特集

映画に隠された恋愛哲学とヒント集74:恋愛関係を保つパワーバランスとは

  • follow us in feedly
  • RSS
Netflix映画『Fair Play/フェアプレー』フィービー・ディネヴァー/オールデン・エアエンライク

ネタバレ注意!

2人ともバリバリ仕事をしているカップルの場合、そのパワーバランスは恋愛に影響してしまうのでしょうか。今回は、そんな疑問に例を示すストーリー、Netflixオリジナル映画『Fair Play/フェアプレー』と、バランスのとれたカップルが登場する実話を基にしたストーリー『ただ空高く舞え』をご紹介します。

まだまだ世の中は男社会、じゃあお互いの頭の中は?

Netflix映画『Fair Play/フェアプレー』フィービー・ディネヴァー/オールデン・エアエンライク

『Fair Play/フェアプレー』の主人公エミリー(フィービー・ディネヴァー)とルーク(オールデン・エアエンライク)は、同じヘッジファンドで働く同僚です。でも、社内恋愛は禁止されていて、2人は職場ではよそよそしく振る舞っています。一方、プライベートでは婚約し、幸せ絶頂。そんななか、エミリーが昇進し、ルークの上司になります。

ルークが昇進するという噂に2人で喜んでいたばかりのところへ、エミリーは真夜中に上司(エディ・マーサン)に呼び出され、昇進を知らされます。この時点で既にほころびができはじめていて、2人の関係はどんどん不安定になっていきます。

Netflix映画『Fair Play/フェアプレー』フィービー・ディネヴァー

昇進に内心喜び、会社では男性陣に負けまいと強気な態度を取るエミリーと、エミリーが男性上司達と連み、自分に対して威圧的になっていく状況に卑屈になるルーク。この2人の状況をどう捉えるかはさまざまだと思います。

エミリーが調子に乗り過ぎで、ルークが可哀相に見えるかもしれません。でも、本当にそうでしょうか。本作は、「もし、これが男女逆なら、どう見える?」と問いかけているのでしょう。

Netflix映画『Fair Play/フェアプレー』フィービー・ディネヴァー/オールデン・エアエンライク

2人の関係はどんどん険悪になり、悲惨な状況に向かっていきます。あんなにラブラブだった2人がこうもお互いに傷つけ合うのかと衝撃を受けると同時に、“フェアプレー”というタイトルの意味を考えさせられます。

本作を観ると、カップルのパワーバランスの問題の背景に、男性社会で闘う女性にどんな足かせがあるかが伝わってきます。実力で這い上がっても、“女”を武器にしたかのように色眼鏡で見られ、“男達の流儀”に合わせようとすればイカれたといわれてしまう。つまり、何をやってもゴチャゴチャいわれ、なかなか正当に評価されません。そんな八方ふさがりな状況で、パートナーの信頼、支えもないのは、本当に空しいでしょう。

Netflix映画『Fair Play/フェアプレー』フィービー・ディネヴァー/オールデン・エアエンライク

エミリーもルークも最初はお互いを尊重しようと努力はします。でも2人の様子から、本質的なところで噛み合っていなければ、限界に達するのだとわかります。本作を観て、女性が一歩引くべきと思うのか、男性の頭が古いと思うのか。恋愛観は人それぞれなので、どういうバランスが自分に合っているのかは、自分で判断するしかありません。

残念ですが、根本的に社会の価値観が変わり、男性社会が終わるには、まだまだ時間がかかるでしょう。ただ、そのなかでも自分達が努力できるところはあるはずです。そこで、カップルのバランスが絶妙に保たれているケースとして、『ただ空高く舞え』をご紹介します。

映画『ただ空高く舞え』スーリヤ/アパルナー・バーラムラリ

『ただ空高く舞え』は、インドの格安航空会社エア・デカンの創業者、G・R・ゴーピナート大尉の自伝に着想を得て作られた映画です。男女共同参画局が発表した2023年の世界のジェンダー・ギャップ指数を見ると、日本は146ヵ国中125位、インドは127位で、両国ともかなり下位で近い位置にいます。『ただ空高く舞え』の物語の舞台は、20世紀の終わりから21世紀初頭のインドで、今よりさらに男性社会が色濃く残っていた時代です。それでも、本作の主人公ネドゥマーラン(スーリヤ)とボンミ(アパルナー・バーラムラリ)は、男女対等の関係を築きます。

ボンミは自立した女性で、ネドゥマーランとのお見合いの段階で既に自分でベーカリーを起業する構想を持ち、後に実現します。そして、後に夫となったネドゥマーランの事業が何度も頓挫するなか、精神的にも経済的にも支えます。

ボンミは始めからネドゥマーランに2人が対等な立場であることを条件で出していて、ネドゥマーランはそれを守ります。同時に、ボンミは肝っ玉母ちゃん的な頼もしさがありながら、夫の事業に余計な口を出すことはなく、夫がやることを黙って見守る包容力があります。2人の関係はまさに対等で、お互いを尊重し、お互いが自分が思うようにそれぞれの仕事を全うします。

映画『ただ空高く舞え』スーリヤ/アパルナー・バーラムラリ

前述の『Fair Play/フェアプレー』のエミリーとルークが被雇用者で同じ会社にいるという状況と、『ただ空高く舞え』の2人が別々の仕事をしていて、経営者であるという違いも、カップルの関係を保てるかどうかのポイントとなるかもしれません。まず、同じ職場、同業でもうまくいくカップル、そうでないカップルがいるでしょう。また、上司の一声でいつ立場が変わるかもしれない被雇用者という立場と、常に大きな責任がある代わりに自分で裁量を持つ経営者という立場でも、自分の人生のコントロール感が異なります。

2人でどうにか工夫できる点もあれば、社会の風潮に呑み込まれて関係が維持できなくなってしまうこともあるでしょう。置かれた状況のせいではなく、価値観がそもそも合っていないせいで関係が壊れることもありえます。その関係を何としても守るのか、離れるべきなのか、問題が起こった際に何が根底にあるのか考えることも必要なのかもしれません。

Netflix映画『Fair Play/フェアプレー』フィービー・ディネヴァー/オールデン・エアエンライク

『Fair Play/フェアプレー』
2023年10月6日よりNetflixにて配信中
R-18+相当
公式サイト 

映画『ただ空高く舞え』スーリヤ

『ただ空高く舞え』
2024年1月6日より全国順次公開中
インド映画同好会
公式サイト 2024新春に必見!ワタシの願いの叶え方【夢を叶えた実話】3選

©2D Entertainment

<参考・引用文献>
男女共同参画局「男女共同参画に関する国際的な指数—GGI ジェンダー・ギャップ指数(2023年)」

TEXT by Myson

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『秘顔-ひがん-』チョ・ヨジョン/パク・ジヒョン 秘顔-ひがん-【レビュー】

タイトルを見ただけでいろいろな想像が掻き立てられるので…

映画『28年後...』アーロン・テイラー=ジョンソン/レイフ・ファインズ/ジョディ・カマー 28年後…【レビュー】

ダニー・ボイル監督×アレックス・ガーランド(脚本)の最強タッグで制作されてきた“28”シリーズは、2002年『28日後…』、2007年『28週後…』と続き、本作で3作目…

映画『バック・イン・アクション』キャメロン・ディアス キャメロン・ディアス【ギャラリー/出演作一覧】

1972年8月30日生まれ。アメリカ出身。

海外ドラマ『アンダー・ザ・ヘブン 信仰の真実』アンドリュー・ガーフィールド アンダー・ザ・ヘブン 信仰の真実【レビュー】

本シリーズは、ジャーナリストのジョン・クラカワーが、アメリカのユタ州にあるソルトレイクシティ郊外の平和な街で1984年に実際に起きた殺人事件を基に書いたノンフィクション小説「信仰が人を殺すとき」を原作として…

映画でSEL:告知1回目 自分を好きになるための【映画でSEL(社会性と情動の学習)】第1回ワークショップ女性限定無料ご招待!

長らく温めてきた【映画でSEL(社会性と情動の学習)】のワークショップをいよいよスタートします! 「自分を好きになる」をテーマに、毎回さまざまな映画から、内容を引用しながら進めていきます。

映画『顔だけじゃ好きになりません』宮世琉弥 宮世琉弥【ギャラリー/出演作一覧】

2004年1月22日生まれ。宮城県出身。

映画『Mr.ノボカイン』ジャック・クエイド Mr.ノボカイン【レビュー】

痛みを感じない疾患を持つ主人公、ネイサン・カイン(ジャック・クエイド)は…

映画『罪人たち』マイケル・B・ジョーダン/マイルズ・ケイトン 罪人たち【レビュー】

ライアン・クーグラー監督と、マイケル・B・ジョーダンの名コンビが贈る本作は、まず設定がとても…

映画『おばあちゃんと僕の約束』プッティポン・アッサラッタナクン/ウサー・セームカム おばあちゃんと僕の約束【レビュー】

『バッド・ジーニアス危険な天才たち』など数々の話題作を放ち、タイで勢いのあるスタジオとして注目を浴びるGDHが手がけた本作は…

映画『異端者の家』ソフィー・サッチャー ソフィー・サッチャー【ギャラリー/出演作一覧】

2000年10月18日生まれ。アメリカ、シカゴ出身。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』トム・クルーズ 映画好きが選んだトム・クルーズ人気作品ランキング

毎度さまざまな挑戦を続け、人気を博すハリウッドの大スター、トム・クルーズ。今回は、トム・クルーズ出演作品(日本劇場未公開作品を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『プラダを着た悪魔』アン・ハサウェイ/メリル・ストリープ 元気が出るガールズムービーランキング【洋画編】

正式部員の皆さんに“元気が出るガールズムービー【洋画編】”をテーマに、好きな作品を選んでいただきました。果たしてどんな結果になったのでしょうか?

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画でSEL:告知1回目
  2. 映画『親友かよ』アンソニー・ブイサレートピシットポン・エークポンピシット
  3. 映画『年少日記』

REVIEW

  1. 映画『秘顔-ひがん-』チョ・ヨジョン/パク・ジヒョン
  2. 映画『28年後...』アーロン・テイラー=ジョンソン/レイフ・ファインズ/ジョディ・カマー
  3. 海外ドラマ『アンダー・ザ・ヘブン 信仰の真実』アンドリュー・ガーフィールド
  4. 映画『Mr.ノボカイン』ジャック・クエイド
  5. 映画『罪人たち』マイケル・B・ジョーダン/マイルズ・ケイトン

PRESENT

  1. 映画『ババンババンバンバンパイア』吉沢亮/板垣李光人
  2. 映画『サンダーボルツ*』オリジナル ユニセックスクルーネック(M)
  3. 中国ドラマ『墨雨雲間〜美しき復讐〜』オリジナルQUOカード
PAGE TOP