心理学

心理学から観る映画1-1:連続殺人犯を生み出すもの

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映画『テッド・バンディ』関連:テッド・バンディ本人

皆さんは、ザック・エフロン主演の『テッド・バンディ』という映画をご覧になったでしょうか?これは、アメリカ犯罪史上最悪の連続殺人犯テッド・バンディの長年の恋人リズ(エリザベス・クレプファー)の著書「The Phantom Prince:My Life with Ted Bundy」(1981年出版)を原作とした映画で、本作のジョー・バリンジャー監督は、『殺人鬼との対談 テッド・バンディの場合』というドキュメンタリー映画も撮っています。私は先に『テッド・バンディ』を観てから、ドキュメンタリーのほうを観たのですが、両方観てなお、テッド・バンディという男の恐ろしさに驚愕しました。そこで、私達と同じ人間なのに、なぜこれほどまでに恐ろしいことができるのかを考えざるを得なくなりました。

今回の特集は4回に渡り、連続殺人犯にまつわる謎について、考えてみたいと思います。

<参考・引用資料>
『殺人鬼との対談 テッド・バンディの場合』Netflix/ドキュメンタリー
『犯罪者と狂気の火種』Netflix/ドキュメンタリー
下記は、上記で語られている内容から一部引用しまとめたものです。

犯罪者は、先天的?後天的?

この問いは約250年前から議論されていて、さまざまな研究が行われています。ただ、傾向はある程度掴めているとしても、当然ながら犯罪者を一色単にして考えることはできません。先天的な傾向に当てはまっても犯罪の道に走らない人もいて、その違いが後天的な要素に影響されるとも考えられます。というわけで、現在でも明確な答えは出ておらず、やはりどちらかというのではなく、先天的な部分、後天的な部分の両方があって、犯罪者になる可能性が増幅するという考え方が主流となっているようです。

連続殺人犯の共通点1=家庭環境の崩壊と虐待

100%全員に合致することはもちろんありませんが、傾向はあります。その一つは、“家庭環境の崩壊”です。幼い頃に虐待を受けていた者も多いとされています。また、父親が不在か存在が希薄で、母親が支配的という特徴もあり、こういった場合は、母親に対する憎悪が深くなり、成長してからその憎悪が女性に向けられるとも考えられています。

さまざまな分野で研究されているなかで、1960年代には、司法心理学者のマクドナルドが、シリアルキラー(連続殺人犯)の幼少期に出る特徴として、寝小便、放火、動物の殺害(マクドナルドの三角形)を挙げましたが、サンプルの選び方が悪く関係性はないとされ、今では信憑性を失っています。

次に行動科学の視点から、「幼少期の体験で共感する力を失った」という説が台頭します。本来、子どもの頃に両親から共感する心を学びますが、家庭環境が崩壊している場合、まともな人間関係を構築する機会を得られず、共感する心が育ちません。人に共感できないということは、人の痛みがわからないので罪悪感を抱くこともなく、残虐なことをしても、何とも思わないということに繋がります。

テッド・バンディは、未婚の母のもとに生まれ、実の母の両親の養子として育てられ、実の母は姉だと嘘をつかれていました。大人になり、自己を見失い、精神病質者になった原因の一つとも考えられています。さらに祖父から虐待を受けていたようです。キラー・クラウン(殺人ピエロ)の異名を持つ連続殺人犯ジョン・W・ゲイシーは父に厳しく育てられ、幼少時に家族の友人から虐待を受けていたとされています。
安易に彼らと結び付けるわけではありませんが、子どもだからまだわからないと思っていることでも、大人の影響は子どもの将来に大きく反映されます。例えば、子どもが直接暴力を振るわれなくても、父が母に暴力を振るうという場面を目にしているだけでも、子どもの心の成長に悪影響を大きく残すことは、すぐに症状として表れなくても、後々共感力の欠如、罪悪感の欠如という見えない部分で表れてくると考えられます。また子どもはまだ脳が発達段階にあるので、ダメージを受ける可能性もあります。この件については、追って触れたいと思います。

映画『テッド・バンディ』関連:テッド・バンディ本人とザック・エフロン比較

『テッド・バンディ』
2019年12月20日より全国公開
R-15+
公式サイト REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定  
ジョー・バリンジャー監督インタビュー

©2018 Wicked Nevada,LLC

次回は、連続殺人犯の共通点の2つ目“性的錯誤”について取り上げます。

TEXT by Myson(武内三穂・認定心理士)

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