REVIEW

ドロップアウト〜シリコンバレーを騙した女【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
海外ドラマ『ドロップアウト〜シリコンバレーを騙した女』アマンダ・セイフライド

REVIEW

これが実話だとは信じられないような内容で、いろいろな面でゾッとします。真面目で勉強熱心なエリザベス・ホームズ(アマンダ・セイフライド)は、スタンフォード大学に入学します。エリザベスは在学中に画期的なアイデアを思い付き、ビジネスを立ち上げようと決意して、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツに倣い、大学を中退します。そして、大学の学費になっていたはずのお金を親に投資してもらい、セラノスという会社を設立します。セラノスでは、指先を針で指して採取する一滴の血液であらゆる検査が一度にできるキットを開発すると公言していました。本来、医療技術の開発には、長い時間と高度な設備、優秀な人材が必要で、巨額の資金を要します。エリザベスは根気よく資金集めを続けていきますが、製品完成の目処がなかなかたたず追い込まれていきます。

海外ドラマ『ドロップアウト〜シリコンバレーを騙した女』アマンダ・セイフライド/ナヴィーン・アンドリュース

始めはエリザベスの奮闘を観て、応援したくなります。ただ、窮地に追い込まれた時についた嘘がきっかけで、どんどん歯車が狂っていきます。医療技術は直接人命に関わるため、確約できないことがあって当然です。同時に、人助けになるかもしれない製品だとしても、いつまでも製品ができなければ投資家は撤退してしまい、開発が続けられないというジレンマがつきまといます。そんな状況で、根本は人のためになると信じているアイデアだからこそ、エリザベスの中に歪んだ正義感、肯定感が生まれてしまったのかもしれません。

海外ドラマ『ドロップアウト〜シリコンバレーを騙した女』アマンダ・セイフライド/ナヴィーン・アンドリュース

10代で起業したエリザベスは、自分が女性であること、まだ若いことで、大人の投資家達に舐められるのではないかと疑心暗鬼になります。実際にそういう目で見られる場面もあれば、逆に期待を得る場面もあります。女性だから、若いから優秀な経営者になれないということはありません。ただ、彼女が常にそういう恐れを胸に抱えながら経営をしていたことで、虚栄心が異常に膨らんでしまい、その後の桁外れの自己中心的な言動に結びついたように思えてなりません。あるキャラクターのセリフには「善人の暴走」という言葉がありました。「良かれと思って」という言い訳が悪事に使われると計り知れない破壊を生むのだということをまざまざと見せつけられるストーリーです。

海外ドラマ『ドロップアウト〜シリコンバレーを騙した女』アマンダ・セイフライド

本作で描かれている出来事はとても厄介でタチが悪いです。保身に走り過ぎたエリザベスも憎らしくて仕方がない存在になっていきます。一方で、真摯な姿勢で開発に情熱を注ぐ科学者達の姿も印象に残ります。ラストは、少女時代、青春時代を過ごさず大人になったエリザベスにとって、“普通の女の子”としての経験が意味するものを示していたように思います。現在、彼女がどうしているか気になる方は、ネットで調べてみてください。

海外ドラマ『ドロップアウト〜シリコンバレーを騙した女』アマンダ・セイフライド

『ドロップアウト〜シリコンバレーを騙した女』
2022年4月7日よりディズニープラス スターにて配信中
ディズニープラス作品ページ

© 2024 Disney and related entities

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ナイトフラワー』北川景子/森田望智 ナイトフラワー【レビュー】

『ミッドナイトスワン』で第44回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した内田英治監督が、“真夜中シリーズ”と銘打つ本作は…

映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン 『Fox Hunt フォックス・ハント』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『Fox Hunt フォックス・ハント』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『新解釈・幕末伝』山下美月 山下美月【ギャラリー/出演作一覧】

1999年7月26日生まれ。東京都出身。

映画『もういちどみつめる』筒井真理子/髙田万作 もういちどみつめる【レビュー】

「18・19歳の厳罰化を目的とした、2022年の少年法改正に対して抱いた疑問から制作を始めました」(映画公式サイト、佐藤慶紀監督)とあるように…

映画『喝采』ジェシカ・ラング 『喝采』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『喝采』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『ヒックとドラゴン』メイソン・テムズ メイソン・テムズ【ギャラリー/出演作一覧】

2007年7月10日生まれ。アメリカ生まれ。

「Kodansha Studios 設立発表会見」野間省伸(株式会社講談社 代表取締役社長)、 クロエ・ジャオ(Kodansha Studios 最高クリエイティブ責任者)、 ニコラス・ゴンダ(Kodansha Studios COO) 映画業界に新風を吹かせられるか?2025新レーベル発足および官民の取組みまとめ

今回は近日発足された新レーベルと、官民の取組みについてまとめて紹介します。

映画『果てしなきスカーレット』 果てしなきスカーレット【レビュー】

細田守が原作、脚本、監督を担当した本作は、16世紀のデンマークの王女、スカーレットが主人公です。細田監督は…

映画『ブラックフォン2』イーサン・ホーク/メイソン・テムズ ブラックフォン2【レビュー】

2022年に作られたシリーズ1作目『ブラック・フォン』から4年後を描いた本作でも…

映画『金髪』白鳥玉季さんインタビュー 『金髪』白鳥玉季さんインタビュー

今回は『金髪』で生徒の板緑役を演じた白鳥玉季さんにインタビューさせていただきました。“金髪デモ”を起こすキーパーソンである板緑を演じた感想や、撮影裏でのエピソードを直撃しました。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  2. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  3. 映画『おーい、応為』長澤まさみ

REVIEW

  1. 映画『ナイトフラワー』北川景子/森田望智
  2. 映画『もういちどみつめる』筒井真理子/髙田万作
  3. 映画『果てしなきスカーレット』
  4. 映画『ブラックフォン2』イーサン・ホーク/メイソン・テムズ
  5. 映画『TOKYOタクシー』倍賞千恵子/木村拓哉

PRESENT

  1. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
  2. 映画『喝采』ジェシカ・ラング
  3. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
PAGE TOP