キャリアデザイン

あなただけのキャリア12:転機によって自分を知る【シュロスバーグの3つの転機】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』マーガレット・クアリー/シガニー・ウィーバー

人生には転機がつきものです。転機の中には、自分のキャリアを大きく変化させるものがあります。今回は、キャリアを考える上での転機について、ナンシィ・シュロスバーグの理論をご紹介します。また転機とキャリアについて、映画『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』を題材に考えてみます。

ネタバレ注意!『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』

シュロスバーグは、転機を下記の3つのタイプに分けて定義しています。
■予測していた転機
■予測していなかった転機
■期待していたものが起こらなかった転機

渡辺(2018)

ここでいう転機というのは、仕事に関わることに限りません。3つのタイプに当てはまる転機は人によって異なるところはありますが、具体例として、“予測していた転機”は、進学や就職といった多くの人が生きていく上で経験するようなこと、“予測していなかった転機”は、転校、離婚、事故、失業といったこと、期待していたものが起こらなかった転機は、結婚するつもりがしなかったとか、昇進できると思っていたのにできなかったといったことが挙げられるでしょう。

映画『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』の主人公は、あらゆる面で転機を迎えています。まず彼女は小説家になるという夢を追い求めてニューヨークにやってきました。ここで生活そのものも、周囲との付き合いもがらりと変わります。そして、夢を追うにも生活費は必要なので、出版エージェンシーでアシスタントの仕事を見つけました。さらに彼女は地元に恋人がいましたが、途中から彼とは連絡を取らなくなり、ニューヨークで別の男性と新しい関係を築きます。彼女の引っ越しと就職は彼女の意志で行ったことなので“予測していた転機”、地元に残してきた恋人との別れとニューヨークでできた新しい彼氏については”予測していなかった転機“と捉えられそうです。

映画『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』マーガレット・クアリー

これらの転機は彼女のキャリアにどんな影響を与えたか、私なりの解釈をしてみます。ニューヨークに出てきて、著名な作家の小説を手掛ける出版エージェンシーのアシスタントになれたことは、小説家を目指す主人公にとっては一歩夢に近づけた事柄と言えるでしょう。そして、恋愛については一見キャリアに直接関係はなさそうですが、彼女が自分の価値観を見つめ直す上でとても重要な要素となっています。自分のことを大切にしてくれている相手なのかという観点で彼女は自分の恋愛を振り返り、何を求めてニューヨークにやってきたのかを思い出したのではないかと受け取れます。

また彼女は“期待していたものが起こらなかった転機”も体験します。これが彼女のキャリアに大きなインパクトを与えたと思います。ちょっとひねった解釈になりますが、私は彼女の転機をこう解釈しました。彼女は仕事で手柄を立てて昇進を持ちかけられます。もし彼女が昇進を心から望んでいて、将来も出版エージェントとしてやっていきたいという気持ちに変わっていたのなら、これは期待していた転機ということになるでしょう。でも昇進の喜びはわかなかったことで、この昇進は彼女が望んだものではないとわかります。つまり、彼女は昇進の喜び(=期待していたもの)がわかなかったことで、自分の本心を知り、自分が目指すものはやっぱり小説家だと気付くのです。

映画『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』マーガレット・クアリー

本作で主人公は出版エージェンシーの仕事が決まった時点で、夢に大きく近づいたように見えます。もし、私達が彼女と同じ立場でもきっと夢に大きく近づいたと感じるでしょう。でも、中身は似て非なるもの。出版エージェントも小説家も同じく“小説”に携わる立場であっても、全く異なる職業です。ただ、現実的には、小説家になりたかったけれどエージェントをやってみたらそっちのほうが自分に合っていたと感じる人もいれば、まだ小説家になりたい気持ちはあるけれど、せっかくエージェントで昇進できるのならそれでも良いかなと考える人もいるでしょう。主人公のようにやっぱり初志貫徹で小説家になることを諦めないという人もいると思います。結局それは自分で決めることであって、どれが正解というのはありません。

とにかく大事にしたいのは、自分の気持ちや意志です。どんな職業に就きたいか、何者になりたいかは、生きていく間に変化していきます。それはあらゆる転機を経験していくなかで変わっていき、それを自分がどう捉えるか、そこで何を選択するかによって決まっていくと思います。転機に一喜一憂するに留まらず、これから生きていくために大きなヒントを得られると思って、その転機をどう解釈して乗り越えるか、これまで以上に意識を向けるだけで、一層自分が望むキャリアを築けるのではないでしょうか。

<参考・引用文献>
渡辺三枝子ほか(2018)「新版 キャリアの心理学[第2版]キャリア支援への発達的アプローチ」ナカニシヤ出版

オススメのお仕事映画

映画『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』マーガレット・クアリー/シガニー・ウィーバー

『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』
2022年5月6日より全国公開

REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

同じ小説に携わる仕事でも、主人公がなりたいのは小説家。彼女がその思いを改めて自覚するプロセスは、仕事の内容が自分に合っているのか悩んでいる方にはすごくリアルに参考になると思います。

9232-2437 Québec Inc – Parallel Films (Salinger) Dac © 2020 All rights reserved.

映画『劇場版ラジエーションハウス』窪田正孝/本田翼/広瀬アリス/浜野謙太/丸山智己/山口紗弥加/遠藤憲一/八嶋智人

『劇場版ラジエーションハウス』
2022年4月29日(金)より全国公開中

浜野謙太さんインタビュー

自分がやりたい仕事をやっていて、もっと上を目指したいと思う時、何のためにその仕事をやっているのかという原点に戻ると、次に何をするべきなのかわかるのかもしれません。

©2022横幕智裕・モリタイシ/集英社・映画「ラジエーションハウス」製作委員会

TEXT by Myson(国家資格キャリアコンサルタント/認定心理士)

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『サンダーボルツ*』オリジナル ユニセックスクルーネック(M) 『サンダーボルツ*』オリジナル ユニセックスクルーネック(Mサイズ)2名様 プレゼント

映画『サンダーボルツ*』オリジナル ユニセックスクルーネック(Mサイズ)2名様 プレゼント

映画『ロザリー』ナディア・テレスキウィッツ ロザリー【レビュー】

自分で作った美しいドレスを身にまとったロザリー(ナディア・テレスキウィッツ)は、父(ギュスタヴ・ケルヴェン)に連れられて…

映画『マリリン・モンロー 私の愛しかた』マリリン・モンロー 『マリリン・モンロー 私の愛しかた』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『マリリン・モンロー 私の愛しかた』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『サスカッチ・サンセット』ジェシー・アイゼンバーグ/ライリー・キーオ 『サスカッチ・サンセット』先行試写会 10名様ご招待

映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』ジャパンプレミア試写会 5組10名様ご招待

映画『ベイビーガール』ニコール・キッドマン ニコール・キッドマン【ギャラリー/出演作一覧】

1967年6月20日生まれ。アメリカ、ハワイ州ホノルル出身。

映画『女神降臨 After プロポーズ編』Kōki,/渡邊圭祐/綱啓永 女神降臨 After プロポーズ編【レビュー】

前編となる『女神降臨 Before 高校デビュー編』では、主人公の麗奈がメイクの力でなりたい自分に近づく様子が描かれていました。そして…

映画『ミステリアス・スキン』ジョセフ・ゴードン=レヴィット ミステリアス・スキン【レビュー】

2004年にグレッグ・アラキ監督により制作された本作は…

映画『リライト』池田エライザ 『リライト』舞台挨拶付き完成披露試写会イベント 5組10名様ご招待

映画『リライト』舞台挨拶付き完成披露試写会イベント 5組10名様ご招待

映画『The Taste of Nature II 幻のカカオを探して』 『The Taste of Nature II 幻のカカオを探して』特別先行試写会 10組20名様ご招待

映画『The Taste of Nature II 幻のカカオを探して』特別先行試写会 10組20名様ご招待

映画『ただ、愛を選ぶこと』 ただ、愛を選ぶこと【レビュー】

2024年度サンダンス映画祭のワールドシネマ・ドキュメンタリー部門で審査員大賞を受賞…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『プラダを着た悪魔』アン・ハサウェイ/メリル・ストリープ 元気が出るガールズムービーランキング【洋画編】

正式部員の皆さんに“元気が出るガールズムービー【洋画編】”をテーマに、好きな作品を選んでいただきました。果たしてどんな結果になったのでしょうか?

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス
  2. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  3. 映画『風たちの学校』

REVIEW

  1. 映画『ロザリー』ナディア・テレスキウィッツ
  2. 映画『女神降臨 After プロポーズ編』Kōki,/渡邊圭祐/綱啓永
  3. 映画『ミステリアス・スキン』ジョセフ・ゴードン=レヴィット
  4. 映画『ただ、愛を選ぶこと』
  5. 映画『#真相をお話しします』大森元貴/菊池風磨

PRESENT

  1. 映画『サンダーボルツ*』オリジナル ユニセックスクルーネック(M)
  2. 映画『マリリン・モンロー 私の愛しかた』マリリン・モンロー
  3. 映画『サスカッチ・サンセット』ジェシー・アイゼンバーグ/ライリー・キーオ
PAGE TOP