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落下の解剖学【レビュー】

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映画『落下の解剖学』ザンドラ・ヒュラー/ミロ・マシャド・グラネール

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雪山の山荘で暮らす家族に、ある日突然悲劇が起きます。目が不自由な息子ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)は、犬と散歩に出かけて戻ると、家の外に父が倒れているのに気付きます。急いで母サンドラ(ザンドラ・ヒュラー)を呼びますが、既に息をしておらず、事故、自殺、他殺のすべての可能性が残されます。真相を解明しようにも、残されているのは状況証拠と関係者の記憶だけ。そして、サンドラは殺人の容疑をかけられ、裁判ではダニエルも証言を求められます。
冒頭のシーンから既に何かが起き始めていますが、何も知らない私達には、日常の一コマに見えます。でも、捜査、裁判が進むにつれ、一つひとつの出来事が、徐々に裁判の証拠としてあげられ、あらゆる憶測が飛び交います。それを観ている私達も否応なく憶測をしてしまっていることに気付かされます。父と母が対立関係に置かれてしまった裁判で、どちらかの味方、敵というわけでもなく、両親の真実について知ろうとし、自分ができることをしようとする息子ダニエルの姿がとても印象的です。
直接関わっていないとしても、私達も社会で起きているさまざまな出来事、問題に対して、何が正しくて、何が間違えているのかわからずに戸惑うことがあります。劇中で、「心を決める」という表現があり、その意味を深く考えさせられました。そして、本作を観ていると、真実はつかみどころのないもので、良くも悪くも目の前の出来事をどう受け取るかでしかなく、人はお互いの想像の中で生きているに過ぎないと思えてきます。さらに、人間の想像の逞しさは使い方によって、凶器にもなりうるし、自分や大切な人を守る盾にもなると実感します。

デート向き映画判定

映画『落下の解剖学』ザンドラ・ヒュラー/スワン・アルロー

キャラクター達の心の中ではさまざまな感情がうごめいていて、見応えのある作品です。ただ、見た目には淡々と物語が進んでいき、派手な展開はなく、2時間半という長めの尺なので、映画を観慣れていない方や、ド派手なアクション映画などを好む方を誘うには不向きかもしれません。相手が普段よく観る作品や好きなジャンルを聞いた上で一緒に観るか、1人でじっくり観るか決めると良さそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『落下の解剖学』/ミロ・マシャド・グラネール

父親が転落死し、母親が殺人の容疑をかけられるというストーリーで、子どもとしては複雑な心境になるような両親の別の顔も描かれています。内容的に考えて、中学生くらいになってから観るほうが良いのではないでしょうか。息子ダニエルは、母親と父親の人となりや普段の暮らしぶりを偏見なくありのままに見ようとしています。皆さんもダニエルの視点で大人を観察してみてください。

映画『落下の解剖学』ザンドラ・ヒュラー/ミロ・マシャド・グラネール

『落下の解剖学』
2024年2月23日より全国公開
ギャガ
公式サイト

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©2023 L.F.P. – Les Films Pelléas / Les Films de Pierre / France 2 Cinéma / Auvergne‐Rhône‐Alpes Cinéma

TEXT by Myson

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情報は2024年2月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

第96回アカデミー賞®ノミネート:作品賞、監督賞、主演女優賞(ザンドラ・ヒューラー ※サンドラと表記する場合もあり)、★脚本賞、編集賞、計5部門
※(★)は受賞した賞です。

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