REVIEW

マイ・ニューヨーク・ダイアリー【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』マーガレット・クアリー

物語の舞台は1990年代。作家を夢見るジョアンナは少しでも自分の夢へと近づける職場を求めて、はるばるニューヨークへやってきます。そして彼女は幸運なことに、老舗出版エージェンシーで編集アシスタントとして働き始めます。本作はジョアンナ・ラコフの自叙伝「サリンジャーと過ごした日々」を原作としており、ジョアンナがこの自叙伝に綴った、出版エージェンシーで過ごした日々や当時の人物をモデルに物語が作られています。
ここで原作のタイトルを見て、おやっと思われた方もいるでしょう。なぜなら『ライ麦畑でつかまえて』などの著書で知られるJ.D.サリンジャーは、後世を人里離れたところで全く人と会わずに過ごしていたからです。私は以前からサリンジャーにとても興味があり、彼にまつわる映画も複数あるので一通り観てきました。それらの作品ではサリンジャーの気難しい側面を描いたものが多い印象でしたが、本作では違った一面を観ることができる点が魅力です。
また、本作でジョアンナが務める出版エージェンシーは、1929年に設立された“ハロルド・オーバー・アソシエイツ”とされていて、このエージェンシーはサリンジャーの他にアガサ・クリスティ、ウィリアム・フォークナー、F・スコット・フィッツジェラルドなど名だたる作家の作品を手掛けていました(公式サイトより)。劇中でも歴史に名を残すベストセラー作家達の名前が飛び交い、そのうちのある作家はユニークな形で登場したり、読書好きや作家自身に興味を持つ人にはたまらない要素が詰まっています。
そして、自分の夢に近い場所にいるようでいて実際は夢に向かってやるべきことをやれているのかわからず焦るジョアンナの気持ちにもすごく共感できます。彼女が日々の中で何を感じ、何に迷い、何に刺激を受けるのか、最後にどんな結論を出すのか、今夢を追いかけながらも自信をなくしている方はぜひ観てみてください。

デート向き映画判定
映画『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』マーガレット・クアリー/ダグラス・ブース

夢を追いかけるジョアンナが自分を振り返る上で、恋愛がとても重要な要素として描かれています。パートナーはある意味その時の自分を映す鏡のような役割を果たしていることに気付けるでしょう。今隣にいる人を好きかどうかということも重要ですが、その人と一緒にいる自分が好きかどうかも重要であるとわかるはず。それがわかってしまうと怖いという方は、1人で観に行って、心を整理しましょう。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』マーガレット・クアリー/シガニー・ウィーバー

ティーンの皆さんはだんだん具体的にどんな仕事がしたいかイメージするようになると思います。業界で捉えると同じだけれど、その中にある仕事は千差万別です。本作に登場するジョアンナは作家になるのが夢でそれが最初から最後までぶれませんが、それが正解か不正解かは人それぞれです。ジョアンナのように夢に近づける仕事に就いてみて、「やっぱり(最初に思っていたほうではなく)こっちのほうが良いかも」と考えが変わることは当然あります。自分に合った仕事って何だろうと考えるシミュレーションに本作を観るのもオススメです。

映画『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』マーガレット・クアリー/シガニー・ウィーバー

『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』
2022年5月6日より全国公開
ビターズ・エンド
公式サイト

9232-2437 Québec Inc – Parallel Films (Salinger) Dac © 2020 All rights reserved.

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ひゃくえむ。』 ひゃくえむ。【レビュー】

魚豊著の『チ。 ―地球の運動について―』がすごく好きなので、絶対に本作も…

映画『お嬢と番犬くん』櫻井海音 櫻井海音【ギャラリー/出演作一覧】

2001年4月13日生まれ。東京都出身。

映画『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』ビル・スカルスガルド ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝【レビュー】

実に楽しい!良い意味で「なんじゃこりゃ?」というハチャメチャなノリなのに…

ポッドキャスト:トーキョー女子映画部チャンネルアイキャッチ202509 ポッドキャスト【トーキョー女子映画部チャンネル】お悩み相談「どうしたらいい出会いがありますか?」他

今回は、正式部員の皆さんからいただいたお悩み相談の中から、下記のお2人のお悩みをピックアップして、マイソンなりにお答えしています。最後にチラッと映画の紹介もしています。

映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ ザ・ザ・コルダのフェニキア計画【レビュー】

REVIEWこれぞウェス・アンダーソン監督作という、何から何までかわいい世界観でありながら…

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

映画『こんな事があった』前田旺志郎/窪塚愛流 こんな事があった【レビュー】

2021年夏の福島を舞台に、主人公の17歳の青年のほか、震災後も苦悩しながら生きる人々の姿を…

映画『パルテノペ ナポリの宝石』セレステ・ダッラ・ポルタ セレステ・ダッラ・ポルタ【ギャラリー/出演作一覧】

1997年12月24日生まれ。イタリア出身。

映画『ブロークン 復讐者の夜』ハ・ジョンウ ブロークン 復讐者の夜【レビュー】

『工作 黒金星と呼ばれた男』『アシュラ』などを手掛けたサナイピクチャーズが贈る本作は…

映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』西島秀俊/グイ・ルンメイ Dear Stranger/ディア・ストレンジャー【レビュー】

真利子哲也監督(脚本も担当)による西島秀俊主演作という情報のみで、毎度ながら前情報をほぼ入れずに観て、いろいろ良い驚きが…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 ファストムービー時代の真逆を行こうと覚悟を決めた!大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート前編

『るろうに剣心』シリーズ、『レジェンド&バタフライ』などを手掛けた大友啓史監督が<沖縄がアメリカだった時代>を描いた映画『宝島』。今回、当部の部活史上初めて監督ご本人にご参加いただき、映画好きの皆さんと一緒に本作について語っていただきました。

映画『宝島』妻夫木聡/広瀬すず/窪田正孝 沖縄がアメリカ統治下だったことについてどう思う?『宝島』アンケート特集

【大友啓史監督 × 妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太】のタッグにより、混沌とした時代を自由を求めて全力で駆け抜けた若者達の姿を描く『宝島』が9月19日より劇場公開されます。この度トーキョー女子映画部では、『宝島』を応援すべく、正式部員の皆さんに同作にちなんだアンケートを実施しました。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『ふつうの子ども』嶋田鉄太/瑠璃
  2. 映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダー
  3. 映画『バーバラと心の巨人』マディソン・ウルフ

REVIEW

  1. 映画『ひゃくえむ。』
  2. 映画『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』ビル・スカルスガルド
  3. 映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ
  4. 映画『こんな事があった』前田旺志郎/窪塚愛流
  5. 映画『ブロークン 復讐者の夜』ハ・ジョンウ

PRESENT

  1. 映画『ホーリー・カウ』クレマン・ファヴォー
  2. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  3. 映画『ミーツ・ザ・ワールド』杉咲花/南琴奈/板垣李光人
PAGE TOP