REVIEW
ペドロ・アルモドバル監督は、過激で刺激的な作品も撮る一方で、母をテーマにした作品も多く撮ってきました。本作は安楽死をテーマとしながら、母というテーマも含んでいるように思います。
病を患い、一人娘とも疎遠となっているマーサ(ティルダ・スウィントン)は、安楽死を望んでいます。そんなマーサに、最期の数日間を共に過ごして欲しいと頼まれたのは、親友のイングリット(ジュリアン・ムーア)。2人はマーサが用意した自然に囲まれた家で最期の時を過ごします。

マーサがいつ“旅立つか”はイングリットには知らされておらず、その時の合図の方法だけ聞かされているので、観客の多くは、イングリットの気が気ではない状態を体感することになるでしょう。また、マーサとイングリットは、一緒に過ごす時間もあれば、それぞれに過ごす時間もあり、静と動という対照的な存在として映ります。マーサの用意した家の間取りや2人の部屋の位置も比喩表現に思えます。本作は比喩の解釈をしながら観るのもオススメです。
ここからはあくまで私個人の解釈です。ネタバレしないように書いていますが、鑑賞後に読むことをオススメします。

最期の時を過ごす家を人間の身体と捉えてみると、マーサは上の部屋にいるので脳(感情や認知)、イングリットは下にいるので体という風にも見えてきます。2人を心の生命力と体の生命力と考えてみると、人間は体の生命力よりも心の生命力が尽きてしまうと、生き続けるのが一層難しいということなのかもしれません。
男女の恋愛関係についての話題も生命力のお話に思えます。若い頃のエネルギッシュな関係と大人になってからの落ちついた関係に置きかえても、マーサとイングリットは対称的な存在と捉えられるセリフがあります。

総じて、『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』というタイトルや、結末からは、若さと老い、生と死が隣りあわせにいるという意味も感じられます。そもそもアルモドバル監督が比喩として描いたかどうかは不明ながら、自由に解釈を楽しんでみるのもおもしろいので、皆さんもお試しあれ。
デート向き映画判定

安楽死がテーマなので、初デートや気楽に過ごしたい日のデートには不向きでしょう。恋愛が本筋ではないものの、過去と今の恋愛が交差する部分があるので、身内同士でいろいろあった過去を持つカップルは、余計な記憶が蘇って複雑な気持ちになるシーンがあるかもしれません(苦笑)。
キッズ&ティーン向き映画判定

死生観を問う物語なので、皆さんの世代にはまだピンとこないのではないでしょうか。ただし、親友同士のやり取りは年代を問わず、自分に重ねて観られる部分もあると思います。内容からしてせめて中学生くらいになってから観たほうがある程度理解できるとして、友達に難しいことを頼まれた時に自分ならどうするか考えながら観てみてください。

『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』
2025年1月31日より全国公開
ワーナー ブラザース映画
公式サイト
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©El Deseo. Photo by Iglesias Más.
TEXT by Myson
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