REVIEW

ベン・イズ・バック【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ベン・イズ・バック』ジュリア・ロバーツ/ルーカス・ヘッジズ

リハビリ施設を抜けだし実家に帰ってきた薬物依存症の息子と母親を中心とした物語で、母の愛は偉大で美しいというような美談ではなく、どんなに子どもを愛している母親でも、子どもに対してどうして良いかわからないこともあるし、正しいかどうか最後まで答えがわからない場合もあるという現実を突きつけられる内容です。「子どもを信じてあげられるのは自分だけ」という思いと、「守りたいからこそ子どもの嘘を見抜かなければ」という思いで葛藤を抱えながら息子と向き合う母親をジュリア・ロバーツが好演しており、こういう極端な状況でなくても、親はいつもこういう気持ちなんだなとリアルに体感させられます。
この作品に限らず語られていることですが、薬物依存症の原因として、非行から薬に手を出すだけではなく、怪我や病気の治療の一環として処方された薬がきっかけとなるケースがあります。だからこそ誰にでも起こりえることで、依存症になった人の人格や意志の弱さの問題だけではないことがわかって、身近な問題に思えるはずです。本作のベンも家族思いの優しい青年で、家族に心配、迷惑をかけまいと必死ですが、彼のように“まさか”という人物でもこういう問題に陥るという点で、他人事として観られません。そして、家族が大きな問題を抱えた時、やはり助けられるのは家族だけであり、お互いに失敗しても、答えが見つからなくても、向き合うことをやめてはいけないのだなと感じました。
本作の監督ピーター・ヘッジズと、ベンを演じたルーカス・ヘッジズは実際の親子で、ルーカスは父親の作品には絶対に出ないと言っていたのを、ジュリア・ロバーツが覆して出演を説得したそうですが、この深い家族の物語を才能ある本物の親子が携わって作ったと思うと、余計に感慨深いです。

デート向き映画判定
映画『ベン・イズ・バック』ルーカス・ヘッジズ/キャスリン・ニュートン

ロマンチックなムードになるストーリーではなく、重いテーマですが、大切な人を守るとはどういうことかを考えさせられる内容なので、鑑賞後に感想などを語り合うと、お互いの家族観を知ることができそうです。大切だからこそ心配をかけまいと本当のことを言わない時もありますが、そういう時こそお互いにどうするか決め事をするきっかけにするのも良いかも知れません。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『ベン・イズ・バック』ジュリア・ロバーツ/ルーカス・ヘッジズ

大きくなってくると、自分だけで責任を取らなければいけないと抱えこんだり、家族に心配をかけまいとして余計に泥沼に陥ったりする人もいるでしょう。家族がしつこく詮索してきたり、干渉してくるのがうっとうしいと感じることもあると思いますが、自分のことのように心配してくれるのは家族だからです。本作を観ると、どんなことがあっても簡単には切れない家族の絆を信じられるはずです。

映画『ベン・イズ・バック』ジュリア・ロバーツ/ルーカス・ヘッジズ

『ベン・イズ・バック』
2019年5月24日より全国公開
東和ピクチャーズ
公式サイト

©2018- BBP WEST BIB, LLC

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『ナイトフラワー』北川景子/森田望智 ナイトフラワー【レビュー】

『ミッドナイトスワン』で第44回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した内田英治監督が、“真夜中シリーズ”と銘打つ本作は…

映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン 『Fox Hunt フォックス・ハント』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『Fox Hunt フォックス・ハント』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『新解釈・幕末伝』山下美月 山下美月【ギャラリー/出演作一覧】

1999年7月26日生まれ。東京都出身。

映画『もういちどみつめる』筒井真理子/髙田万作 もういちどみつめる【レビュー】

「18・19歳の厳罰化を目的とした、2022年の少年法改正に対して抱いた疑問から制作を始めました」(映画公式サイト、佐藤慶紀監督)とあるように…

映画『喝采』ジェシカ・ラング 『喝采』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『喝采』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『ヒックとドラゴン』メイソン・テムズ メイソン・テムズ【ギャラリー/出演作一覧】

2007年7月10日生まれ。アメリカ生まれ。

「Kodansha Studios 設立発表会見」野間省伸(株式会社講談社 代表取締役社長)、 クロエ・ジャオ(Kodansha Studios 最高クリエイティブ責任者)、 ニコラス・ゴンダ(Kodansha Studios COO) 映画業界に新風を吹かせられるか?2025新レーベル発足および官民の取組みまとめ

今回は近日発足された新レーベルと、官民の取組みについてまとめて紹介します。

映画『果てしなきスカーレット』 果てしなきスカーレット【レビュー】

細田守が原作、脚本、監督を担当した本作は、16世紀のデンマークの王女、スカーレットが主人公です。細田監督は…

映画『ブラックフォン2』イーサン・ホーク/メイソン・テムズ ブラックフォン2【レビュー】

2022年に作られたシリーズ1作目『ブラック・フォン』から4年後を描いた本作でも…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. 映画『ナイトフラワー』北川景子/森田望智
  2. 映画『もういちどみつめる』筒井真理子/髙田万作
  3. 映画『果てしなきスカーレット』
  4. 映画『ブラックフォン2』イーサン・ホーク/メイソン・テムズ
  5. 映画『TOKYOタクシー』倍賞千恵子/木村拓哉

PRESENT

  1. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
  2. 映画『喝采』ジェシカ・ラング
  3. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
PAGE TOP