REVIEW

メイド・イン・バングラデシュ【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『メイド・イン・バングラデシュ』リキタ・ナンディニ・シム

本作は、10代の頃からバングラデシュの労働改善のために闘ってきたダリヤ・アクター・ドリの実話を元に作られた人間ドラマで、主人公のシムが労働組合を立ち上げるべく奮闘する姿を描いています。バングラデシュには大手アパレルブランドの工場が集まっており、多くの女性が低賃金で働いています。低賃金とはどのくらいかというのは劇中の中にも出てきて、彼女達がいかに搾取されているかがわかります。また、例えば1日に何枚Tシャツを作っているのかという話題でも、ミシンを使っている人の数に対する生産数の多さに驚かされると同時に、泊まり込みで残業して明け方に帰るように指示されたり、残業代を払ってもらえなかったり、国が違うとはいえ、どう考えても不法な労働環境であることが伝わってきます。
彼女達の光景を見ていると、これは何十年も前の話なのかと思えてきますが、スマートフォンを使っているので最近のことだとわかって、なお驚きます。また、宗教的な背景もあるとは思いますが、根強い男尊女卑があり、女性は不自由な生活を強いられています。ただ、会社は労働組合を立ち上げられると都合が悪いので、あらゆる手で阻止しようとします。一方、シムの同僚達も会社の圧力から失業を恐れて協力をためらったり、一筋縄ではいかない状況にハラハラさせられます。
監督、脚本、製作と務めたのは、バングラデシュ生まれのルバイヤット・ホセイン監督。公式サイトによると、彼女自身もバングラデシュの著名な女性の権利NGOで働いていたとのことで、その経験もドキュメンタリーのようなリアルな描写に繋がっているのではないでしょうか。

デート向き映画判定
映画『メイド・イン・バングラデシュ』リキタ・ナンディニ・シム

デートが盛り上がるようなストーリーではありませんが、シムの夫婦関係も物語の重要な鍵を握っています。これから結婚しようか考えているけれど、働くことに反対されている方、仕事を変えるように言われている方は、本作を一緒に観て、相手の反応を探ってみるのも良いかもしれません。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『メイド・イン・バングラデシュ』

全く同じではないとしても、日本もまだまだ男性社会で、働く女性が不利益を被っている状況は多々あります。この状況を変えていくには国が法律や政策でテコ入れする必要はもちろんありますが、働く人自身の意識を変えていく必要があります。皆さんが大きくなった時にもっと働きやすい環境にするにはどうすれば良いか、社会見学のつもりで観てみてはいかがでしょうか。

映画『メイド・イン・バングラデシュ』リキタ・ナンディニ・シム

『メイド・イン・バングラデシュ』
2022年4月16日より全国順次公開
パンドラ
公式サイト

© 2019 – LES FILMS DE L’APRES MIDI – KHONA TALKIES– BEOFILM – MIDAS FILMES

TEXT by Myson

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル ぼくらの居場所【レビュー】

カナダのトロント東部に位置するスカボローを舞台に、さまざまな背景を抱えた3組の親子の姿を…

映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師【レビュー】

第二次世界大戦下のドイツに実在した牧師、ディートリヒ・ボンヘッファーは、ナチスに支配された教会やユダヤ人達を救おうと奮闘…

映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』SUMIRE 佐藤菫【ギャラリー/出演作一覧】

1995年7月4日生まれ。東京都出身。

映画『プレデター:バッドランド』エル・ファニング プレデター:バッドランド【レビュー】

おもしろい!いろいろユニーク!“プレデター”シリーズは…

映画『モンテ・クリスト伯』ピエール・ニネ モンテ・クリスト伯【レビュー】

アレクサンドル・デュマ・ペールの傑作小説「巌窟王」を映画化した本作は…

映画『秒速5センチメートル』松村北斗 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年10月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年10月】のアクセスランキングを発表!

映画『旅と日々』シム · ウンギョン/堤真一 旅と日々【レビュー】

つげ義春の「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」を原作に、『ケイコ 目を澄ませて』『夜明けのすべて』などを手がけた三宅唱監督が映画化…

映画『風のマジム』肥後克広 肥後克広【ギャラリー/出演作一覧】

1963年3月15日生まれ。沖縄県出身。

【20周年記念ボイスシネマ声優口演ライブ2025】羽佐間道夫、山寺宏一ほか 人気声優達が真剣勝負!会場が終始笑いに包まれた【20周年記念ボイスシネマ声優口演ライブ2025】本番リポート

発起人である羽佐間道夫のもと、山寺宏一、林原めぐみほか錚々たる人気声優達がズラリと顔を揃えたライブは今年で20周年を迎えました…

映画『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。』ホン・サビン/シン・ジュヒョブ あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。【レビュー】

物語の始まりは、1995年の韓国、テグ。学校でいじめられていたドンジュン…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  2. 映画『おーい、応為』長澤まさみ
  3. AXA生命保険お金のセミナー20251106ver3

REVIEW

  1. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  2. 映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー
  3. 映画『プレデター:バッドランド』エル・ファニング
  4. 映画『モンテ・クリスト伯』ピエール・ニネ
  5. 映画『秒速5センチメートル』松村北斗

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP