REVIEW

秘密の森の、その向こう【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『秘密の森の、その向こう』ジョセフィーヌ・サンス/ガブリエル・サンス

『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ監督作ということで、期待を膨らませる映画ファンもいらっしゃることでしょう。シアマ監督が作り出す独特な世界観は本作にも通じていて、絵画のような美しい情景と、丁寧に描かれる心情描写が印象的な作品となっています。
本作の物語の舞台は、人気のない森。その森の中にぽつんと佇む家が、主人公ネリー(ジョセフィーヌ・サンス)の祖母の家です。祖母を亡くしたばかりのネリーは両親とともに祖母の家の整理に訪れます。滞在期間中、ネリーが森を探検していると、1人の少女(ガブリエル・サンス)が現れます。ここからは映画で観ていただくとして、本作に登場する2人の少女は、ジョセフィーヌとガブリエルの双子の姉妹が演じています。2人が本当に可愛くて、時に彼女達の普段の仲の良さが滲み出ているシーンもあり、とても癒されます。2人は本作が映画初出演だそうですが、劇中劇の演技ですら演技力を感じさせていて、将来がとても楽しみです。
本作は娘と母、祖母の三世代に渡る物語です。三者の関係を丸ごと描いているというよりも、娘と母、母と祖母、孫と祖母、それぞれの関係性を日常の自然なやり取りで見事に表現しています。なぜ、2人の少女のストーリーになぞらえたのかというところは結末でじんわり伝わってきます。言葉で言い表せない、言い表せたとしても伝えきれない複雑な感情と、母の優しさ、子の優しさを、こういった形でみせるとはさすがセリーヌ・シアマ監督です。母という重圧を抱えて生きている世のお母さん、お母さんが大好きだからこそ心配が絶えない子ども達、両方に観て欲しい1作です。

デート向き映画判定
映画『秘密の森の、その向こう』ジョセフィーヌ・サンス

物語の軸ではありませんが、夫婦という枠組みで観られる要素もあります。本作で起きる出来事に直面した時、大半の人はあたふたしてしまうと思います。でも、そっとしておく、相手を信じて待つという姿勢も大切だということを客観視できるでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『秘密の森の、その向こう』ジョセフィーヌ・サンス/ガブリエル・サンス

小さいうちはおとぎ話を観るような感覚で観ると良いかもしれません。小学校高学年以上なら、ネリーと同じ目線で観られるので、素直に湧き出る感情を大切に観て欲しいと思います。中学生以上なら、いろいろなキャラクターの視点で観ることで、人間理解に繋がりそうです。

映画『秘密の森の、その向こう』ジョセフィーヌ・サンス/ガブリエル・サンス

『秘密の森の、その向こう』
2022年9月23日より全国順次公開
ギャガ
公式サイト

© 2021 Lilies Films / France 3 Cinéma

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『TOKYOタクシー』倍賞千恵子/木村拓哉 TOKYOタクシー【レビュー】

クリスチャン・カリオン監督『パリタクシー』を原作とした本作は、東京にある柴又から神奈川の葉山にある高齢者施設までの道のりを舞台に、山田洋次監督が映画化…

映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ 心理学から観る映画59:研究倫理に反する実験とその被害『エクスペリメント』『まったく同じ3人の他人』

『まったく同じ3人の他人』というドキュメンタリーを観ました。生き別れた三つ子が再会する感動のストーリーかと思いきや、驚愕の背景を知り、研究倫理について改めて考えさせられました。そこで今回は研究倫理をテーマとします。

映画『コンビニ・ウォーズ~バイトJK VS ミニナチ軍団~』ヴァネッサ・パラディ ヴァネッサ・パラディ【ギャラリー/出演作一覧】

1972年12月22日生まれ。フランス出身。

映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮 ブルーボーイ事件【レビュー】

高度成長期にあった1965年の東京では、街の浄化のため、警察はセックスワーカー達を厳しく取り締まっていました。ただ、セックスワーカーの中には性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けて女性的な体をした通称ブルーボーイが…

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 君の顔では泣けない【レビュー】

高校1年生の夏、坂平陸(武市尚士)と水村まなみ(西川愛莉)はプールに一緒に落ちたことで体が入れ替わってしまいます。2人はすぐに元に戻ることができず15年を過ごし…

映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト スプリングスティーン 孤独のハイウェイ

物語の舞台は1982年。ブルース・スプリングスティーン(ジェレミー・アレン・ホワイト)は、名声を手に入れながらも、葛藤を抱えて…

映画『2つ目の窓』松田美由紀 松田美由紀【ギャラリー/出演作一覧】

1961年10月6日生まれ。東京都出身。

「第38回東京国際映画祭」クロージングセレモニー:受賞者 東京グランプリは『パレスチナ36』!第38回東京国際映画祭ハイライト

2025年10月27日(月)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕したアジア最大級の映画の祭典である第38回東京国際映画祭が、11月5日(水)に閉幕。今年も個性豊かな作品が多数出品され、さまざまなイベントが実施されました。以下に、第38回東京国際映画祭ハイライトをお届けします。

映画『平場の月』堺雅人/井川遥 平場の月【レビュー】

朝倉かすみ著の同名小説を実写化した本作は、『ハナミズキ』『花束みたいな恋をした』(2021年)などを手がけた土井裕泰が監督を務めて…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  2. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  3. 映画『おーい、応為』長澤まさみ

REVIEW

  1. 映画『TOKYOタクシー』倍賞千恵子/木村拓哉
  2. 映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮
  3. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人
  4. 映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト
  5. 映画『平場の月』堺雅人/井川遥

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP