10代で『KIDS/キッズ』の脚本を手掛け、2012年には監督作『スプリング・ブレイカーズ』でも話題を呼んだハーモニー・コリンが、今回マシュー・マコノヒーとタッグを組んだということで、これは見逃すわけにはいきません。『スプリング・ブレイカーズ』と同様、今作もポップでカラフルな世界観が魅力となっていますが、ぶっ飛び方が陽気です。マシュー・マコノヒーが演じる主人公ムーンドッグは、名作を生み出してきた詩人。でも彼は酒と女性なしには生きられず、妻と娘がいながら、放浪先で豪遊しています。でも、そんなある日、彼に大きな転機が訪れ、これまでのようにはいかなくなります。ここから先は本編でご覧いただくとして、主人公がただ逆境を乗り越える綺麗なお話になっていないところに、ハーモニー・コリンらしさを感じます。まさに我が道をゆくムーンドッグの破天荒さが常識の枠を越えていて新鮮。ラストは、社会に縛られないムーンドッグの驚くべきユーモアが、社会のステレオタイプの価値観にもの申す破壊力にも見えて、その表現の巧みさに驚かされます。
そしてムーンドッグを始め、彼の妻ミニー、悪友ランジェリー、旅仲間のフリッカーといったキャラクターは強烈な個性を持っていて、マシュー・マコノヒー、アイラ・フィッシャー、スヌープ・ドッグ、ザック・エフロンがこの灰汁の強いキャラクターを見事に演じています。日本人からすると特に、主人公達は別次元にイッちゃってるので、わかりやすく笑えるコメディという感じではないかもしれませんが、「ま、いっか〜!」と陽気なムードに浸れるので、むしゃくしゃしている時に観てみると良さそうです。
あからさま過ぎて逆にエロさはありませんが、セクシャルなシーンがちょいちょい出てくるので、初デートや付き合いが浅いカップルはちょっと気まずいでしょう。逆にベテランカップルは、ムーンドッグとミニーの関係にある意味共感できるところもありそうです。あと、周囲から自分達が浮いてしまっているように感じているカップルも、「自分達はこれでイイじゃん」と思えて、結束が深まるかもしれません(笑)。
R15なので15歳未満の人は観られません。というか、年齢的にOKでも、ティーンが本作を観てどんな反応をするかが読めません(笑)。カラッと明るく能天気な要素が魅力的な作品なので、若さと勢いという部分では共感できるかもしれませんが、もしかしたら酸いも甘いも経験してから観たほうがより味わい深く感じるようにも思います。
『ビーチ・バム まじめに不真面目』
2021年4月30日より全国順次公開
キノシネマ
公式サイト
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TEXT by Myson