REVIEW

SHADOW/影武者

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『SHADOW/影武者』ダン・チャオ/スン・リー

太極図に象徴される陰と陽が、ストーリー、キャラクター設定、人物相関図、アクションと、あらゆるところに投影され、太極図そのものもデザインとして、あらゆるシーンに印象的に使われています。そういった演出に高い芸術性が感じられると同時に、エンタテインメントとしての魅力はもちろん、哲学的なストーリーにも引き込まれます。
影武者として生きることを受け入れた男、影武者に自分の運命を託した男の物語が軸となっていますが、物語のトーンが前半、中盤、ラストと大きく変わっていく点が見どころで、特にラストは一件落着したと思ったら、もう一段階オチがあります。それこそがこの物語が本当に語りたいことだと思いますが、どんなに立派な偉業を成し遂げても、人間が陥ってしまう罠があって、それは他人によるものではなく、自分でそこに堕ちていくんだという教訓のようにも受け取れます。それは、何事にも陰と陽という2つの面があるということの象徴だと考えると、本当に深い話です。そして、都督と影武者の一人二役を演じたダン・チャオの演技も素晴らしい。アクションで使われる武器や、その発想の源もとてもユニークで、中国の個性が光る作品になっています。チャン・イーモウ監督作として抱く期待を裏切りませんよ。

デート向き映画判定
映画『SHADOW/影武者』ダン・チャオ/スン・リー

本作で描かれる奥ゆかしくロマンチックな悲恋は、デートのムードを盛り上げるでしょう。設定は自分達の日常に置きかえるようなものではないので、気まずいこともありません。人間ドラマ、アクション、ラブストーリーと、それぞれの要素がバランス良くある作品なので、男女問わず楽しめるはず。芸術的な描写も多いので、派手なアクションが苦手という人でも誘ってオーケーでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『SHADOW/影武者』ダン・チャオ

PG-12なので12歳未満の人は保護者と一緒に観てください。舞うように戦うアクションシーンはとても美しく、武器もユニークでカッコ良いです。太極図が象徴する陰と陽の考え方が、人間理解や、戦略などいろいろなところで活かされている点にも注目すると、万物の成り立ちみたいなところにも繋がりを感じて、おもしろみが増すでしょう。でも難しい観方をしなくても、アクションを楽しむ、ラブストーリーを楽しむという観方でも良いと思います。

映画『SHADOW/影武者』ダン・チャオ/スン・リー/チェン・カイ

『SHADOW/影武者』
2019年9月6日より全国公開
PG-12
ショウゲート
公式サイト

©2018 Perfect Village Entertainment HK Limited Le Vision Pictures(Beijing)Co.,LTD Shanghai Tencent Pictures Culture Media Company Limited ALL RIGHTS RESERVED

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『レイブンズ』瀧内公美さんインタビュー 『レイブンズ』瀧内公美さんインタビュー

写真家、深瀬昌久の78年に渡る波瀾万丈の人生を、実話とフィクションを織り交ぜて描いた映画『レイブンズ』。今回は本作で、深瀬昌久の最愛の妻であり被写体でもあった洋子役を演じた瀧内公美さんにインタビューさせていただきました。

映画『ミッキー17』ロバート・パティンソン ミッキー17【レビュー】

『パラサイト 半地下の家族』で第92回アカデミー賞(作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞)を受賞したポン・ジュノ監督(脚本、製作を兼務)が、この度制作したハリウッド映画は…

映画『ANORA アノーラ』マイキー・マディソン マイキー・マディソン【ギャラリー/出演作一覧】

1999年3月25日生まれ。アメリカ出身。

映画『BAUS 映画から船出した映画館』染谷将太 BAUS 映画から船出した映画館【レビュー】

2014年、東京都、吉祥寺の映画館“バウスシアター”が閉館となりました。本作は、この映画館を親の代から運営してきた本田拓夫著…

映画『白雪姫』レイチェル・ゼグラー 白雪姫【レビュー】

1937年に製作されたディズニーの『白雪姫』は、世界初のカラー長編アニメーションであり、ウォルト・ディズニー・スタジオの原点とされています…

映画『ニンジャバットマン対ヤクザリーグ』 ニンジャバットマン対ヤクザリーグ【レビュー】

バットマン・ファミリーが戦国時代の歴史改変を食い止めた『ニンジャバットマン』の続編…

【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性 自分を知ることからすべてが始まる【映画でSEL】

SEL(社会性と情動の学習)で伸ばそうとする社会的能力の一つに「自己への気づき」があります。他者を知るにも、共感するにも、自己をコントロールするにも、そもそも自分のことを全く理解していなければ始まりません。

映画『悪い夏』北村匠海 悪い夏【レビュー】

REVIEW染井為人著の原作小説は、「クズとワルしか出てこない」と話題を呼び、第37回横溝…

映画『女神降臨 Before 高校デビュー編』Kōki,/渡邊圭祐/綱啓永 女神降臨 Before 高校デビュー編【レビュー】

本作は、縦スクロール形式のデジタルコミック“webtoon”で人気を博したyaongyi(ヤオンイ)作の同名コミックを原作としています…

映画『教皇選挙』レイフ・ファインズ 教皇選挙【レビュー】

圧倒されっぱなしの120分でした。教皇に“ふさわしい”人間の境界線をテーマに、神に仕える聖職者達の言動、ひいては人格を通して…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

学び・メンタルヘルス

  1. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  2. 映画『風たちの学校』
  3. 【映画でSEL】海辺の朝日に向かって手を広げる女性の後ろ姿

REVIEW

  1. 映画『ミッキー17』ロバート・パティンソン
  2. 映画『BAUS 映画から船出した映画館』染谷将太
  3. 映画『白雪姫』レイチェル・ゼグラー
  4. 映画『ニンジャバットマン対ヤクザリーグ』
  5. 映画『悪い夏』北村匠海

PRESENT

  1. 映画『ガール・ウィズ・ニードル』ヴィク・カーメン
  2. 映画『私の親愛なるフーバオ』
  3. 映画『デュオ 1/2のピアニスト』カミーユ・ラザ/メラニー・ロベール
PAGE TOP