REVIEW

Arc アーク【レビュー】

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映画『Arc アーク』芳根京子

これまでにも不老不死の是非について描かれている物語はたくさんありましたが、このテーマの作品を観る度に不老不死への夢を持っている人は少なからずいて、それは必ずしも本当に不老不死になりたいかどうかよりも、老いや死への恐怖から来ているのかなと感じます。本作は大きく分けて2種類の“生(せい)の保存”といえる方法が出てきて、前半に出てくる方法はかなりユニークです。同時にそれはとても不気味なのですが、死をどう受け取るかということ、自分自身ではなく身近な人の死、愛する人の死とどう向き合うかという価値観が出る描写としてとても興味深いです。
後半は医療の観点でも物語が展開していきますが、不老不死の技術に限らず一般的な病気の治療についても選択肢がある人とない人で運命が分かれてしまうこと、そのことで格差が生まれてしまう可能性があることを想像させられ、コロナ禍にある今(2021年6月現在)の状況とリンクしてリアルに感じられます。また当然ながら家族関係、人間関係にも影響が大きく、自然に逆らうことがどんなことなのかを考えさせられます。独特な不気味さが漂う作風も魅力的で、キャストも豪華なので、エンタテインメントとしても楽しめます。

デート向き映画判定
映画『Arc アーク』芳根京子/岡田将生

生や死というテーマは重く感じられますが、価値観がすごく出るポイントだと思います。ロマンチックなムードになるようなストーリーではありませんが、お互いがどんな価値観なのかを語るきっかけにできそうな内容です。一生添い遂げると考えると本作で出てくる問題は難しい選択になるはずなので、結婚を意識しているカップルは究極の選択の時にお互いを尊重できるかどうか劇中で登場する2組のカップルを観て考えてみるのも良いかもしれません。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『Arc アーク』芳根京子/寺島しのぶ

年を取らず死なないことは一見良いことのように思えるかもしれませんが、本作を観ると代償も大きいことがわかるでしょう。でも、不老不死という概念はキッズの皆さんにとってはまだ難しいと思います。ある程度背景を理解できるようになってから観たほうが、自分のこととして想像しながら考えることもできるので、中学生くらいになってから観るほうが良いのではないでしょうか。

映画『Arc アーク』芳根京子/寺島しのぶ/岡田将生/清水くるみ/井之脇海/中川翼/中村ゆり/倍賞千恵子/風吹ジュン/小林薫

『Arc アーク』
2021年6月25日より全国公開
ワーナー・ブラザース映画
公式サイト

© 2021映画『Arc』製作委員会

TEXT by Myson

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