフラワー』森田望智 森田望智【ギャラリー/出演作一覧】

1996年9月13日生まれ。神奈川県出身。

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚 佐藤さんと佐藤さん【レビュー】

同じ佐藤という苗字のサチ(岸井ゆきの)とタモツ(宮沢氷魚)は、セリフにも出てくるように「結婚しても離婚しても佐藤」です…

映画『楓』福士蒼汰/福原遥 『楓』カバーアーティスト、十明による“楓”生歌唱付き&サプライズゲスト登壇!特別試写会 9組18名様プレゼント

映画『楓』カバーアーティスト、十明による“楓”生歌唱付き&サプライズゲスト登壇!特別試写会 9組18名様プレゼント

映画『兄を持ち運べるサイズに』柴咲コウ/オダギリジョー/満島ひかり/青山姫乃/味元耀大 兄を持ち運べるサイズに【レビュー】

原作は、村井理子が書いたノンフィクションエッセイ「兄の終い」…

映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ 『楓』旅からはじまるトラベルポーチ 3名様プレゼント

映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ 3名様プレゼント

映画『見はらし世代』井川遥 井川遥【ギャラリー/出演作一覧】

1976年6月29日生まれ。東京都出身。

映画『WEAPONS/ウェポンズ』 WEAPONS/ウェポンズ【レビュー】

ある町から突然17人の子どもが同時に行方不明になるところから始まる本作は、“IT/イット”“死霊館”シリーズなど、傑作ホラーを多数世に送り出してきた…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. 映画『マルドロール/腐敗』アントニー・バジョン
  2. 映画『消滅世界』蒔田彩珠
  3. 映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚
  4. 映画『兄を持ち運べるサイズに』柴咲コウ/オダギリジョー/満島ひかり/青山姫乃/味元耀大
  5. 映画『WEAPONS/ウェポンズ』

PRESENT

  1. 映画『楓』福士蒼汰/福原遥
  2. 映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ
  3. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
PAGE TOP