REVIEW
本作は、子どもの頃からわだかまりを感じていた兄が急死し、身辺整理をすることになった妹が、兄の人生に携わった人々と会うことで、兄との関係を改めて振り返る4日間を描いています。原作は、村井理子が書いたノンフィクションエッセイ「兄の終い」です。そして、この実話を映画化したのは、『湯を沸かすほどの熱い愛』『長いお別れ』『浅田家!』と、家族の物語を得意とする中野量太。中野量太監督は、本作で脚本も担当しています。

『兄を持ち運べるサイズに』という映画のタイトルが、“骨壺に入った”兄を表していることは容易に想像がつきます。でも、最後まで観ると別の意味も含まれているとわかります。どういう意味なのかは観た上で皆さんそれぞれに想像いただければと思いながら、最後にわかる別の意味は、“亡き兄と過ごした4日間”で何が残ったかを絶妙に表していると感じます。

さらにこのストーリーの魅力は、綺麗事で終わっていない点にあります。たとえば、妹の村井理子(柴咲コウ)、元妻の加奈子(満島ひかり)にはそれぞれの立場で“兄”(オダギリジョー)に対する思い出があり、良い思い出とはいえない思い出もあります。亡くなったからといって、すべてが良い思い出として語られるわけではなく、各々が正直に気持ちをぶつける姿には、共感できます。そして何より、実話ベースという点で親近感が湧きます。

理子の家族の反応と理子の感覚のズレも、理子の気持ちの変化を知る手がかりになっています。たった4日間とはいえ、いかに濃厚な4日間だったかがわかり、改めて家族の関係って捉えどころがない上に、人生に大きなインパクトを与えるパワーがあるなと感じます。

キャラクターが一人ひとり立っている点にも、キャストと、中野量太監督の手腕を感じます。特に良一を演じた、子役の味元耀大は実力派俳優のなか、堂々たる演技を披露しています。『ふつうの子ども』『俺ではない炎上』でも存在感を発揮していて、今後が楽しみです。

家族の美談で涙を誘うという安直なストーリーではない分、逆に家族の良い思い出がない方でも、少し頭を柔らかくし、心をほぐす機会になるかもしれません。また、忙しい日々の中で知らぬ間に心が渇いていると気づかせてくれる部分もありますよ。
デート向き映画判定

オダギリジョーが演じる兄は、恋愛相手、結婚相手としてはオススメできない人物に映りつつも、憎めない人柄が見えるので、似たタイプの方とお付き合いをしている方は、自分の恋愛を客観視できるのではないでしょうか。ただし、私はそれでもこの人が好きとなるか、現実的に考えて未来がないと感じるかは、分かれそうなので、1人でじっくり観るほうが良いかもしれません。
キッズ&ティーン向き映画判定

妹から見た人物像、元妻から見た人物像だけではなく、娘、息子から見た人物像も描かれていて、同じ人物に対して、家族の立場でもそれぞれに感じていることが異なるとわかります。家族関係は簡単には切れないものの、距離を置かざるを得ない状況が出てくるのも事実です。仲の良さや悪さだけではなく、何が家族の問題を引き起こすのか、1つの例を知ることができるでしょう。

『兄を持ち運べるサイズに』
2025年11月28日より全国公開
カルチュア・パブリッシャーズ
公式サイト
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©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
TEXT by Myson
関連作
「兄の終い」村井理子 著/CE メディアハウス刊
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情報は2025年11月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。





























