REVIEW

太陽と桃の歌【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『太陽と桃の歌』アイネット・ジョウノウ/ジョエル・ロビラ/イザック・ロビラ

REVIEW

第72回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門で見事金熊賞を受賞した本作は、時代の大きな変化に戸惑う桃農家を営む大家族が主人公の物語です。監督は、初長編監督作『悲しみに、こんにちは』でベルリン国際映画祭最優秀新人作品賞とジェネレーション部門グランプリを受賞したカルラ・シモンが務めています。
物語の舞台はスペインのカタルーニャ。3世代にわたり桃農家を営むソレ家は、地主から立ち退きを迫られています。今育てている桃の収穫が終われば、土地を明け渡さなければいけない状況で、家族それぞれが複雑な思いを抱きながら、日々を過ごしています。

映画『太陽と桃の歌』ジュゼップ・アバッド/アイネット・ジョウノウ

淡々と描かれるソレ家の人々の日常は、何気ない日常に見えつつも、一人ひとりの心が揺れ動く様が生々しく映ります。大人達は根本的には仲が良いものの、生活を守るための価値観はさまざまで、きょうだい同士の衝突もあります。また、子ども達も一時的とはいえ、親同士の不和に敏感で、静かに傷付いている様子がうかがえます。伝統を守りたい、プライドを持っている仕事を守りたい、家族を守りたい、どの思いもわかるし、誰も悪くない状況なので、それぞれのキャラクターに共感を抱きます。

映画『太陽と桃の歌』アイネット・ジョウノウ

でも、ぶつかり合っても家族の絆は強固です。ストレスフルな状況を乗り越えていく様子を観ると、やっぱり家族なんだなと思えて、心が温かくなります。環境は違えど、私達も社会の大きな変化に影響を受けます。本作は自分ならどう折り合いをつけるのか、考えるきっかけになります。

デート向き映画判定

映画『太陽と桃の歌』ジョルディ・ プジョル・ ドルセ/アンナ・ オティン/アルベルト・ボスク/アイネット・ジョウノウ/ジョエル・ロビラ/イザック・ロビラ

本作では、それぞれに所帯を持ったきょうだい間のやり取りが生々しく描かれているので、親戚同士で揉めていたり、不和がある夫婦の場合は、心穏やかに観られないかもしれません(苦笑)。なので、冷静に思考の整理をしたい方は、1人で観るほうが良いでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『太陽と桃の歌』アルベルト・ボスク

本作は心の動きを丁寧に描いた作品です。逆にいえば、日常の自然なやり取りを淡々と映していて、見た目に派手な展開がないので、まだ映画を観慣れていない方にはピンとこない部分もあるでしょう。逆に、人間観察が好きな方には見どころが詰まっています。また、ティーンの皆さんは、思春期のキャラクターの心情に共感できるところがあるでしょう。親に理解してもらえないもどかしい気持ちを誰もが経験するとわかります。

映画『太陽と桃の歌』ジュゼップ・アバッド/ジョルディ・ プジョル・ ドルセ/アンナ・オティン/アイネット・ジョウノウ

『太陽と桃の歌』
2024年12月13日より全国公開
東京テアトル
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

© 2022 AVALON PC / ELASTICA FILMS / VILAÜT FILMS / KINO PRODUZIONI / ALCARRÀS FILM AI

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年12月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『We Live in Time この時を生きて』フローレンス・ピュー/アンドリュー・ガーフィールド 大切な人ができれば、譲れないことも変わる!?『We Live in Time この時を生きて』【映画でSEL(社会性と情動の学習)】

今回は運命的な出会いを果たし、ぶつかり合いながらもお互いに正直に生きるカップルの物語『We Live in Time この時を生きて』を取り上げます。

映画『雪風 YUKIKAZE』竹野内豊 『雪風 YUKIKAZE』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『雪風 YUKIKAZE』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『IMMACULATE 聖なる胎動』シドニー・スウィーニー IMMACULATE 聖なる胎動【レビュー】

敬虔な修道女のセシリア(シドニー・スウィーニー)は、イタリアの美しい田園都市にある修道院にやってきます…

映画『ストレンジ・ダーリン』ウィラ・フィッツジェラルド ストレンジ・ダーリン【レビュー】

6章からなる本作は、ユニークな構成となっています…

映画『DROP/ドロップ』メーガン・フェイヒー/ブランドン・スクレナー ブランドン・スクレナー【ギャラリー/出演作一覧】

1990年6月26日生まれ。アメリカ出身。

映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット スーパーマン【レビュー】

ジェームズ・ガン監督らしい表現によって、全く新しい“スーパーマン”が観られます。冒頭の演出からして…

映画『親友かよ』アンソニー・ブイサレート アンソニー・ブイサレート【ギャラリー/出演作一覧】

2004年9月27日生まれ。タイ、バンコク出身。

映画『逆火』北村有起哉 逆火【レビュー】

主人公の野島浩介(北村有起哉)は、感動を呼び話題となっている自伝小説の映画化作品の助監督を務めています。野島は作品に活かすため…

映画『アマチュア』来日ジャパンプレミア:レイチェル・ブロズナハン レイチェル・ブロズナハン【ギャラリー/出演作一覧】

1990年7月12日生まれ。アメリカ生まれ。

映画『顔を捨てた男』セバスチャン・スタン 顔を捨てた男【レビュー】

社会が自分を見る目と、自分自身が自分を見る目がいかにして人の心理や生き方、ひいてはウェルビーイングに影響するのかを…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット 映画好きが選んだDCコミックス映画ランキング

今回は正式部員の皆さんに好きなDCコミックス映画について投票していただきました。“スーパーマン”や“バットマン”など人気シリーズが多くあるなか、上位にはどんな作品がランクインしたのでしょう?

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』トム・クルーズ 映画好きが選んだトム・クルーズ人気作品ランキング

毎度さまざまな挑戦を続け、人気を博すハリウッドの大スター、トム・クルーズ。今回は、トム・クルーズ出演作品(日本劇場未公開作品を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『シークレット・アイズ』キウェテル・イジョフォー/ジュリア・ロバーツ /ニコール・キッドマン 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.5

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『We Live in Time この時を生きて』フローレンス・ピュー/アンドリュー・ガーフィールド
  2. 映画『君がトクベツ』畑芽育/大橋和也
  3. 映画でSEL:告知1回目

REVIEW

  1. 映画『IMMACULATE 聖なる胎動』シドニー・スウィーニー
  2. 映画『ストレンジ・ダーリン』ウィラ・フィッツジェラルド
  3. 映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット
  4. 映画『逆火』北村有起哉
  5. 映画『顔を捨てた男』セバスチャン・スタン

PRESENT

  1. 映画『雪風 YUKIKAZE』竹野内豊
  2. 特製『平成狸合戦ぽんぽこ』ふんわりキーホルダー正吉
  3. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP