REVIEW

大いなる自由【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『大いなる自由』フランツ・ロゴフスキ

本作のシーンの大半は、刑務所の中で展開します。不自由を象徴する刑務所を舞台にした物語で『大いなる自由』というタイトルが付いている理由を考えながら観る方もいらっしゃるでしょう。そのタイトルの由来は、結末でわかると同時に、改めてストーリーを振り返り、その意味を考えるきっかけとなります。
本作はドイツで同性愛が違法とされていた時代の刑法175条にまつわるストーリーです。主人公のハンス(フランツ・ロゴフスキ)は何度も、175条の罪で投獄されます。また、物語は3つの時代を行き来し、彼の恋愛遍歴を描いています。では、同性愛が違法とされている時代を背景に描かれるハンスの恋愛遍歴は何を表現しているのでしょうか。同性同士の肉体関係に罪があるのか、同性の相手を愛することが罪なのか、罪の本質を投げかける内容となっています。その答えは、彼が何度も投獄される事実にあります。そして、結末を観れば、彼が本当に望んでいたものは愛だとわかります。愛のために彼が最後にとる選択こそ、彼にとっては“大いなる自由”なのかもしれません。
あまりに不条理な物語ではありますが、とてもロマンチックなラブストーリーでもあります。ロマンチックであるからこそ、政治的かつ社会的な弾圧がもたらす残酷さが伝わってきます。本作の公式資料に「主人公のハンスは、罪もなく繰り返し刑務所へ送られ、存在を否定され、人間関係を壊され、国家の記録の中に消えていった無数の人たちであり、その人たちの運命そのものです」とある通り、信じられないけれどこんな現実があったことを知るきっかけとなる作品です。そして、社会問題とラブストーリーを見事に融合させることで、観る者に問題提起をしている点でも意義深さを感じます。

デート向き映画判定
映画『大いなる自由』フランツ・ロゴフスキ/ゲオルク・フリードリヒ

性描写があるので、初デートでは少々気まずいかもしれません。ただ、お互いを大切にする姿が描かれているので、一緒に観ると隣にいるパートナーを一層愛おしい存在に感じるでしょう。語りたくなる要素があるので、解釈を議論するのが好きなカップルにオススメです。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『大いなる自由』

本作は3つの時代を行き来して、物語が描かれています。ドイツの時代背景を知った上で観るほうがより理解が深まると思います。まずは本作の公式サイトに記載された「ドイツ刑法175条」の説明を読むことをオススメします。この175条はなんと1871年から1994年まで、約120年間も続いてきました。それまでに処罰された方は14万人に及ぶとされています。このとても不条理な史実の背景に、人間の醜い思想が見えてきます。歴史の勉強だけでなく、人間を知るための勉強にもなるので、高校生になったら観てみてください。

映画『大いなる自由』フランツ・ロゴフスキ

『大いなる自由』
2023年7月7日より全国順次公開
R-15+
Bunkamura
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

©2021FreibeuterFilm・Rohfilm Productions

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『Mr.ノボカイン』ジャック・クエイド Mr.ノボカイン【レビュー】

痛みを感じない疾患を持つ主人公、ネイサン・カイン(ジャック・クエイド)は…

映画『罪人たち』マイケル・B・ジョーダン/マイルズ・ケイトン 罪人たち【レビュー】

ライアン・クーグラー監督と、マイケル・B・ジョーダンの名コンビが贈る本作は、まず設定がとても…

映画『おばあちゃんと僕の約束』プッティポン・アッサラッタナクン/ウサー・セームカム おばあちゃんと僕の約束【レビュー】

『バッド・ジーニアス危険な天才たち』など数々の話題作を放ち、タイで勢いのあるスタジオとして注目を浴びるGDHが手がけた本作は…

映画『異端者の家』ソフィー・サッチャー ソフィー・サッチャー【ギャラリー/出演作一覧】

2000年10月18日生まれ。アメリカ、シカゴ出身。

映画『リライト』池田エライザ リライト【レビュー】

法条遥による同名小説を映画化した本作は、松居大悟監督とヨーロッパ企画の代表である上田誠が初タッグを組んだ作品です。“時間もの”作品で…

映画『親友かよ』アンソニー・ブイサレートピシットポン・エークポンピシット 親友らしい態度とは?『親友かよ』【映画でSEL(社会性と情動の学習)】

今回は『親友かよ』を取り上げ、親友らしい態度とは何かを考えます。

映画『サブスタンス』マーガレット・クアリー マーガレット・クアリー【ギャラリー/出演作一覧】

1994年10月23日生まれ。アメリカ出身。

映画『フロントライン』小栗旬/松坂桃李 フロントライン【レビュー】

2020年1月20日に横浜港を出港した豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号では、その後、香港で下船した乗客が新型コロナウイルス感染症に罹患していることがわかり…

映画『プレデター:最凶頂上決戦』 プレデター:最凶頂上決戦【レビュー】

アニメーションとはいえ、さすが“プレデター”シリーズとあって、描写が激しく…

映画『女神降臨 Before 高校デビュー編』綱啓永 綱啓永【ギャラリー/出演作一覧】

1998年12月24日生まれ。千葉県出身。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』トム・クルーズ 映画好きが選んだトム・クルーズ人気作品ランキング

毎度さまざまな挑戦を続け、人気を博すハリウッドの大スター、トム・クルーズ。今回は、トム・クルーズ出演作品(日本劇場未公開作品を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『プラダを着た悪魔』アン・ハサウェイ/メリル・ストリープ 元気が出るガールズムービーランキング【洋画編】

正式部員の皆さんに“元気が出るガールズムービー【洋画編】”をテーマに、好きな作品を選んでいただきました。果たしてどんな結果になったのでしょうか?

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『親友かよ』アンソニー・ブイサレートピシットポン・エークポンピシット
  2. 映画『年少日記』
  3. 映画『か「」く「」し「」ご「」と「』奥平大兼/出口夏希/佐野晶哉(Aぇ! group)/菊池日菜子/早瀬憩

REVIEW

  1. 映画『Mr.ノボカイン』ジャック・クエイド
  2. 映画『罪人たち』マイケル・B・ジョーダン/マイルズ・ケイトン
  3. 映画『おばあちゃんと僕の約束』プッティポン・アッサラッタナクン/ウサー・セームカム
  4. 映画『リライト』池田エライザ
  5. 映画『フロントライン』小栗旬/松坂桃李

PRESENT

  1. 映画『ババンババンバンバンパイア』吉沢亮/板垣李光人
  2. 映画『サンダーボルツ*』オリジナル ユニセックスクルーネック(M)
  3. 中国ドラマ『墨雨雲間〜美しき復讐〜』オリジナルQUOカード
PAGE TOP