REVIEW

旅のおわり世界のはじまり

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『旅のおわり世界のはじまり』前田敦子/加瀬亮/染谷将太/柄本時生

自分で何がやりたいのかわからなくなっている主人公が、現状にしっくりこず「私の居場所はここではない」と何となく感じていながらも、自分なりに努力している姿にまず共感。彼女が努力もせずに、現状を不服に思っているなら、「しっかりやれ!」と言いたくなると思いますが、彼女は自分ができることは一生懸命やっているんですよね。だからこそ、「それなのになぜ?」と葛藤する気持ちも理解できます。将来の夢にそれなりに近いと客観的には思える位置にいるのに、本人がそう思えていないというところも印象的で、その原因は何なのかというのが、ウズベキスタンという日本と文化が全く違う、勝手がよくわからない国での彼女の行動に表れています。彼女はなるべく現地の人に絡まずに過ごそうとしていて、ただ恐れているようにも見えます。それは彼女自身が周囲から耳をふさいでしまっている状態、心を閉じている状態を投影していて、ウズベキスタンでのあらゆる経験を経て、彼女がどう変化していくのかが、本作の見どころとなっています。主人公が一人で町に繰り出すシーンがいくつもあり、あの警戒心バリバリな感じは一人旅をしたことがある人には身に覚えがあるはずで、スリリングだからこその旅の醍醐味も描かれている点で、臨場感も抜群です。前田敦子の演技が素晴らしく、歌唱力を発揮する場面もあって、すっかり良い女優さんになったなあと実感できるはず。「自分の居場所がない」「自分の能力を発揮できる場所がない」と自分で決めつけて行き詰まっている人は、自分が本当は何を失ってしまったのかを見つめ直す意味で、ぜひ観て欲しいと思います。

デート向き映画判定
映画『旅のおわり世界のはじまり』前田敦子/加瀬亮

一人の女性が世界と、周囲と、自分と向き合うストーリーなので、ロマンチックなムードにはならないと思いますが、男女問わず共感できる内容なので、デートで観るのもアリだと思います。好きな人がやりたいことがあって諦めてはいないけれど、宙ぶらりんになっている状態で悩んでいたら、ぜひ誘ってあげてください。あなた自身がそういう状態の場合も、好きな人と観に行って、自分の本当の気持ちを打ち明けると、何か突破口が見えてくるかも知れません。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『旅のおわり世界のはじまり』前田敦子

馴染みの薄い国に行くことで、思わぬ事態に遭遇し、それが開眼するきっかけとなる旅の醍醐味を描いた物語です。旅そのものでこういう体験をしたいと思った人は、ぜひ旅に出てみて欲しいと思いますが、本作は旅という表現を使って、新しい世界、知らない世界に飛び込む人がどんな風になるのかを描いていて、恐れずに受け入れて、そこでやれることをやるべきだというメッセージを感じさせます。自分が思っている範囲だけで努力をしているつもりになっていても、頭打ちになることがあります。もっと周囲に耳を傾け、心を開くことで前進できるかも知れないという勇気をもらえるストーリーなので、悩める若者達にこそ観て欲しいです。

映画『旅のおわり世界のはじまり』前田敦子

『旅のおわり世界のはじまり』
2019年6月14日より全国公開
東京テアトル
公式サイト

©2019「旅のおわり世界のはじまり」製作委員会/UZBEKKINO

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『AFRAID アフレイド』ジョン・チョウ AFRAID アフレイド【レビュー】

『M3GAN/ミーガン』を手掛けたブラムハウスのチームが本作でも進化し過ぎたAIの脅威を描いています…

映画『楓』北島岬 北島岬【ギャラリー/出演作一覧】

2007年8月6日生まれ。千葉県出身。

映画『殺し屋のプロット』マイケル・キートン 心理学から観る映画60:記憶障害の診断「神経認知領域」と「病因」からみる『殺し屋のプロット』

今回は、急速に進行してしまう認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病に冒された殺し屋の最後の“仕事”を描く『殺し屋のプロット』を取り上げます。

映画『チャップリン』チャーリー・チャップリン『キッド』の一場面 映画好きが選んだチャーリー・チャップリン人気作品ランキング

俳優および監督など作り手として、『キッド』『街の灯』『独裁者』『ライムライト』などの名作の数々を生み出したチャーリー・チャップリン(チャールズ・チャップリン)。今回は、チャーリー・チャップリン監督作(短編映画を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『ただ、やるべきことを』チャン・ソンボム/ソ・ソッキュ 『ただ、やるべきことを』鑑賞券 3名様プレゼント

映画『ただ、やるべきことを』鑑賞券 3名様プレゼント

映画『星と月は天の穴』綾野剛/咲耶 星と月は天の穴【レビュー】

映画に対してというよりも、本作で描かれる男女のやり取りについては、解釈の仕方および、その解釈に伴った好みが…

映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』ウーナ・チャップリン アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ【レビュー】

REVIEWシリーズ3作目となる本作でも、まず映像美と迫力に圧倒されます。物理的に目の前で…

映画『新解釈・幕末伝』ムロツヨシ/佐藤二朗 新解釈・幕末伝【レビュー】

幕末を描いた本作は、“新解釈”とタイトルにあるように、ユニークな解釈で描かれて…

映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』来日ジャパンプレミア、ジェームズ・キャメロン監督、山崎貴監督、宮世琉弥 お互いの才能を讃え合うジェームズ・キャメロン監督と山崎貴監督、若者代表、宮世琉弥も感動『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』来日ジャパンプレミア

最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』のワールドツアーの一環として、ジェームズ・キャメロン監督が3年ぶりに来日。山崎貴監督と宮世琉弥も会場に駆けつけました。

映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』八木莉可子 八木莉可子【ギャラリー/出演作一覧】

2001年7月7日生まれ。滋賀県出身。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『チャップリン』チャーリー・チャップリン『キッド』の一場面 映画好きが選んだチャーリー・チャップリン人気作品ランキング

俳優および監督など作り手として、『キッド』『街の灯』『独裁者』『ライムライト』などの名作の数々を生み出したチャーリー・チャップリン(チャールズ・チャップリン)。今回は、チャーリー・チャップリン監督作(短編映画を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『殺し屋のプロット』マイケル・キートン
  2. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  3. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ

REVIEW

  1. 映画『AFRAID アフレイド』ジョン・チョウ
  2. 映画『星と月は天の穴』綾野剛/咲耶
  3. 映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』ウーナ・チャップリン
  4. 映画『新解釈・幕末伝』ムロツヨシ/佐藤二朗
  5. 映画『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』コリン・ファレル/マーゴット・ロビー

PRESENT

  1. 映画『ただ、やるべきことを』チャン・ソンボム/ソ・ソッキュ
  2. 映画『グッドワン』リリー・コリアス
  3. 映画『サリー』エスター・リウ
PAGE TOP