REVIEW
主人公の野島浩介(北村有起哉)は、感動を呼び話題となっている自伝小説の映画化作品の助監督を務めています。野島は作品に活かすため、著者のARISAこと小原有紗(円井わん)の生い立ちや家族を知る人物に順に取材していきます。でも、野島が取材すればするほど、かつて貧しい家庭環境でヤングケアラーとして父を献身的に介護していたはずのARISAに関する美談に、次々と疑惑が湧いてきます。

映画業界やテレビ業界で今起きている問題をいろいろと思い浮かべてしまう要素のあるストーリーです。本作でいえば、娯楽とは何なのか、映画とは、小説とは何なのかをどう捉えているかを問いかける内容です。シンプルにいえば、おもしろければ何をやってもいいのかと問うています。

もう一つの問題は、大きなプロジェクトになるまでに多くの人が関わっていて、あらゆる立場の人の軽率な判断が積み重なり、根本の責任が誰にあるのかが追求不能な点です。同時に、関わる人達の生活がかかっているため、臭いものに蓋をしたい人達が主導権を握る状況に陥ってしまっています。この状況で“正しいこと”をできるのか否かが本作の見どころの一つです。

一方で、なぜ『逆火』というタイトルがついているのか気になるところです。あくまで私の解釈に過ぎませんが、炎が逆流する現象を指す“逆火”は、野島の仕事と私生活の状況の喩えになっているように思えます。仕事、作品に対する誠実さと、家族に対する誠実さは両立できるのか。表現を変えると、彼の誠実さは誰に伝わって、誰に伝わっていないのかを考えさせられます。

身近にいる相手に思いを届けられないのに、見知らぬ相手には思いが届くのか。本作を観ると、伝えるって何だろうと思えてなりません。改めて、映画の存在意義も考えさせられます。衝撃的な展開もあるので、精神的に元気な時に観てください。
デート向き映画判定

夫婦のやり取りが生々しく描かれているので、もし子育てに悩んでいたら、自分達の日常に直結させて観ることになるでしょう。根本的には誰も悪くないと思えるものの、全員が目の前の現実から逃げているために家族が危機に立たされているように見えます。現実に向き合いたいご夫婦は一緒に観ると、普段腹を割って話せないことを話すきっかけにできるかもしれません。
キッズ&ティーン向き映画判定

まだしがらみが少ない皆さんの年代なら、大人と違った角度で本作を観られる部分もありそうです。明らかに「それってアウトでしょ」と思える事柄にもかかわらず、どうにか隠し通そうとしてしまう大人達の姿を観て、反面教師にしてください。

『逆火』
2025年7月11日より全国順次公開
PG-12
KADOKAWA
公式サイト
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©2025「逆火」製作委員会
TEXT by Myson
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情報は2025年7月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
