REVIEW
同じ佐藤という苗字のサチ(岸井ゆきの)とタモツ(宮沢氷魚)は、セリフにも出てくるように「結婚しても離婚しても佐藤」です。婚姻、離婚を機にどちらかのみ姓が変わるという状況がなく、結婚の際も離婚の際も同等の立場であるというこの設定は、本作を観終えると、重要な要素だと感じます。

大学時代に知り合い、交際を始めたサチとタモツは、やがて同棲を始めます。司法試験に挑むタモツは苦戦し、サチは一緒に勉強することでタモツを支えることに。でも、次の試験で合格したのはサチだけでした。この辺りから、2人の関係は複雑化していきます。

本作の主要なテーマは、観る方によって異なるでしょう。その中で、テーマの1つに性役割があるとして、本作では女性が経済的に家計を支え、男性が主に家事や子育てを担う場合に、当事者や周囲の人達はその状況にどう反応するのかをシミュレーションしています。そして、対比として、外でバリバリ働いてきた老年の男性が、妻に離婚を突きつけられるというよくある光景も描かれています。

2人の佐藤さんの態度を目にして、時に一方に同情し、時にもう一方に同情するというように中立した見方もできます。ただし、どちらかが折れるべきと考える時に、自ずと私達観る側の価値観が出てくるように思います。また、サチの態度に非があるように見えた時、これまでの時代では男性が同じような態度をとっても気に留められなかったのではないか、と感じるシーンも複数出てきます。だから、本人達の至らなさだけではなく、無意識に社会全体に根付いている性役割に関する固定概念が、夫婦関係を拗らせているようにも感じます。

岸井ゆきの、宮沢氷魚の生々しい演技も見ものです。あんなに幸福度溢れる2人でも、予想しない未来がくるかもしれない、そういう怖さを示すと同時に、これまでとは異なる選択があることも気づかせてくれるストーリーです。ハッピーエンドととるか、バッドエンドととるかという違いにも、観る方の恋愛観、結婚観、人生観が表れるのではないでしょうか。
デート向き映画判定

かなり現実的な内容なので、カップルで観ると各々がどんな心境になるのか読めません(苦笑)。良い反応としては結婚に対する覚悟が強まりそうな一方で、そもそも結婚に自信がなく消極的な方はネガティブな予想に確信を与えてしまう可能性があります。いずれにしてもお互いの覚悟を知りたい、覚悟を固めたいカップルは敢えて一緒に観るのもアリでしょう。
キッズ&ティーン向き映画判定

恋愛に対する理想が強い方にとっては、恋愛の現実的な面を知る機会になるでしょう。でも、結婚は良いこと、離婚が悪いことという単純な話でもない点に注目して欲しいです。どんな状態になっても家族が平穏に暮らすために、これまではあまり選択されてこなかった方法にも目が向くと、将来に対して頭でっかちにならずに済むかもしれません。

『佐藤さんと佐藤さん』
2025年11月28日より全国公開
ポニーキャニオン
公式サイト
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©2025「佐藤さんと佐藤さん」製作委員会
TEXT by Myson
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情報は2025年11月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。





























