色鮮やかでアーティスティックなこの世界観はやっぱり蜷川実花監督にしか作り出せないものだろうと思います。一方、この世界観はかなり個性的でインパクトがあるので、非現実的に見え過ぎる可能性があります。それでいて、現実の世界とファンタジーの世界の境界線が良い意味で曖昧で、バランスよく描かれています。だからこそ、四月一日=わたぬき(神木隆之介)が美しい蝶に導かれて訪れる侑子(柴咲コウ)の店が実際にどこかにあるようなリアリティを感じさせるのでしょう。
キャラクターも皆魅力的で悪い者か良い者かがわからず引き寄せられてしまう不気味さが、この物語の展開を盛り上げるのに一役買っています。俳優達も役にピッタリ合っていて、それぞれのキャラクターが立っている点にも好感が持てます。
本作はビジュアル・インパクトが強い点がまず魅力の1つでありつつ、ストーリーにもシンプルで強いメッセージが込められています、普段何気なく頭に描く理想が裏を返すと全然違ったものに見えたり、観る者に自分自身を客観視させるきっかけをくれます。アーティスティックな作品に興味がある方は、物事がうまくいかない日々に悶々としている方も気分転換に観てみてはいかがでしょうか。
個性が強い作品なので、正直なところ好き嫌いは分かれそうな気はします。でも、デートで観て気まずくなるようなシーンはないので、2人とも興味があればデートで観るのもアリでしょう。「もし、自分が侑子の店に行けたら願い事をするか?」など、観終わった後にいろいろ想像して話したくなる話題も出てくるのではないでしょうか。
表面的なところだけ見て、「こうなりたい」「こうしたい」という願いはいろいろ出てくるかもしれませんが、「本当にそれでいいの?それはこういうことなんですよ」という新たな視点を提示してくれる物語です。なので自分の価値観を整理するきっかけになる部分があるかもしれません。高校生達の友情物語も描かれているので、皆さんの世代は一層等身大の気持ちで観られると思います。
『ホリック xxxHOLiC』
2022年4月29日より全国公開
松竹、アスミック・エース
公式サイト
©2022映画「ホリック」製作委員会 ©CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社
TEXT by Myson