取材&インタビュー

『よこがお』筒井真理子さんインタビュー

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映画『よこがお』筒井真理子さんインタビュー

本作は、ある事件がきっかけで、自分の罪ではないのにすべてを失ってしまった女の復讐劇。人間としての葛藤が描かれる本作をどんな心境で演じられたのか、主演の筒井真理子さんにインタビューさせて頂きました。心理学的な視点を交えたお話にもご注目ください。

<PROFILE>
筒井真理子(つつい まりこ):白川市子・リサ 役
10月13日生まれ、山梨県甲府市出身。1982年早稲田大学在学中に、鴻上尚史主催の劇団“第三舞台”で初舞台を踏む。以降、舞台をはじめ映画、テレビ、CMなどで幅広く活躍。1994年、映画『男ともだち』で主演デビューを飾る。その後『クワイエットルームにようこそ』『アキレスと亀』『ヒーローショー』『希望の国』『クロユリ団地』『かぐらめ』など、さまざまな映画に出演。2016年、第69回カンヌ国際映画祭・「ある視点」部門審査員賞を受賞した『淵に立つ』では、第71回毎日映画コンクール女優主演賞、第31回高崎映画祭最優秀主演女優賞、第38回ヨコハマ映画祭主演女優賞など多数の賞を受賞した。その他近年の出演作に『ANTIPORNO』『かぞくいろ』『jam』『洗骨』『サムライマラソン』『愛がなんだ』などに出演。また俳優業以外に2016年に、松本明子と漫才コンビ“つつまつ”を結成。

誰にでも市子のようなところはある。だから皆大丈夫

映画『よこがお』筒井真理子

マイソン:
すごく怖いけど身近にありそうな映画ですごくおもしろかったです。

筒井真理子さん:
ありがとうございます。嬉しいです。

マイソン:
今回『淵に立つ』がきっかけで、深田晃司監督は市子の役を筒井さんでイメージしながらフォーカスされたと資料に書いてありました。脚本作りから参加されて、監督が思い描く市子のイメージと、筒井さんがイメージを膨らます部分とあったんじゃないかなと思うんですが、男女の視点の違いを感じたところはありましたか?

筒井真理子さん:
一番、復讐の部分に違いがあったんじゃないかなと思うんですよね。復讐って相当執着がないとしないじゃないですか。でも、その執着は生きることの執着だったんだなと思うんですよね。今私の生活で考えれば、すべてをなくすことってことはほぼ考えられないけど、そのすべてをなくして、何もなくなった時にどうやって生きていくのかって…。その“よすが”みたいなものがなければ生きていけないと思うんですが、市子にとって復讐はその“よすが”だったんですよね。男性は攻撃するという性(さが)だけど、女性はわりと守ろうとするから、復讐にあまり向かないと思うし、内省するとか、泣くとか自分に向かっていきますよね。その辺は男女でちょっと違うかなと思って、そこは最初1番心配だったんです。でも撮影していくうちに何かわかっていったという感じですかね。

マイソン:
基子(市川実日子)との関係とか、ああいった関係じゃなくても、私達の日常で起こりそうな話っていうところがすごく怖いなって思いました。

映画『よこがお』筒井真理子/市川実日子

筒井真理子さん:
そうですよね。誰にでも起こり得ますもんね。

マイソン:
仲が良いから気を許したのにっていうところで、全部裏目に出ちゃう展開も、女性独特の人間関係でありそうで怖かったです。

筒井真理子さん:
深田監督ってそういうところが女性的ですよね。

マイソン:
確かに!筒井さんは、基子というキャラクターについてはどういう風に感じながら演じられていましたか?

筒井真理子さん:
脚本を読んだ時、市子も、基子もおもしろいなって思いました。演じるにあたっては、無意識にやってしまう方法もあるし、意図があるようにするのもあるし。今回は、意図がないほうで無意識にやってしまう感じで作って欲しいということだったので、それが市川実日子ちゃんにとっても合っていて、共演してとてもやりやすかったです。すごくインスパイアされたし、皆さん本当に素晴らしい方達だったので、本当に素のままでいられました。

映画『よこがお』筒井真理子

マイソン:
市子も市子で、正しいことをしようという葛藤が見えました。

筒井真理子さん:
そうなんです!その時その時のシーンで、半分は「逃げ切れるかも知れない」って思いと、もう半分は基子に逃げ切ろうよって言って欲しかったっていう思いと両方があって、人間の弱さに近づけようかなと思いました。シーン毎にどっちが良いのか、かなり監督とも話して作っていきました。

マイソン:
観ていても、市子が選択を迫られる度に、どっちの気持ちに寄っていくんだろうっていう緊張感がありました。そして、『よこがお』というタイトルには、いろいろな想像を膨らませる要素を感じますが、筒井さんにとってこのタイトルはどんな印象ですか?

映画『よこがお』筒井真理子/池松壮亮

筒井真理子さん:
すごくいろいろな意味が含まれているというか、見えないほうの顔とか、その人のもう1つの部分とか、何か“よこがお”って不思議ですよね。英語で“profile”っていうんですけど、あなたに見えているのは全部じゃないよって言われているような感じもするし、不思議で素敵なタイトルですよね。

マイソン:
狂気に陥っていく市子の行動が結構強烈で、人間の行動としてリアルに思わせつつ、でもちょっと常軌を逸しているというのを同時に見せるのは、演技として難しいんじゃないかと思ったんですけど、演じてみていかがでしたか?

筒井真理子さん:
私は心理学が大好きなんです。人には得手不得手があって、自分が得意じゃないことばかり要求されると、“インザグリップ状態”になるそうです。「なぜあの時あんな恥ずかしいことをしたんだろう」ってなることってあるじゃないですか。何もかも苦手なことばかり要求されるから、能力がないわけじゃないんですけど、利き手の右手を要求されれば普通に書けたものを、左手でしか書いちゃいけないって言われるからできなくって、そういう状態が長く続くと、人って変なことをするんですって。だから誰にでもおかしなところはあるんです。だから市子の行動もある意味リアルなんだと思います。

マイソン:
すごい!なるほど〜。

映画『よこがお』筒井真理子

筒井真理子さん:
だから皆全然大丈夫、元気出してって感じです(笑)。

マイソン:
ハハハハハ!そうですね。あと、映画の話からずれるのですが、本作に限らず筒井さんが演じてみたいと思うキャラクターで、ここが共通している点はありますか?

筒井真理子さん:
全部楽しくて、台本を読んじゃうと全部やりたくなっちゃうんです。この役をやったらおもしろいだろうなとか、この人ってなぜこうなったんだろうとか、何か原因があるじゃないですか。それを探すのがすごく好きなんです。心理学のとある先生がおっしゃってたんですが、人間が病にかかると原因が分化していって病名が付いて、それを小症状って言うんだけど、大症状は愛情の欠如なんです。根っこは全部それなんです。人間って可愛いんですよ。可愛いって言ったら失礼かな(笑)。私も含めね。

マイソン:
確かにそう考えると、人間って愛おしい動物ですね。では最後の質問で、映画好きの方に観て欲しい本作のポイントがあったら教えてください。

映画『よこがお』筒井真理子さんインタビュー
ヘアメイク:AKIKO ZAIMA 〔MARVEE〕
スタイリスト:齋藤ますみ
衣裳:黒ワンピース=FLICKA/アクセサリー=GOLDY

筒井真理子さん:
一緒に体験してくださいっていう感じですかね。いろいろな観方をしてもらって良いなと思っていて、『淵に立つ』もフランスでは皆笑って観てたんです。そんな風に観てもらっても嬉しいし、市子と一緒にジェットコースターに乗るような気持ちで観てもらっても嬉しい。最近わかったことで、エンタテインメントって笑うのももちろんストレスのリリースになるんだけど、泣くほうが何十倍もリリースになるんですって。あとは、1つの経験を増やすみたいな気持ちで観てもらうのも良いですね。遠藤周作の「わたしが・棄てた・女」っていう小説で、女性の悲しさとか踏みにじられる感じとか、男性の後ろめたさとかが、若い頃に背伸びして読んだ時はわからなかったけど、何か心に残ってたんですよね。それがその後社会に出て、理不尽なことにたくさん遭った時に、この感情と似ているなと思った瞬間、思い出すんです。引き出しの1つのように。そんな時、ベストセラーになった小説ってことは、皆が共感するものなんだよなって思うと、1人にならずにすむというか、孤独にならずにすむんですよね。こんな私ってダメとか思わなくてもすむし。そういうことを経験するってことなんだ、生きるってことはって、そっちに変わってくるんですよね。若い方には特にそういう風に観て頂きたいなって。それがきっとものすごく血肉になるんじゃないかなって思います。深田監督の作品って、えぐるような作品の時は特にそんな感じで観てもらいたいし、あるいは一緒に旅してもらって、経験して欲しいですね。

マイソン:
今日は貴重なお話をありがとうございました!

2019年6月17日取材 PHOTO & TEXT by Myson

映画『よこがお』筒井真理子/市川実日子/池松壮亮

2019年7月26日より全国公開
監督・脚本:深田晃司
出演:筒井真理子/市川実日子/池松壮亮/須藤蓮/小川未祐/吹越満
配給:KADOKAWA

献身的に仕事に励む訪問看護師の市子は、周囲からの信頼も厚かったが、ある日の出来事がきっかけで、親交を深めていた家族が事件に巻き込まれ、市子についてもあらぬ噂が流れてしまう。すべてを失った市子は、名前を変え、自分を貶めた人物に復讐しようと動き出す。

公式サイト 映画批評&デート向き映画判定

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