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ミツバチと私【レビュー】

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映画『ミツバチと私』ソフィア・オテロ

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本作は、本名アイトール、通称ココと呼ばれる8歳の“少年”が、自分のアイデンティティを探りながら成長していく物語です。公式サイトによると、ココという愛称は、フランスとスペインをまたぐバスク地方で“坊や(坊主)”を意味する言葉だそうです。ココは、“ココ”と呼ばれることや、本名のアイトールと呼ばれることを嫌がっています。その真相は物語が進行するにつれて、徐々に明かされていきます。
ココは夏休みに母ときょうだいと共に、母の実家で過ごします。ココをよく知らない人達は、髪の長いココを女の子だと思い込んでいる一方、男の子だとわかっている人達は、ココの容姿や言動に難色を示します。ココ自身が自分は男の子なのか女の子なのかがはっきりとわからずに混乱するなか、ココは叔母が営む養蜂場でミツバチの世話をするうちに、自分の性と向き合います。
人間と同じようにミツバチにも多様性があって、そんなミツバチの生態を知ることによって、主人公が自分のアイデンティティに近づいていくという設定が秀逸です。そして、葛藤するココの心の動きがとても繊細に描かれていて、自分自身が明確に性別を自覚できないもどかしさを描いている点も印象的です。また、そんなココを見守る母アネが、親との関係を通してアイデンティティに悩んでいる姿もあり、性別だけではなく、性役割や、女性としての生き方についても、さまざまな視点から考えさせられるストーリーとなっています。
本作の主人公を演じたソフィア・オテロは、オーディションで約500人の中から選ばれ、撮影当時9歳、映画初出演にして、第73回ベルリン映画祭の最優秀主演俳優賞を受賞しました。劇中では、ココはまだ子どもだから戸惑っているだけといって片付けようとする大人の言葉が出てきますが、このココの複雑な心境を見事に演じたソフィア・オテロが撮影当時9歳だったことを考えると、8歳、9歳でも、感覚として充分に理解できていることが証明されているように思います。本作を観ると、性別はもちろん、自分は何者であるか、何者であろうとするかを決めることは生きていく上で重要だと改めて感じます。

デート向き映画判定

映画『ミツバチと私』パトリシア・ロペス・アルナイス

ココと同じような悩みを抱えたまま、手探りで恋愛をしてみているという方もいるかもしれません。特に若いうちは、恋愛の“好き”なのか、人間として“好き”なのか判別がつかないこともあると思います。何となく彷徨っている感覚がある方は、デートで観るよりも、1人で観てじっくり考える機会にするほうが良いかもしれません。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『ミツバチと私』ソフィア・オテロ/アネ・ガバライン

ココと同じような悩みを抱えている友達が身近にいたり、自分自身が悩んでいたら、本作から少しヒントをもらえるかもしれません。子ども同士のやり取りには、残酷な面もあれば、救われる部分もあります。すぐに味方を見つけるのは難しいかもしれませんが、身近に味方が見つからないうちは、本作を含め、同じテーマの作品を観て、自分の気持ちと照らし合わせてみてはどうでしょうか。

映画『ミツバチと私』ソフィア・オテロ

『ミツバチと私』
2024年1月5日より全国順次公開
アンプラグド
公式サイト

© 2023 GARIZA FILMS INICIA FILMS SIRIMIRI FILMS ESPECIES DE ABEJAS AIE

TEXT by Myson

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