REVIEW

ザ・ルーム・ネクスト・ドア【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』ティルダ・スウィントン/ジュリアン・ムーア

REVIEW

ペドロ・アルモドバル監督は、過激で刺激的な作品も撮る一方で、母をテーマにした作品も多く撮ってきました。本作は安楽死をテーマとしながら、母というテーマも含んでいるように思います。
病を患い、一人娘とも疎遠となっているマーサ(ティルダ・スウィントン)は、安楽死を望んでいます。そんなマーサに、最期の数日間を共に過ごして欲しいと頼まれたのは、親友のイングリット(ジュリアン・ムーア)。2人はマーサが用意した自然に囲まれた家で最期の時を過ごします。

映画『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』ティルダ・スウィントン

マーサがいつ“旅立つか”はイングリットには知らされておらず、その時の合図の方法だけ聞かされているので、観客の多くは、イングリットの気が気ではない状態を体感することになるでしょう。また、マーサとイングリットは、一緒に過ごす時間もあれば、それぞれに過ごす時間もあり、静と動という対照的な存在として映ります。マーサの用意した家の間取りや2人の部屋の位置も比喩表現に思えます。本作は比喩の解釈をしながら観るのもオススメです。

ここからはあくまで私個人の解釈です。ネタバレしないように書いていますが、鑑賞後に読むことをオススメします。

映画『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』ティルダ・スウィントン/ジュリアン・ムーア

最期の時を過ごす家を人間の身体と捉えてみると、マーサは上の部屋にいるので脳(感情や認知)、イングリットは下にいるので体という風にも見えてきます。2人を心の生命力と体の生命力と考えてみると、人間は体の生命力よりも心の生命力が尽きてしまうと、生き続けるのが一層難しいということなのかもしれません。
男女の恋愛関係についての話題も生命力のお話に思えます。若い頃のエネルギッシュな関係と大人になってからの落ちついた関係に置きかえても、マーサとイングリットは対称的な存在と捉えられるセリフがあります。

映画『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』ジュリアン・ムーア

総じて、『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』というタイトルや、結末からは、若さと老い、生と死が隣りあわせにいるという意味も感じられます。そもそもアルモドバル監督が比喩として描いたかどうかは不明ながら、自由に解釈を楽しんでみるのもおもしろいので、皆さんもお試しあれ。

デート向き映画判定

映画『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』ティルダ・スウィントン/ジュリアン・ムーア

安楽死がテーマなので、初デートや気楽に過ごしたい日のデートには不向きでしょう。恋愛が本筋ではないものの、過去と今の恋愛が交差する部分があるので、身内同士でいろいろあった過去を持つカップルは、余計な記憶が蘇って複雑な気持ちになるシーンがあるかもしれません(苦笑)。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』ティルダ・スウィントン/ジュリアン・ムーア

死生観を問う物語なので、皆さんの世代にはまだピンとこないのではないでしょうか。ただし、親友同士のやり取りは年代を問わず、自分に重ねて観られる部分もあると思います。内容からしてせめて中学生くらいになってから観たほうがある程度理解できるとして、友達に難しいことを頼まれた時に自分ならどうするか考えながら観てみてください。

映画『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』ティルダ・スウィントン/ジュリアン・ムーア

『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』
2025年1月31日より全国公開
ワーナー ブラザース映画
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

©2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
©El Deseo. Photo by Iglesias Más.

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年1月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『悪い夏』北村匠海 『悪い夏』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『悪い夏』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『ゆきてかへらぬ』広瀬すず/木戸大聖/岡田将生 ゆきてかへらぬ【レビュー】

鈴木清順監督の大正浪漫三部作といわれる『ツィゴイネルワイゼン』『陽炎座』『夢二』や、相米慎二監督の『セーラー服と機関銃』などを手掛けた名脚本家、田中陽造のオリジナル脚本『ゆきてかへらぬ』は…

映画『奇麗な、悪』瀧内公美 奇麗な、悪【レビュー】

中村文則による原作「火」を映画化した本作は…

映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』アンソニー・マッキー キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド【レビュー】

ファルコンことサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)は、元祖キャプテン・アメリカのスティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)から盾を託され…

映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』 ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-【レビュー】

2017年9月に始動した音楽原作キャラクターラッププロジェクト“ヒプノシスマイク”は…

映画『ファーストキス 1ST KISS』松たか子 松たか子【ギャラリー/出演作一覧】

1977年6月10日生まれ。東京都出身。

映画『ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻』アリシア・ヴィキャンデル/ジュード・ロウ ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻【レビュー】

REVIEW政治的手腕を発揮しながらも、暴君としてイギリス史に悪名を刻んだヘンリー8世には…

映画『聖なるイチジクの種』ソヘイラ・ゴレスターニ/マフサ・ロスタミ/セターレ・マレキ 聖なるイチジクの種【レビュー】

REVIEWイランでは2022年に、ある若い女性がヒジャブ(髪の毛を覆う布)を付けておらず…

映画『コメント部隊』ソン・ソック コメント部隊【レビュー】

情報社会になった現代、大きな組織による世論操作が行われているのではないかと…

映画『リアル・ペイン〜心の旅〜』キーラン・カルキン キーラン・カルキン【ギャラリー/出演作一覧】

1982年9月30日生まれ。アメリカ出身。

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』トム・ホランド/ゼンデイヤ 映画好きが選ぶマーベル映画ランキング

2025年もマーベルシリーズ最新作が公開されます。そこでこれまでのマーベルシリーズも合わせて盛り上げたいということで、ランキングを実施しました。

映画『ベルヴィル・ランデブー』 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.3

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダーほか トーキョー女子映画部が選ぶ 2024年ベスト10&イイ俳優MVP

毎年恒例のこの企画では、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

REVIEW

  1. 映画『ゆきてかへらぬ』広瀬すず/木戸大聖/岡田将生
  2. 映画『奇麗な、悪』瀧内公美
  3. 映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』アンソニー・マッキー
  4. 映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』
  5. 映画『ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻』アリシア・ヴィキャンデル/ジュード・ロウ

PRESENT

  1. 映画『悪い夏』北村匠海
  2. 映画『ロングレッグス』マイカ・モンロー
  3. 映画『TATAMI』アリエンヌ・マンディ
PAGE TOP