REVIEW

ありふれた教室【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ありふれた教室』レオニー・ベネシュ

REVIEW

第73回ベルリン国際映画祭でW受賞、ドイツ映画賞主要5部門受賞、アカデミー賞国際長編映画賞ノミネートなど世界の映画祭で快挙を成した本作は、校内で多発する盗難を解決しようとする行動が負の連鎖を生む様子を描いています。犯人を突き止めようとして、学校がとる方法に納得がいかない新任教師カーラ(レオニー・ベネシュ)が、自分なりに解決しようとある策を講じたものの、それが悪転してしまい、問題は雪だるま式に膨れ上がっていきます。
憶測によって新たな問題が生まれ、どんどん複雑な状況に追い込まれる事態はどんな環境でも起こります。ただ、本作は、小さな社会ともいえる学校という環境では、そうした状況が輪をかけて複雑化してしまう背景を物語っています。そして、生徒思いのカーラが、弁明したい場面でも詳しい事情を明かせない状況に追い込まれてしまい、一方的に誤解されたままになる展開は、かなり現実的で、他人事とは思えません。大人だけの会社組織とは異なり、子ども、保護者を含む組織としての学校では、各々の利害関係も異なります。先生と生徒という立場も、上下関係でもなければ、商売上の関係でもないため、合理的に問題を解決するだけでは済まない側面があります。本作を観ていると、学校の運営が行き詰まるといかにストレスフルかが伝わってきます。もちろん、世の中には楽しい学校も存在しますが、本作を観ると、熱意や理想だけではどうにもならない学校運営の難しさを知ることができます。

デート向き映画判定

映画『ありふれた教室』レオニー・ベネシュ

どの立場の登場人物も、悶々とさせられる状況にあり、心穏やかには観られません。だからこそ見応えもあり、ストーリーに没入できると思います。デートで観るには向かないテーマではあるものの、子どもについてや子どもの学校について話し合いたいカップルは、話題を持ち出すきっかけとできるでしょうし、本作を観てからなら、踏み込んだ話に発展させやすいかもしれません。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『ありふれた教室』レオニー・ベネシュ

皆さんにも身近なストーリーです。いろいろな立場の生徒が登場するので、誰かしら感情移入できるキャラクターが見つかるでしょう。先生の立場、親の立場も客観視できるので、学校で起こる問題が複雑化してしまう構造を理解できる部分もあると思います。学校ではいろいろな噂が浮上するのは日常茶飯事だと思いますが、何を信じるべきか、どう行動すべきかを冷静にシミュレーションしてみてください。

映画『ありふれた教室』レオニー・ベネシュ

『ありふれた教室』
2024年5月17日より全国公開
アルバトロス・フィルム
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

© if… Productions/ZDF/arte MMXXII

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年5月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『九龍ジェネリックロマンス』吉岡里帆/水上恒司 九龍ジェネリックロマンス【レビュー】

“ジェネリックロマンス”という要素から何を期待するのか、そして本作で描かれる“ジェネリックロマンス”をどう受け取るのかは…

映画『ユニバーサル・ランゲージ』 ユニバーサル・ランゲージ【レビュー】

本作の舞台は、ペルシャ語とフランス語を公用語とする架空の世界のカナダ・ウィニペグで…

映画『ヒックとドラゴン』ニコ・パーカー ニコ・パーカー【ギャラリー/出演作一覧】

2004年12月9日生まれ。イギリス出身。

映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』吉永小百合 『てっぺんの向こうにあなたがいる』完成披露試写会 15組30名様ご招待

映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』完成披露試写会 15組30名様ご招待

映画『パルテノペ ナポリの宝石』セレステ・ダッラ・ポルタ パルテノペ ナポリの宝石【レビュー】

イタリアの巨匠パオロ・ソレンティーノ監督が初めて女性を主人公にして撮った本作の物語は、1950年にパルテノペが生まれるところから…

映画『8番出口』二宮和也 8番出口【レビュー】

観始めてスゴい設定だと驚き、何から何まで巧く作られていて…

映画『ムガリッツ』 『ムガリッツ』トークイベント付き特別先行試写会 5組10名様ご招待

映画『ムガリッツ』トークイベント付き特別先行試写会 5組10名様ご招待

映画『太陽がいっぱい』アラン・ドロン アラン・ドロン【ギャラリー/出演作一覧】

1935年11月8日生まれ。フランス出身。

映画『大統領暗殺裁判 16日間の真実』チョ・ジョンソク/イ・ソンギュン 大統領暗殺裁判 16日間の真実【レビュー】

1979年10月26日、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が暗殺されました。本作は、その暗殺事件に関わったメンバーのうち、軍人だったために唯一軍法裁判にかけられたパク・テジュ(イ・ソンギュン)と…

映画『Pacific Mother パシフィック・マザー』 『Pacific Mother パシフィック・マザー』一般向けオンライン試写会 10名様ご招待

映画『Pacific Mother パシフィック・マザー』一般向けオンライン試写会 10名様ご招待

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット 映画好きが選んだDCコミックス映画ランキング

今回は正式部員の皆さんに好きなDCコミックス映画について投票していただきました。“スーパーマン”や“バットマン”など人気シリーズが多くあるなか、上位にはどんな作品がランクインしたのでしょう?

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』トム・クルーズ 映画好きが選んだトム・クルーズ人気作品ランキング

毎度さまざまな挑戦を続け、人気を博すハリウッドの大スター、トム・クルーズ。今回は、トム・クルーズ出演作品(日本劇場未公開作品を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『シークレット・アイズ』キウェテル・イジョフォー/ジュリア・ロバーツ /ニコール・キッドマン 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.5

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダー
  2. 映画『バーバラと心の巨人』マディソン・ウルフ
  3. 映画『We Live in Time この時を生きて』フローレンス・ピュー/アンドリュー・ガーフィールド

REVIEW

  1. 映画『九龍ジェネリックロマンス』吉岡里帆/水上恒司
  2. 映画『ユニバーサル・ランゲージ』
  3. 映画『パルテノペ ナポリの宝石』セレステ・ダッラ・ポルタ
  4. 映画『8番出口』二宮和也
  5. 映画『大統領暗殺裁判 16日間の真実』チョ・ジョンソク/イ・ソンギュン

PRESENT

  1. 映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』吉永小百合
  2. 映画『ムガリッツ』
  3. 映画『Pacific Mother パシフィック・マザー』
PAGE TOP