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GAGARINE/ガガーリン【レビュー】

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映画『GAGARINE/ガガーリン』アルセニ・バティリ/リナ・クードリ/ジャミル・マクレイヴン

物語の舞台はフランスの郊外に実在した公営住宅ガガーリン。この団地が驚くほど巨大なのですが、2024年に行われるパリ五輪に向けて取り壊されようとしています。ここに住む16歳の少年ユーリは宇宙への憧れを持ち、いろいろな知識を持っていて、その知恵を働かせて団地が取り壊されないよう奮闘します。でも結局取り壊しが決まり、住人達が次々と団地を去るなかで、ユーリは1人ぼっちになってしまいます。
ガガーリンといえば、人類初の有人宇宙飛行をしたソビエト連邦のユーリイ・ガガーリンを頭に浮かべる方が多いと思います。この地区の名前がガガーリンということもありますが、主人公のユーリと宇宙との関係にどんな意味があるのか考えながら観て、ふと思いました。もちろんユーリが宇宙飛行士になる夢を持っているというところは繋がっているのですが、根底で表現しているのは、“孤独”なのではないかと思います。長らく家を留守にしている母親はユーリを迎えにこない、近所の人も友達も皆去って行くなかで、ユーリはどんどん孤独になっていきます。この巨大な団地の中で人知れずこっそりと住み続けるユーリはまさに宇宙に1人取り残されたような状況です。あくまでこれは私の解釈ですが、そんなユーリの孤独感がいかに大きなものなのか、見事に比喩していると思いました。
主演のアルセニ・バティリは本作が俳優デビューとのことですがとても自然な演技でユーリというキャラクターを魅力的に体現しています。また出演作が続くリナ・クードリも作品に華を添えていて、青春物語としても引き込まれます。若者の繊細な心情を描いた、とても叙情的な作品となっています。この独特な世界観を1度味わってみてください。

デート向き映画判定
映画『GAGARINE/ガガーリン』アルセニ・バティリ/リナ・クードリ

爽やかでロマンチックなシーンもあり、デートのムードにもピッタリです。切ない展開もありますが、人の優しさ、繋がりが感じられるストーリーなので、穏やかな気分で映画デートができるでしょう。タイトルからして宇宙の話=SF映画と勘違いされるかもしれませんが、ある1人の高校生の日常を描いた作品なので、人間ドラマが好きな相手を誘うと良いでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『GAGARINE/ガガーリン』アルセニ・バティリ

主人公は皆さんと同じ年頃で、どうしようもない孤独感を見事に表現しているので一層感情移入できると思います。16歳のユーリは、半分子どもで半分大人。だから、自分で何とかしようともがいていますが、心のどこかで助けを求めて叫んでいるようにも見えます。人は誰でも1度は、どんな状況にあっても孤独に陥って辛くなることがあります。でも本作は、ふと視点を変えると見えてくるものがあるかもしれないと思わせてくれる内容です。捉え方はさまざまだと思いますが、皆さんの世代には特に刺さるのではないでしょうか。

映画『GAGARINE/ガガーリン』アルセニ・バティリ

『GAGARINE/ガガーリン』
2022年2月25日より全国公開
ツイン
公式サイト

©2020 Haut et Court – France 3 CINÉMA

TEXT by Myson

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2007年7月10日生まれ。アメリカ生まれ。

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