REVIEW

私がやりました【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『私がやりました』ナディア・テレスキウィッツ/レベッカ・マルデール/イザベル・ユペール

1930年代のパリを舞台に描く、クライム・コメディ。稼ぎが少なく、家賃を何ヶ月も滞納している、女優の卵マドレーヌ(ナディア・テレスキウィッツ)と若手弁護士ポーリーヌ(レベッカ・マルデール)は、ある殺人事件に巻き込まれます。これは2人にとって災難かと思いきや、ポーリーヌがあるアイデアを思い付き、マドレーヌは自ら殺人事件の容疑者となります。
意外にも、この殺人事件をきっかけに2人は人生を切り拓いていきます。2人は大胆な方法で、まさに逆境を好機に変えます。大胆とはいえ、その方法は弱い立場の女性による男性社会に対する反撃といえる点が本作の見どころです。「そっちがそう出るなら、こっちは利用してやる!」という女性達の覚悟と開き直りに清々しさを感じつつ、物語の舞台が今から1世紀ほど前にもかかわらず、本作で描かれている性差別、セクハラは現代社会でも根深く残っている実状に対する最大の皮肉にも受け取れます。
少し間違えると誤解を招きかねないスレスレの表現で、女性と男性がそれぞれ置かれている立場をありのままに見せると同時に、多面性も描いている点がさすがフランソワ・オゾン監督です。どちらか一方だけを肯定、否定するのではなく、さまざまな人間の背景を描くことで、何が人間をそうさせているのかに想像を巡らせる演出が見事です。
ナディア・テレスキウィッツ、レベッカ・マルデールのキュートな魅力、ファブリス・ルキーニ、ダニー・ブーン、アンドレ・デュソリエが醸し出す独特のユーモア、そして、ひときわ異彩を放つイザベル・ユペールの貫禄も絶妙にブレンドされています。ストーリーの毒々しさとのコントラストが効いている美しく創作されたクラシックな世界観も合わせてご堪能ください。

デート向き映画判定
映画『私がやりました』ナディア・テレスキウィッツ

本作にはどうしようもない男が複数登場し、恋愛のゴタゴタも描かれています。煮え切らない相手、ワケありの相手と交際中の方は、背景は異なるにしても、自分に重ねてしまって、コメディとして観るよりも、シリアスに観てしまうかもしれません。本作はどちらかというと友達と観るほうが気軽に楽しめそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『私がやりました』ナディア・テレスキウィッツ/レベッカ・マルデール/イザベル・ユペール/アンドレ・デュソリエ

コメディとして観て欲しい部分と、社会風刺として真面目に捉えて欲しい部分の両方があります。大人のすさんだ世界が舞台となっている点でも、アルバイトを始めたり、就職したり、社会に一歩でも出てから観るほうが、本作で描かれている状況をリアルに感じながら観られると思います。行為そのものは真似すべきではありませんが、理不尽な状況でも負けないマドレーヌとポーリーヌの精神はお手本となる部分もあるでしょう。

映画『私がやりました』ナディア・テレスキウィッツ/レベッカ・マルデール/イザベル・ユペール/ファブリス・ルキーニ/ダニー・ブーン/アンドレ・デュソリエ

『私がやりました』
2023年11月3日より全国順次公開
ギャガ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

© 2023 MANDARIN & COMPAGNIE ‐ FOZ ‐ GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA ‐ SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2023年10月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『Brotherブラザー 富都(プドゥ)のふたり』ウー・カンレン/ジャック・タン Brotherブラザー 富都(プドゥ)のふたり【レビュー】

『ミス・アンディ』『分貝人生Shuttle Life』などの社会派作品のプロデューサーを務めてきたジン・オンの長編監督デビュー作となる本作は…

映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』セバスチャン・スタン ポッドキャスト【だからワタシ達は映画が好き26】2025年1月「気になる映画とオススメ映画」

年末年始の話題作が盛りだくさんなので、拾い上げきれない作品もありましたが、今回もなるべく多くの作品についてしゃべりました。洋画、邦画、アニメまで、オススメが多過ぎて、熱が入りました。ネタバレを避けるために、表現がもどかしい部分もありますがご容赦ください(苦笑)。

劇場アニメ『ベルサイユのばら』 劇場アニメ『ベルサイユのばら』【レビュー】

1972年から1973年まで「週刊マーガレット」(集英社)で連載され、1974年に宝塚歌劇団により舞台化されたほか…

映画『籠の中の乙女 4Kレストア版』 籠の中の乙女 4Kレストア版【レビュー】

ヨルゴス・ランティモス監督がキャリアの初期に手掛けた、カンヌデビュー作である本作は、2009年に製作されたギリシャ映画…

映画『ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件』トニー・レオン/アンディ・ラウ ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件【レビュー】

トニー・レオンとアンディ・ラウが“インファナル・アフェア”シリーズ以来20年ぶりに共演を果たした…

映画『おんどりの鳴く前に』ユリアン・ポステルニク おんどりの鳴く前に【レビュー】

ルーマニア・アカデミー賞で6冠に輝いた本作は、静かに始まり激しく…

映画『リアル・ペイン〜心の旅〜』ジェシー・アイゼンバーグ/キーラン・カルキン リアル・ペイン〜心の旅〜【レビュー】

“リアル・ペイン=本当の痛み”を感じるとは、どういうことなのでしょうか。そして、本当の痛みとは…

映画『ベルヴィル・ランデブー』 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.3

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『知らないカノジョ』中島健人/milet 『知らないカノジョ』一般試写会 20組40名様ご招待

映画『知らないカノジョ』一般試写会 20組40名様ご招待

映画『アンダーニンジャ』山﨑賢人/浜辺美波/間宮祥太朗/白石麻衣/山本千尋/宮世琉弥/坂口涼太郎/長谷川忍(シソンヌ)/木南晴夏/ムロツヨシ/岡山天音/平田満/佐藤二朗 アンダーニンジャ【レビュー】

花沢健吾による人気漫画「アンダーニンジャ」を、福田雄一監督が山﨑賢人主演で映画化…

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ベルヴィル・ランデブー』 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.3

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダーほか トーキョー女子映画部が選ぶ 2024年ベスト10&イイ俳優MVP

毎年恒例のこの企画では、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

映画『ソルト』アンジェリーナ・ジョリー 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外40代編】個性部門

本部門で上位にランクインしたのはどの俳優なのでしょうか?2024年のイイ俳優ランキングは今回がいよいよ最終回です。ぜひ最後まで結果を見届けてください!

REVIEW

  1. 映画『Brotherブラザー 富都(プドゥ)のふたり』ウー・カンレン/ジャック・タン
  2. 劇場アニメ『ベルサイユのばら』
  3. 映画『籠の中の乙女 4Kレストア版』
  4. 映画『ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件』トニー・レオン/アンディ・ラウ
  5. 映画『おんどりの鳴く前に』ユリアン・ポステルニク

PRESENT

  1. 映画『知らないカノジョ』中島健人/milet
  2. 映画『あの歌を憶えている』ジェシカ・チャステイン/ピーター・サースガード
  3. 映画『ドライブ・イン・マンハッタン』ダコタ・ジョンソン/ショーン・ペン
PAGE TOP