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第三夫人と髪飾り

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映画『第三夫人と髪飾り』グエン・フオン・チャー・ミー

アッシュ・メイフェア監督の曾祖母の実話をもとに映画化した本作では、「女の存在価値は、子どもの産むこと」という考えがまだ普通にあった時代を映し出しています。限定した役割しか与えられず、幼くして見知らぬ男性に嫁ぐのが普通だった状況は、観ていていろいろと衝撃を受けます。生理が始まったらすぐに“女”というカテゴリーに入れられ、嫁げば男を産めと望まれる。まだあどけなさが残る少女が、初夜にして男性をもてなそうとするシーンにも心が痛くなります。そういったところも含めて観客に伝えるためには性的描写は重要で、女性監督ならではと言えるとても美しいシーンに仕上がっている点で、女性への尊重と配慮がうかがえます。そして、本作に登場する女性達は、それぞれの立場がありながらも、意志を持って生きていて、表には出さずとも戦っている様子にエールを贈りたくなります。ラストシーンは力強く、希望を持たせてくれますよ。

デート向き映画判定
映画『第三夫人と髪飾り』トラン・ヌー・イエン・ケー/レ・ヴー・ロン

エロチックなシーンが何度かあり、美しく上品ではありますが、初デートでは気まずいと思います。男尊女卑が色濃く残る時代を映し出していて、女性は複雑な心境になりそうですが、一方で男性がどんな感想を持つのかが読めない部分があります。鑑賞後のコメントで失言が出る可能性があるならば、デートで観るのは避けたほうが良いでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『第三夫人と髪飾り』トラン・ヌー・イェン・ケー/グエン・フオン・チャー・ミー/イ・トゥー・フオン(Maya)

R-15なので15歳以上の方しか観られません。ティーンの皆さんは14歳で嫁ぐメイと年も近いので、感情移入しやすいと思いますが、今の日本に生きる私達にとってはかなり衝撃的な展開があります。やりたいことを全然できなくて、誰を好きになるのかも決めさせてもらえない人達。当時の女性はもちろん、男性も生き方を縛られている様子が出てくるので、男女共にこういう問題に関心を持つきっかけに観てみてください。

映画『第三夫人と髪飾り』グエン・フオン・チャー・ミー

『第三夫人と髪飾り』
2019年10月11日より全国公開
R-15+
クレストインターナショナル
公式サイト

© copyright Mayfair Pictures.

TEXT by Myson

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