特集

映画に隠された恋愛哲学とヒント集77:手放す勇気の必要性『366日』

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『366日』赤楚衛二/上白石萌歌

※映画公式サイトで既に書かれている内容以外には触れずに書いていますが、全く何も知らずに本編を観たい方は映画鑑賞後にお読みください。

今回は、2000年に結成された沖縄出身のアーティスト、HYの代表曲“366日”をモチーフにした映画『366日』を題材に、恋愛における「手放す勇気の必要性」について考えます。

その時出会えたことに価値がある

映画『366日』赤楚衛二/上白石萌歌

「愛してる。たとえ一緒に生きられなくても」という本作のキャッチコピーから、悲恋であることは想像できます。赤楚衛二が演じる湊と、上白石萌歌が演じる美海、両思いの2人のシーンが眩しく描かれているからこそ、こんなに思い合っていても別れが待っているのかと、ドキドキしながら観る方も多いでしょう。

本作は湊と美海の20年間を描いていて、現代と20年前の2人の様子が行ったり来たりしながら、現在2人はどうなっているかを知った上で、その間に何が起こったかが徐々に明かされていきます。

映画『366日』赤楚衛二/上白石萌歌

2人に起きた出来事や、2人がそれまでに経験してきたことを踏まえると、2人の決断は仕方がないように思います。若い頃は進学、就職など大きな節目が短期間に複数あるので、恋愛を第一に考えるのも難しい面があります。さらに、予期せぬことが起こったとすれば、今まで通りの関係を続けられないと不安になるのも当然です。

でも、大好きな人と別れたくないのは皆同じ。では、どうすれば良いのでしょうか。その答えは、本作のストーリーにあるというよりも、本作のストーリーをどう解釈するか、結末をどう受けとめるかにあると思います。

映画『366日』赤楚衛二/上白石萌歌

湊と美海の恋愛として観るのか、2人の20年間を俯瞰して観るのかによって、受け取り方は大きく変わります。湊と美海の恋愛として観た場合は、確かに辛いし悲しい面が際立ちます。ただし、本作には他の幸せな部分も描かれていて、俯瞰して観た場合に、皆結果的に幸せになれたとも受け取れます。

映画『366日』赤楚衛二/上白石萌歌

本作は大恋愛を描くと同時に、手放す勇気についても描いています。それは湊と美海だけではなく、もう1人のある人物についてもいえます。3人とも自分よりもまず相手のことを考えていて、時に手放す覚悟を示します。だからこそ、皆過去に囚われずに今を生きているように見えます。

映画『366日』赤楚衛二/上白石萌歌

大恋愛をした相手と添い遂げるのも理想的ではありつつ、人生の節目ふしめで必要な相手に出会えるのもまた幸せといえるのではないでしょうか。別れたことを悔やみ続けている方や、今別れが訪れそうで不安に苛まれている方がいたとしたら、一時的に辛いとしても、今は別れが必要、未来に別の出会いが待っていると考えてみるのも1つの手かもしれません。そして、本当に今後また必要な縁ならば、今手放してもまた戻ってくると考えてみると、少し気持ちが軽くなるのではないでしょうか。

映画『366日』赤楚衛二/上白石萌歌

『366日』
2024年1月10日より全国公開
松竹
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

©2025映画「366日」製作委員会

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年12月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『果てしなきスカーレット』 果てしなきスカーレット【レビュー】

細田守が原作、脚本、監督を担当した本作は、16世紀のデンマークの王女、スカーレットが主人公です。細田監督は…

映画『ブラックフォン2』イーサン・ホーク/メイソン・テムズ ブラックフォン2【レビュー】

2022年に作られたシリーズ1作目『ブラック・フォン』から4年後を描いた本作でも…

映画『金髪』白鳥玉季さんインタビュー 『金髪』白鳥玉季さんインタビュー

今回は『金髪』で生徒の板緑役を演じた白鳥玉季さんにインタビューさせていただきました。“金髪デモ”を起こすキーパーソンである板緑を演じた感想や、撮影裏でのエピソードを直撃しました。

映画『TOKYOタクシー』倍賞千恵子/木村拓哉 TOKYOタクシー【レビュー】

クリスチャン・カリオン監督『パリタクシー』を原作とした本作は、東京にある柴又から神奈川の葉山にある高齢者施設までの道のりを舞台に、山田洋次監督が映画化…

映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ 心理学から観る映画59:研究倫理に反する実験とその被害『エクスペリメント』『まったく同じ3人の他人』

『まったく同じ3人の他人』というドキュメンタリーを観ました。生き別れた三つ子が再会する感動のストーリーかと思いきや、驚愕の背景を知り、研究倫理について改めて考えさせられました。そこで今回は研究倫理をテーマとします。

映画『コンビニ・ウォーズ~バイトJK VS ミニナチ軍団~』ヴァネッサ・パラディ ヴァネッサ・パラディ【ギャラリー/出演作一覧】

1972年12月22日生まれ。フランス出身。

映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮 ブルーボーイ事件【レビュー】

高度成長期にあった1965年の東京では、街の浄化のため、警察はセックスワーカー達を厳しく取り締まっていました。ただ、セックスワーカーの中には性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けて女性的な体をした通称ブルーボーイが…

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 君の顔では泣けない【レビュー】

高校1年生の夏、坂平陸(武市尚士)と水村まなみ(西川愛莉)はプールに一緒に落ちたことで体が入れ替わってしまいます。2人はすぐに元に戻ることができず15年を過ごし…

映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト スプリングスティーン 孤独のハイウェイ

物語の舞台は1982年。ブルース・スプリングスティーン(ジェレミー・アレン・ホワイト)は、名声を手に入れながらも、葛藤を抱えて…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  2. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  3. 映画『おーい、応為』長澤まさみ

REVIEW

  1. 映画『果てしなきスカーレット』
  2. 映画『ブラックフォン2』イーサン・ホーク/メイソン・テムズ
  3. 映画『TOKYOタクシー』倍賞千恵子/木村拓哉
  4. 映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮
  5. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP