REVIEW

怪物【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『怪物』安藤サクラ/黒川想矢

たった1本の映画を観ている間にこんなに視点を動かされるとは思いませんでした。本作を観ていると、いかに自分が思い込みを持って物事を見ているかを実感させられます。また、物語が進むにつれて複数のテーマが取り上げられていくなかで、真相が見えてくる度に自分の思い込みによって見え方が全く異なることにも気付かされます。きっと本作は1度目、2度目、3度目と観る度に、同じシーンでも違った見え方が出てくると思います。
序盤では、学校と家庭の問題がテーマとなるかのような緊張感が漂います。教師と保護者のやりとりを観ていると、教師達に激しい苛立ちを感じるものの、背景がわかってくると、私達は普段あまりに断片的な情報だけで物事を判断していることを実感します。また、人間は問題に発展する事態を避けるために事実を包み隠したり、嘘を言うけれど、結果的には逆に問題を生んでいるとわかります。
前半は日々の出来事の概観を見せながら、後半は子どもの目線で真相が明かされていきます。子どもなりに世の中を理解しようとしていると同時に、子どもだからこそ見えている世界があり、親でもわかっていないことがたくさん出てきます。また、他人に対しても大人は相手の本質を見ようとせず、わずかな情報と自分の経験によって、短絡的に相手を型に当てはめて見ていることを客観視できます。さまざまな歪みのある社会で翻弄される子ども達の姿を観ていると苦しくなるところがありつつ、子ども達の素直さと心のしなやかさに癒されます。
安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子といった演技派が揃うなか、2人の少年を演じた黒川想矢、柊木陽太の名演も見もの。ストーリー、演出、演技、三拍子揃った秀作です。観ている間は苦しくなりつつも、最後は清々しい気持ちにさせてくれます。ぜひ大人も子どもも観てください。

デート向き映画判定
映画『怪物』永山瑛太/黒川想矢/柊木陽太

人間の悪い面も良い面もあぶり出したストーリーなので、ゾッとしたりホッとしたりで観ている側の心も揺さぶられます。本作を観ていて、自分が知っている人は自分が思っているような人ではないのかもしれないと思った時に、パートナーについて疑念が湧くのか、安堵を得るのかは未知数です。本作をカップルで一緒に観て共有してほしい反面、どこかパートナーに対して引っかかるところがありながら交際をしている方は1人でじっくり観るほうが落ちついて観られるかもしれないですね。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『怪物』黒川想矢/柊木陽太

皆さんは、湊(黒川想矢)や依里(柊木陽太)に感情移入して観られるのではないでしょうか。大人は何でもわかったような態度で接してくるけれど、何もわかっていない時もあって、子どもだって大人に気を使っているんですよね。子ども達が普段もどかしく感じていることが本作には描かれていて、皆さんは大人とは違った観方をするかもしれません。親子で観たり、友達と観たりして、感想をぜひシェアしてください。

映画『怪物』安藤サクラ/永山瑛太/黒川想矢/柊木陽太/田中裕子

『怪物』
2023年6月2日より全国公開
東宝、ギャガ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

©2023「怪物」製作委員会

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

トーキョー女子映画部チャンネルpodcast ポッドキャスト【トーキョー女子映画部チャンネル】あの映画がおもしろいと思う本当の理由『嵐が丘』『カミング・ホーム』『俺たちのアナコンダ』

ネタバレあり、個人的にツボにハマったポイントを 気楽に話しているので、トークには期待せず(笑)、作品には期待してください。

映画『俺たちのアナコンダ』ジャック・ブラック/ポール・ラッド/スティーヴ・ザーン/タンディウェ・ニュートン/セルトン・メロ 俺たちのアナコンダ【レビュー】

愛しいほどにアホ全開のハッピーなコメディです。ジャック・ブラックとポール・ラッドが主演のコメディといえば…

【映画学ゼミ第7回】「そもそも感情ってどうやって湧いてくるの?感情の仕組み」参加者募集! 【映画学ゼミ第7回】「そもそも感情ってどうやって湧いてくるの?感情の仕組み」参加者募集!

感情はまだまだ謎が多く、本当に複雑で深い概念だからこそおもしろい!感情について少しでも知ることで、自分自身の情動コントロールにも少し役立つはずです。

映画『キング・オブ・キングス』 キング・オブ・キングス【レビュー】

チャールズ・ディケンズが、我が子のために書き下ろした“The Life of Our Lord(私たちの主の生涯)”は、没後64年を経た1934年まで出版が許されず、幻の傑作といわれていたようです…

映画『ハウス・オブ・ザ・デビル』 ハウス・オブ・ザ・デビル【レビュー】

本作は、『X エックス』『Pearl パール』『MaXXXine マキシーン』と、A24初のシリーズ化作品となる“Xシリーズ”で一気に注目を集めたタイ・ウェスト監督による2009年の作品です…

映画『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』ダニー・デフェラーリ/ディアナ・アグロン(ダイアナ・アグロン) ディアナ・アグロン【ギャラリー/出演作一覧】

1986年4月30日生まれ。アメリカ、ジョージア州サバンナ出身。

映画『90メートル』山時聡真/菅野美穂 90メートル【レビュー】

REVIEW優しさに溢れていて、素直に観て良かったと思える作品です。ヤングケアラーが主人公…

映画『空飛ぶペンギン』ジム・キャリー 未公開映画活性課サ行

未公開作品のなかから、当部が気になる作品、オススメしたい作品をご紹介。

映画『そして彼女たちは』バベット・ヴェルベーク/エルザ・ウーベン/ジャナイナ・アロワ・フォカン/リュシー・ラリュエル/サミア・イルミ そして彼女たちは【レビュー】

ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督とリュック・ダルデンヌ監督(以下、ダルデンヌ兄弟)が選んだ今回の主人公は、若き母親達です…

映画『全知的な読者の視点から』イ・ミンホ イ・ミンホ【ギャラリー/出演作一覧】

1987年6月22日生まれ。韓国出身。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

【映画学ゼミ第7回】「そもそも感情ってどうやって湧いてくるの?感情の仕組み」参加者募集! 【映画学ゼミ第7回】「そもそも感情ってどうやって湧いてくるの?感情の仕組み」参加者募集!

感情はまだまだ謎が多く、本当に複雑で深い概念だからこそおもしろい!感情について少しでも知ることで、自分自身の情動コントロールにも少し役立つはずです。

映画『国宝』吉沢亮 映画好きが選んだ2025邦画ベスト

今回は、正式部員の皆さんに投票していただいた2025年邦画ベストの結果を発表!2025年の邦画ベストで上位にランクインしたのはどの作品でしょう?

ショートドラマ『復讐同盟 —サレ妻と愛人はクズ旦那を制裁する—』 私ならこうする!『復讐同盟 —サレ妻と愛人はクズ旦那を制裁する—』を観た女子の本音

ショートドラマ『復讐同盟 —サレ妻と愛人はクズ旦那を制裁する—』をトーキョー女子映画部正式部員の皆さんに観ていただき、感想や「私ならこうする!」を聞いてみました。

学び・メンタルヘルス

  1. 【映画学ゼミ第7回】「そもそも感情ってどうやって湧いてくるの?感情の仕組み」参加者募集!
  2. 【映画学ゼミ第6回】「鑑賞者のローカス・オブ・コントロールと、映画鑑賞における着眼点・感想の関係」参加者募集!
  3. 【映画学ゼミ第5回】「登場人物にみる人間の非合理性」参加者募集!

REVIEW

  1. 映画『俺たちのアナコンダ』ジャック・ブラック/ポール・ラッド/スティーヴ・ザーン/タンディウェ・ニュートン/セルトン・メロ
  2. 映画『キング・オブ・キングス』
  3. 映画『ハウス・オブ・ザ・デビル』
  4. 映画『90メートル』山時聡真/菅野美穂
  5. 映画『そして彼女たちは』バベット・ヴェルベーク/エルザ・ウーベン/ジャナイナ・アロワ・フォカン/リュシー・ラリュエル/サミア・イルミ

PRESENT

  1. ドラマ『外道の歌 SEASON2』窪塚洋介/亀梨和也/南沙良
  2. 映画『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』イ・レ
  3. 映画『キング・オブ・キングス』
PAGE TOP