取材&インタビュー

『ある町の高い煙突』渡辺大さんインタビュー

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映画『ある町の高い煙突』渡辺大さんインタビュー

今回は実際に日立鉱山で起きた出来事を映画化した『ある町の高い煙突』で、キーパーソンとなる加屋淳平役を演じた渡辺大さんにインタビューをさせて頂きました。今回の役柄についてや、俳優という職業について、お話を伺いました。

<PROFILE>
渡辺大(わたなべ だい):加屋淳平 役
1984年8月1日東京都生まれ。2002年に『新春ワイド時代劇壬生義士伝』で俳優デビュー後、テレビドラマ、映画で活躍。2018年には、映画『ウスケボーイズ』でマドリード国際映画祭、アムステルダム国際フィルムメーカー映画祭にて最優秀主演男優賞を受賞。さらに同年、ドラマ『中学聖日記』にも出演し、主人公を支える先生役を演じた。2020年には、司馬遼太郎原作、小泉堯史監督の映画『峠』にも出演予定。その他の主な映画出演作に『男たちの大和/YAMATO』『ラーメン侍』『相棒-劇場版III-巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ』『るろうに剣心 京都大火編』『日本のいちばん長い日』『サブイボマスク』『覆面系ノイズ』『空飛ぶタイヤ』『散り椿』などがある。映画『ある町の高い煙突』では、農民と住民側の交渉役である企業、日立鉱山の庶務係、加屋淳平(実在の角弥太郎にあたる人物)役を好演。

己の内面を上げていくことが、役者としてのステージアップ

映画『ある町の高い煙突』井手麻渡/渡辺大

マイソン:
100年前の実話を映画化した作品とのことですが、脚本を読んだ時の純粋な印象はどうでしたか?

渡辺大さん:
企業と地域住民の方のストーリーは、作品にすると対立して相手を叩きのめそうっていうものが多いなかで、いかにお互いが共生して、理想を貫き通すかっていう理想を現実にした人達だなと思いました。それが現実にあるわけだから、理想も捨てたもんじゃないなって。僕としては希望を持ちながら、作品に参加させて頂きました。

マイソン:
演じられた役柄は、板挟みになる一番辛い立場でしたが、この役を演じることが決まった時はどんな心境でしたか?

渡辺大さん:
とにかく台本ができ過ぎているというか、僕の演じた淳平に関しては、人としてできているなって。この映画を観た人に、「淳平が良い人過ぎて、逆にあとで悪人になっちゃうのかと思った」と言われましたが、本当に筋のある一本気な人で、僕はなかなかああいう風には生きられないけど、板挟みになってもどこかで理想を描いて生きている人っていうのは、すごく良かったと思います。ただ、良い部分だけじゃなくて、その人の弱さみたいなものもピックアップされると、すごく人間臭くなって、良い人だなってなるんじゃないかと思っていて、そういうポイントポイントのアクセントを残しつつ演じました。

映画『ある町の高い煙突』渡辺大

マイソン:
私も、淳平は本当は悪役なのかなと思いながら観てました。すごく魅力的なキャラクターでしたよね。少し話題が逸れますが、関根というキャラクター(井手麻渡)については、進学を諦めて家を継ぐかどうかという展開も出てきました。渡辺さんも芸能界は身近にあったと思いますが、俳優になりたいと思ったきっかけになった作品や出来事はありますか?

渡辺大さん:
邦画と洋画で2つあって、洋画は『マトリックス』なんです。当時僕は6回くらい映画館で観たんです。それくらいおもしろくって。

マイソン:
1作目だけで6回も観たんですか?

渡辺大さん:
そうなんです。当時僕は小学生で、土曜日とかに友達と有楽町で待ち合わせをして映画館で映画を観るのがすごく好きだったんです。映画は身近な存在でしたけど、昔は洋画ばかりよく観ていて、遠い憧れみたいな存在でした。でも中学2年生くらいの時に、本広克行監督の『スペーストラベラーズ』という作品を観て、それにうちの父(渡辺謙)が出ていたんですけど、邦画のおもしろさがすごくわかって、映画に出る出ないとかじゃなくて、こういうエンタテインメントの世界はおもしろいなっていう風に思ったんですよね。それが俳優になりたいと思ったきっかけですね。

マイソン:
ジャンル的にはSFがお好きなんですか?

渡辺大さん:
エンタテインメント系は多かったですね。中学生の頃ってやっぱりそういうのが好きじゃないですか、カッコ良いし。そういうのを観て憧れてた世代でしたね。

映画『ある町の高い煙突』渡辺大/石井正則

マイソン:
では、実際に俳優のお仕事をされて、これはすごくおもしろいって思うのは、どんなところですか?

渡辺大さん:
いろいろありますよ。いろいろな人生を生きられるし、実生活でできないこともいっぱいできるし、違う人になれるし、いろいろな職業ができて、いろいろな感情も伝えられる。それはすごく良いことですよね。自分が演じたシーンが繋いだらこうなるんだとか、1〜2ヶ月で作ったものが、映画として完成した時に2時間くらいにまとまるわけじゃないですか。そういうのを観る楽しさってのはありますね。

マイソン:
1作品ずつできあがっていく達成感はあると思うんですが、例えば会社員のように、雑用係から位が上がっていくとかっていう、身の回りのわかりやすい変化がない点では、同じ職業を続けていくのはどんな感覚なんでしょう?

渡辺大さん:
役者は役者っていう役職しかないので、自分の中で上げていかないといけないですよね。いつまでも新人みたいなことばっかりやっていてもしょうがないし、自分の人生の重ね方が、役者としての役職になっていくと思うので、もちろん芝居をする技術というのは大事だと思うんですけど、己の内面を上げていくことが、役者としてのステージアップに繋がるんじゃないかなって思います。そこは忘れないようにしていきたいなと思います。

マイソン:
どんな役もそれなりに難しさはあると思うんですけど、壁を越えられたと思える瞬間を演技をしている時に体感することってあるんですか?

渡辺大さん:
常に暗中模索している感じがあって、だから到達した気分もないんです。全部が全部落ち込むことはないですけど、いろいろずっと考えてはいますね。終わった後でももちろん、ずっと宿題をしている感じです。でも、普通だったら宿題もA判定、B判定って、いろいろな人に評価されて返ってくるけど、演技は明確な答えが返ってこないので、難しいというか。そこで自分に折り合いを付けて、どういう風にやっていこうかって考えています。学生と違って卒業もないし、会社員と違って定年もないので、そこは自分で考えてやるしかないのかなっていうのはあります。

マイソン:
でもわからないからこそ、続けられるみたいなところもあるんでしょうかね。

渡辺大さん:
そうだと思います。何をやっていても全然答えが出ないんですよね。何となくこういうものかなって得るものはあるんですけど、はっきりこれだとは言えないというか。

映画『ある町の高い煙突』井手麻渡/渡辺大

マイソン:
たしかに正解は一つではなさそうですもんね。一つ計る部分で言うと、観客の反応だと思うんですが、今の時代だとすぐにSNSとかネットとかで検索できます。渡辺さんは、そういうネットの反応を見たりしますか?

渡辺大さん:
僕は見ますよ。やっぱりどういう感想を持っているのかっていうのは、そういうのを見るとわかりますよね。何となく気分で気に入らないって書く人もいるだろうし、ちゃんと冷静に書いている人もいるだろうし。そういう言葉は自分のお師匠さんみたいなもので、観てくれる人が一番のお師匠さんだと思います。

マイソン:
では最後に、映画をたくさん観ている方にとっては、こういう歴史が描かれた社会的な作品でも観るハードルは低いと思うんですけど、逆に年に2〜3回だけ話題になった作品を観るくらいの方には、この作品はどうやってオススメすると観やすいでしょうか?

渡辺大さん:
この作品は派手な映画じゃないですけど、僕は本当に良い意味で“地味で良い映画”だなって思えたんですよ。それがなぜかと考えた時に、究極の泥臭さと非合理的な部分があって、本当にわかりやすい他者との共生を描く作品で、かえってそれが僕は良いんじゃないかなって。いろいろな人との対立や、煙害と向き合うなかで、自分がどれだけ寛容に共生していけるかを考え、生きていく意味での定義みたいなものを考えられる作品だと思うので、そういう意味で言うと、やっぱりこの映画が良かったよって言ってくれる方を増やすのが一番かなって思いますね。

映画『ある町の高い煙突』渡辺大さんインタビュー

マイソン:
さっきおっしゃったみたいに、最近は対立してギャフンと言わせるものが多いなかで、ちょっと意外な展開だったので、新鮮でした。

渡辺大さん:
とはいえ、特定企業のイメージアップのための映像ではなく、泥臭い部分もちゃんと描いているんですよね。皆いろいろな社会に生きているなかで、自分が属しているグループとは一体どういうところで、どういう理想があって、自分もその理想を持っているのかっていうことを、大なり小なり考えてもらえれば、僕は良いかなと思います。

マイソン:
今日はありがとうございました!

2019年4月18日取材 PHOTO & TEXT by Myson

映画『ある町の高い煙突』井手麻渡/渡辺大

『ある町の高い煙突』
2019年6月14日(金)より、ユナイテッド・シネマ水戸、シネプレックスつくばにて先行公開中/6月22日より全国公開
監督・脚本:松村克弥
出演:井手麻渡/渡辺大/小島梨里杏/吉川晃司/仲代達矢/大和田伸也/小林綾子/渡辺裕之/六平直政/伊嵜充則/石井正則/螢雪次朗/斎藤洋介/遠山景織子/篠原篤/城之内正明/大和田健介/たくみ稜
配給:エレファントハウス、Kムーブ

1910年、日立鉱山から煙害が発生。隣村の茨城県久慈郡入四間の権力者である兵馬は、事態を重く見て鉱山会社へ掛け合うが、補償をする代わりに煙害を我慢するよう一方的に言われてしまう。そんな兵馬は孫の三郎に、30年前に村長として採掘権を許可したのは自分だと告げ、その5日後にこの世を去る。遺された三郎は祖父の遺志を継ぎ、進学も外交官になる夢も諦め、煙害と闘うと決意する。
JXTGグループ、日立製作所、日産自動車など春光グループの源流である日立鉱山(現・JX金属)におけるCSRの原点となった物語。

公式サイト 映画批評&デート向き映画判定

© 2019 Kムーブ

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