REVIEW

ANORA アノーラ【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ANORA アノーラ』マイキー・マディソン/マーク・エイデルシュテイン

REVIEW

やっぱりショーン・ベイカー監督作はおもしろい!本作は一見シンデレラストーリーでありながら、ただでは終わらないだろうという期待に応えてくれる内容です。毎度のごとく、作品の世界観を表すテーマカラーのようなものが見てとれて、彩りのある映像にまず引き込まれます。

映画『ANORA アノーラ』マイキー・マディソン

そして、何よりキャラクターが魅力的。マイキー・マディソンが演じるアノーラはとってもキュートかつスマートでありながら、心の鎧を外すと一瞬にして崩れ落ちそうな脆さもあり、人生の荒波をどうくぐり抜けるのか目が離せません。マーク・エイデルシュテインが演じる金持ちのドラ息子トロスは愛嬌があり無邪気だからこそ、真意が読めない点で物語をドラマチックにしています。『コンパートメントNo.6』の名演が記憶に残るユーリー・ボリソフは、静かにジワジワと存在感を表し、物語のキーマンとして本作でも観客を魅了します。

映画『ANORA アノーラ』マイキー・マディソン/マーク・エイデルシュテイン

前半と後半でガラッとトーンが変わる本作は、キュートでエネルギッシュでちょっと意地悪なストーリーです。だからバッドエンドと受け取る方もいるかもしれません。ただ、本当の幸せとは何かを考えれば、本作は最高のハッピーエンドであり、アノーラがそのことに気づくまでの物語といえるのではないでしょうか。

ここからはあくまで私個人の解釈です。ネタバレしないように書いていますが、鑑賞後に読むことをオススメします。

映画『ANORA アノーラ』マイキー・マディソン/マーク・エイデルシュテイン

アノーラは自分の価値をわかっているようでわかっていなかったのだと感じます。職業柄、性的な魅力には自信があり、”ビジネス”上の関係なら冷静さを保てるし優位に立てる。つまり、性の対象としての自分の価値は十分にわかっていると思います。でも、”ビジネス”を超えて一人の女性として相手に期待するものが出てくると、愛なのか執着なのかわからない感情が芽生えてきて、相手に振り回されることになります。

そんなアノーラに対して、イゴールだけは最初から敬意を持って接しています。でも、性の対象としてのみ扱う他の男性達とは態度が違うので、アノーラからすると逆に珍しく思えても無理はありません。ラストで、アノーラはイゴールの反応によって、自分の存在価値に気づけた嬉しさと、それまでの悔しさと、やるせなさが込み上げてきたのではないでしょうか。本作は前半がまやかしのシンデレラストーリー、クライマックスが本当のシンデレラストーリーに思えます。

デート向き映画判定

映画『ANORA アノーラ』マイキー・マディソン/マーク・エイデルシュテイン

自分のことを大切にしてくれる人とはどういう人なのかを教えてくれるストーリーなので、付き合うべき相手を間違えていることに気付く可能性があります。なので、観終わった後に相手を一層愛おしく思えるか、急に気持ちが冷めてしまうか、読めないところがあります(苦笑)。相手への気持ちよりも、条件優先で交際を始めた方はデートではなく、1人でじっくり観るほうが良いでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『ANORA アノーラ』マイキー・マディソン/マーク・エイデルシュテイン/ユーリー・ボリソフ/カレン・カラグリアン

アノーラはちゃんと自分自身のことを大事にしていて、自分で自分のことを守り、冷静さも持っています。それでも、希望を持って踏み込んだ選択をした後は翻弄されます。ただ、恋愛は先が読めないのは皆同じで、試してみないとわかりません。そして、人が成長する機会は恋愛に多くあると思います。本作を観て擬似体験をすると、いろいろと学べることがあるように思います。R18なので18歳になったらぜひ観てみてください。

映画『ANORA アノーラ』マイキー・マディソン/マーク・エイデルシュテイン

『ANORA アノーラ』
2025年2月28日より全国公開
R-18+
ビターズ・エンド
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

© 2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved.

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年2月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『レイブンズ』瀧内公美さんインタビュー 『レイブンズ』瀧内公美さんインタビュー

写真家、深瀬昌久の78年に渡る波瀾万丈の人生を、実話とフィクションを織り交ぜて描いた映画『レイブンズ』。今回は本作で、深瀬昌久の最愛の妻であり被写体でもあった洋子役を演じた瀧内公美さんにインタビューさせていただきました。

映画『ミッキー17』ロバート・パティンソン ミッキー17【レビュー】

『パラサイト 半地下の家族』で第92回アカデミー賞(作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞)を受賞したポン・ジュノ監督(脚本、製作を兼務)が、この度制作したハリウッド映画は…

映画『ANORA アノーラ』マイキー・マディソン マイキー・マディソン【ギャラリー/出演作一覧】

1999年3月25日生まれ。アメリカ出身。

映画『BAUS 映画から船出した映画館』染谷将太 BAUS 映画から船出した映画館【レビュー】

2014年、東京都、吉祥寺の映画館“バウスシアター”が閉館となりました。本作は、この映画館を親の代から運営してきた本田拓夫著…

映画『白雪姫』レイチェル・ゼグラー 白雪姫【レビュー】

1937年に製作されたディズニーの『白雪姫』は、世界初のカラー長編アニメーションであり、ウォルト・ディズニー・スタジオの原点とされています…

映画『ニンジャバットマン対ヤクザリーグ』 ニンジャバットマン対ヤクザリーグ【レビュー】

バットマン・ファミリーが戦国時代の歴史改変を食い止めた『ニンジャバットマン』の続編…

【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性 自分を知ることからすべてが始まる【映画でSEL】

SEL(社会性と情動の学習)で伸ばそうとする社会的能力の一つに「自己への気づき」があります。他者を知るにも、共感するにも、自己をコントロールするにも、そもそも自分のことを全く理解していなければ始まりません。

映画『悪い夏』北村匠海 悪い夏【レビュー】

染井為人著の原作小説は、「クズとワルしか出てこない」と話題を呼び、第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞しています。映画化の際には…

映画『女神降臨 Before 高校デビュー編』Kōki,/渡邊圭祐/綱啓永 女神降臨 Before 高校デビュー編【レビュー】

本作は、縦スクロール形式のデジタルコミック“webtoon”で人気を博したyaongyi(ヤオンイ)作の同名コミックを原作としています…

映画『教皇選挙』レイフ・ファインズ 教皇選挙【レビュー】

圧倒されっぱなしの120分でした。教皇に“ふさわしい”人間の境界線をテーマに、神に仕える聖職者達の言動、ひいては人格を通して…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

学び・メンタルヘルス

  1. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  2. 映画『風たちの学校』
  3. 【映画でSEL】海辺の朝日に向かって手を広げる女性の後ろ姿

REVIEW

  1. 映画『ミッキー17』ロバート・パティンソン
  2. 映画『BAUS 映画から船出した映画館』染谷将太
  3. 映画『白雪姫』レイチェル・ゼグラー
  4. 映画『ニンジャバットマン対ヤクザリーグ』
  5. 映画『悪い夏』北村匠海

PRESENT

  1. 映画『ガール・ウィズ・ニードル』ヴィク・カーメン
  2. 映画『私の親愛なるフーバオ』
  3. 映画『デュオ 1/2のピアニスト』カミーユ・ラザ/メラニー・ロベール
PAGE TOP