REVIEW

ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』マイウェン/ジョニー・デップ

REVIEW

ルイ15世の最後の公式な愛人ジャンヌ・デュ・バリーの実話を映画化。18世紀のフランスで、貧しい家柄の私生児として生まれたジャンヌは、母が仕えていた貴族に可愛がられ、教養を得て育ちます。ただ、成長したジャンヌに夫が誘惑されることを恐れた夫人は、ジャンヌ親子を屋敷から追い出してしまいます。生きるために働くとしても選択肢が限られているなか、高級娼婦となったジャンヌ(マイウェン)は、デュ・バリー伯爵(メルヴィル・プポー)と出会い、愛人となります。さらに、ジャンヌはルイ15世(ジョニー・デップ)に会うようお膳立てされ、王に見初められて愛人となります。ジャンヌは周囲の貴族達に侮蔑されながらも自由奔放に振る舞い、貴族達から反感を買います。それでも王の寵愛によって、宮殿での立場を得ますが、安泰とはいかない事態になっていきます。
爵位がないジャンヌが王室に入るという類い希な歴史を描いた本作を観て、さまざまな思いが浮かんできます。サクセスストーリー、シンデレラストーリーといえる一面があるとしても、現代の価値観で観ると、女性の立場の無さを痛感させられます。貧しければ女性が選べる職業は限られていて、貴族であっても政略結婚をさせられるか、修道院に入るという選択肢しかない時代です。当時の女性は何に幸せを見いだしていたのかと思いながら観てしまうと同時に、そんな時代にあっても、階級の垣根を越えて、自分らしく生きたジャンヌの姿は清々しく見えます。
女性同士の醜いマウンティングも、当時女性達が置かれていた状況からすると、必然的に生まれたと思えます。“誰の隣にいるか”でしか評価されない時代に、女性が社会に認められるための価値観はあまりにも限られています。ほぼ一つの価値観しかないなら、そこで戦うしかありません。でも、幼い頃から知識と教養を身につけてきたジャンヌは、地位に縛られていなかったからこそ、彼女自身が培ってきた知恵を武器に、勇ましく生きられたのかもしれません。本作は伝記として楽しむのはもちろんのこと、今を生きる女性達が背負ってきたもののルーツを紐解く視点で観ても興味深い作品です。

デート向き映画判定

映画『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』マイウェン/ジョニー・デップ

身分が違えど、王との深い愛を紡いだ女性の物語なので、ロマンチックな展開もあります。自分達に置きかえて観るというよりは、客観的に観る方のほうが多いと考えると、デートで観ても気まずいことはなさそうです。ただ、女性としては、物語の舞台となる時代に、女性が男性の所有物のように扱われる様を観ると複雑な気分になるかもしれません。相手が自分と同じようなスタンスで観るかどうかを予想して、一緒に観るか検討すると良いでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』マイウェン

本作の舞台はマリー・アントワネットがいる時代で、皆さんが学校で学ぶ世界史でいえば、ハイライトが当たる時代です。本作のように人間ドラマを介して観ると、一層興味が湧きやすく、歴史上の人物も印象に残ると思います。エンタテインメントとして楽しみながら、同時に世界史の興味喚起のきっかけとしても観てはいかがでしょうか。

映画『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』マイウェン/ジョニー・デップ

『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』
2024年2月2日より全国公開
ロングライド
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

©︎ Stéphanie Branchu – Why Not Productions
©︎ 2023-WHY NOT PRODUCTIONS-FRANCE 2 CINEMA- FRANCE 3 CINEMA-LA PETITE REINE-IMPALA PRODUCTIONS

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年1月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『キャンドルスティック』阿部寛 キャンドルスティック【レビュー】

金融をテーマとした映画に、なぜ“『キャンドルスティック』というタイトルが…

映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット 映画好きが選んだDCコミックス映画ランキング

今回は正式部員の皆さんに好きなDCコミックス映画について投票していただきました。“スーパーマン”や“バットマン”など人気シリーズが多くあるなか、上位にはどんな作品がランクインしたのでしょう?

映画『夏の砂の上』オダギリジョー/髙石あかり/松たか子/満島ひかり 夏の砂の上【レビュー】

松田正隆による戯曲を映画化した本作は、演出家の玉田真也が監督、脚本を務め、オダギリジョーが…

映画『DROP/ドロップ』メーガン・フェイヒー DROP/ドロップ【レビュー】

主人公のバイオレット(メーガン・フェイヒー)は、幼い一人息子を育てるシングルマザーで、壮絶な過去を乗り越え…

映画『君がトクベツ』畑芽育 畑芽育【ギャラリー/出演作一覧】

2002年4月10日生まれ。東京都出身。

映画『この夏の星を見る』桜田ひより この夏の星を見る【レビュー】

2020年、新型コロナウィルス感染症が世界中に広まった1年目、私達の日常は大きく変わりました。本作では、その2020年に、長崎県、茨城県、東京都に住む中高生達が過ごした日々…

映画『国宝』吉沢亮/横浜流星 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年6月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年6月】のアクセスランキングを発表!

映画『ナチス第三の男』ジャック・オコンネル ジャック・オコンネル【ギャラリー/出演作一覧】

1990年8月1日生まれ。イギリス出身。

映画『ハルビン』ヒョンビン ハルビン【レビュー】

『KCIA 南山の部長たち』『インサイダーズ/内部者たち』のウ・ミンホが監督と、『ソウルの春』の制作スタッフとタッグを組んだ本作は…

映画『ハルビン』ジャパンプレミア:ヒョンビン、リリー・フランキー、ウ・ミンホ監督 リリー・フランキーがヒョンビンの優しさを感じたエピソードとは?『ハルビン』来日ジャパンプレミア

ヒョンビン主演のサスペンス・アクション映画『ハルビン』が、7月4日より全国公開となります。その公開を記念し、ヒョンビンとウ・ミンホ監督が来日し、さらに本作で伊藤博文役を演じたリリー・フランキーが登壇するジャパンプレミアが行われました。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット 映画好きが選んだDCコミックス映画ランキング

今回は正式部員の皆さんに好きなDCコミックス映画について投票していただきました。“スーパーマン”や“バットマン”など人気シリーズが多くあるなか、上位にはどんな作品がランクインしたのでしょう?

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』トム・クルーズ 映画好きが選んだトム・クルーズ人気作品ランキング

毎度さまざまな挑戦を続け、人気を博すハリウッドの大スター、トム・クルーズ。今回は、トム・クルーズ出演作品(日本劇場未公開作品を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『シークレット・アイズ』キウェテル・イジョフォー/ジュリア・ロバーツ /ニコール・キッドマン 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.5

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『君がトクベツ』畑芽育/大橋和也
  2. 映画でSEL:告知1回目
  3. 映画『親友かよ』アンソニー・ブイサレートピシットポン・エークポンピシット

REVIEW

  1. 映画『キャンドルスティック』阿部寛
  2. 映画『夏の砂の上』オダギリジョー/髙石あかり/松たか子/満島ひかり
  3. 映画『DROP/ドロップ』メーガン・フェイヒー
  4. 映画『この夏の星を見る』桜田ひより
  5. 映画『国宝』吉沢亮/横浜流星

PRESENT

  1. 特製『平成狸合戦ぽんぽこ』ふんわりキーホルダー正吉
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP