REVIEW

ドリーム・シナリオ【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ドリーム・シナリオ』ニコラス・ケイジ

REVIEW

ニコラス・ケイジ主演、『ミッドサマー』のアリ・アスターとA24が製作、さらに監督と脚本は『シック・オブ・マイセルフ』のクリストファー・ボルグリと聞けば、観ないわけにはいきません。本作は、多くの人が寝ている時に見る夢を巡って、平凡な一人の中年男性の人生が翻弄されるストーリーです。この説明だけではキョトンとしてしまいますよね。そう、本作はその設定からして奇想天外なんです。
大学教授のポール・マシューズ(ニコラス・ケイジ)は、妻と2人の娘とともに平穏に暮らしています。でも、ある時から、娘や知人だけではなく、見知らぬ人まで、夢にポールが出てきたという人が続出。不思議な現象は瞬く間にニュースとなり、一躍有名人になったポールの人生は好転し始めたかのように見えながら、皆が見る夢は悪夢へと変わっていき、ポールの日常も悪転していきます。

映画『ドリーム・シナリオ』ニコラス・ケイジ

まず、やっぱりニコラス・ケイジが上手い!主人公の人の良さとトホホな感じが絶妙であると同時に、夢に出てきていながら何もしない不気味さも半端ありません。ポールは私達の身近にもいる人物の象徴です。本作は、とにかくニコラス・ケイジの演技を楽しむというだけでも充分におもしろいといえつつ、考察をするおもしろさもあります。以下に私独自の解釈を述べます。

ここからはあくまで私個人の解釈でネタバレを含みますので、鑑賞後にお読みください。

映画『ドリーム・シナリオ』ニコラス・ケイジ

ポールは夢の中で最初は何もしません。ただの傍観者です。夢を見ている人は、夢の中で何らかのトラブルに巻き込まれていて、ポールはそれを傍観しています。ところが、何がきっかけかわからず、夢の中でポールが加害者に転じます。これは、現代の情報社会に置きかえて考えると、よくある光景に思えます。
ネット上では困った人がいても、皆傍観しています。でも、夢の中の人でしかなかったポールは有名になることで、皆にとって実態が伴ってきます。そうなると、傍観者でいられなくなり、勝手にさまざまな憶測をされ、実態があるだけに恐怖感をもたらしてしまうのでしょう。実の娘にとっては父ポールはもともと実態のある身近な存在で直接コミュニケーションが取れます。一方、知人であっても彼のことをよく知らず、ちゃんとコミュニケーションを取らない人にとっては、誤解や憶測だけが一人歩きしてしまいます。

映画『ドリーム・シナリオ』ニコラス・ケイジ

現実世界でもポールは何もしていませんが、実態を伴った存在として認識されるようになったことで、彼が夢の中でやったことも現実のように捉えられます。私達の現実世界でも、ネット上の世界と現実の世界が密接に関わっています。そして、さまざまな情報が飛び交い、真偽も曖昧になってきました。もう、真偽を追求するよりも、個々に都合の良い内容を信じるようになったともいえます。
後半に出てくる“新しいビジネス”も、判断力を失ったネットユーザーへのアプローチを比喩しているように見えます。だから、ポールに起きていることは、私達にも起こり得ます。本作で描かれる悪夢は、ポールにとっての悪夢であり、私達にとっての悪夢といえます。現実世界で何もしていなくても、何が起こるかわからない。そんな時代に突入したことを実感させられる作品です。

デート向き映画判定

映画『ドリーム・シナリオ』ニコラス・ケイジ

何もしていないのにこんなことになったら、本当に最悪です。パートナーがこういう状況に陥った時にどう対処するのか、シミュレーションできる部分もあるので、一緒に観るのもアリでしょう。考察するおもしろさがあるので、鑑賞後にいろいろ話したいことが出てくると思います。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『ドリーム・シナリオ』ニコラス・ケイジ/ジェシカ・クレメント

怖いといっても、スプラッターのような怖さではなく、心理的な怖さです。本作で起こる不思議な現象を比喩として捉えると、見え方が変わり、自分達の身近にある問題とわかるでしょう。ある出来事で一気に有名人になり、そして一瞬にして状況が変わってしまう様は、情報社会の怖さを知るきっかけになりそうです。

映画『ドリーム・シナリオ』ニコラス・ケイジ

『ドリーム・シナリオ』
2024年11月22日より全国公開
クロックワークス
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

© 2023 PAULTERGEIST PICTURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年11月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮 ブルーボーイ事件【レビュー】

高度成長期にあった1965年の東京では、街の浄化のため、警察はセックスワーカー達を厳しく取り締まっていました。ただ、セックスワーカーの中には性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けて女性的な体をした通称ブルーボーイが…

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 君の顔では泣けない【レビュー】

高校1年生の夏、坂平陸(武市尚士)と水村まなみ(西川愛莉)はプールに一緒に落ちたことで体が入れ替わってしまいます。2人はすぐに元に戻ることができず15年を過ごし…

映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト スプリングスティーン 孤独のハイウェイ

物語の舞台は1982年。ブルース・スプリングスティーン(ジェレミー・アレン・ホワイト)は、名声を手に入れながらも、葛藤を抱えて…

映画『2つ目の窓』松田美由紀 松田美由紀【ギャラリー/出演作一覧】

1961年10月6日生まれ。東京都出身。

「第38回東京国際映画祭」クロージングセレモニー:受賞者 東京グランプリは『パレスチナ36』!第38回東京国際映画祭ハイライト

2025年10月27日(月)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕したアジア最大級の映画の祭典である第38回東京国際映画祭が、11月5日(水)に閉幕。今年も個性豊かな作品が多数出品され、さまざまなイベントが実施されました。以下に、第38回東京国際映画祭ハイライトをお届けします。

映画『平場の月』堺雅人/井川遥 平場の月【レビュー】

朝倉かすみ著の同名小説を実写化した本作は、『ハナミズキ』『花束みたいな恋をした』(2021年)などを手がけた土井裕泰が監督を務めて…

映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル ぼくらの居場所【レビュー】

カナダのトロント東部に位置するスカボローを舞台に、さまざまな背景を抱えた3組の親子の姿を…

映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』ヨナス・ダスラー ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師【レビュー】

第二次世界大戦下のドイツに実在した牧師、ディートリヒ・ボンヘッファーは、ナチスに支配された教会やユダヤ人達を救おうと奮闘…

映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』SUMIRE 佐藤菫【ギャラリー/出演作一覧】

1995年7月4日生まれ。東京都出身。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  2. 映画『おーい、応為』長澤まさみ
  3. AXA生命保険お金のセミナー20251106ver3

REVIEW

  1. 映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮
  2. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人
  3. 映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト
  4. 映画『平場の月』堺雅人/井川遥
  5. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP