REVIEW

愛があれば憎しみも【母と娘のさまざまな関係】特集

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『パラレル・マザーズ』ペネロペ・クルス/ミレナ・スミット

今回は、母娘の関係を描いた新作が豊富なことにちなんで、いくつか旧作も交えてこの特集をお送りします。

『パラレル・マザーズ』

映画『パラレル・マザーズ』ペネロペ・クルス/ミレナ・スミット
映画『パラレル・マザーズ』ミレナ・スミット

REVIEW
これまでの作品でも母についての物語を描いてきたペドロ・アルモドバル監督。本作では、民族、家族のルーツに絡めて、母とは何かという偉大なテーマに向き合う物語を紡ぎ出しています。ネタバレになるので、母娘がどんな関係かは書きませんが、何組かの母娘の物語が描かれています。また、ドラマチックな設定によって、母としての思いと人間としての良心で葛藤する主人公(ペネロペ・クルス)の姿が印象的に映ります。同じ愛情深い行為でも、それが親の身勝手でもあり子どものためでもあり、難しい選択を迫られる主人公の心情をリアルに体感できます。

映画『パラレル・マザーズ』ペネロペ・クルス/ミレナ・スミット

2022年11月3日より全国公開
公式サイト

『わたしのお母さん』

映画『わたしのお母さん』井上真央/石田えり/阿部純子
映画『わたしのお母さん』井上真央

REVIEW
母が苦手な主人公、夕子(井上真央)のもとに、ある出来事がきっかけで母、寛子(石田えり)が転がりこんできます。夕子は少しの間だけだと我慢しますが、何でもやり過ごそうとする夕子の態度を寛子は見逃しません。接する機会が増えた2人の間にはまた溝ができていきます。この後は本編で観ていただくとして、本作に登場する母娘は、相性が合わない母娘のオーソドックスな例といえます。でも、一見相性が合わないようでいて、その裏にはいろいろな思い出が絡んでいて、過去が2人の間を邪魔をしているのがわかります。女手一つで3人の子どもを育ててきた寛子と、大変な時期を長女として過ごしてきた夕子。どちらも悪くないのにと切なくなります。

映画『わたしのお母さん』井上真央/石田えり

2022年11月11日より全国公開
公式サイト

『ファイブ・デビルズ』

映画『ファイブ・デビルズ』アデル・エグザルコプロス
映画『ファイブ・デビルズ』

REVIEW
とても不思議な現象によって、幼い娘が母の秘密を知っていく物語。娘としてはかなり複雑な心境になる秘密が明かされていきますが、娘が大きくなった時に同じ女性としてはその秘密をどう受け取るかが変わってきそうな内容です。『ファイブ・デビルズ』というタイトルの意味が何なのかを探りながら観るおもしろさもあります。何度も観るとその都度発見がありそうですが、私は五感の比喩なのではと考えました。あくまで個人の考察なので正解かどうかはわかりません。それが五感だったとして、その先の繋がりはまだ考察しきれていません(苦笑)。皆さんもぜひ考察を楽しみながら観てください。

映画『ファイブ・デビルズ』アデル・エグザルコプロス

2022年11月18日より全国公開
公式サイト

『母性』

映画『母性』戸田恵梨香/永野芽郁
映画『母性』戸田恵梨香/永野芽郁

REVIEW
同じ出来事なのに受け取り方、記憶が異なる母と娘の両方の視点を描いた作品。母となった女性は誰もが誰かの娘でもあるというメッセージも強く伝わってききて、それが意味するところは何なのかをすごく考えさせられます。物語の軸は、ルミ子(戸田恵梨香)と清佳(永野芽郁)ですが、ルミ子と実母(大地真央)、ルミ子と義母(高畑淳子)の関係など、さまざまな母娘の関係が描かれています。愛されたいのに愛されない、愛したいのに愛せない、その両面から描くことで、“母性”の一言では片付けられない女性の複雑な心境を見事に表現しています。

映画『母性』戸田恵梨香/永野芽郁

2022年11月23日より全国公開
公式サイト

『母の聖戦』

映画『母の聖戦』アルセリア・ラミレス
映画『母の聖戦』アルセリア・ラミレス

REVIEW
ある日突然誘拐された娘を必死で取り戻そうとする母親の物語。母親の深くて強い愛情を感じ取れる内容でありながら、意味深なラストを観た後に解釈と想像を巡らせると、何だか違った解釈も浮かんできます。例えば、母は娘についてわかっているようでわかっていないということを表現している物語にも受け取れます。とはいえ、ラストは答えを明確に表現したものではなく、観た人次第で変わるはず。複数回見直して、余白を自分なりに埋めていくと、もしかしたら母娘の関係の見えていなかった側面が見えてくるかもしれません。

2023年1月20日より全国公開
公式サイト

既に配信中やブルーレイ、DVDがリリースされている作品は、ジャケット写真やタイトルの文字リンクをクリックすると、Amazonのデジタル配信もしくはパッケージ販売に飛びます。

『ステラ』

母と娘の名作といえば、この作品。

『愛を乞うひと』

個人的に強烈なインパクトを受けた作品。母と娘の何とも言い表し難い関係を見事に描いています。

Amazonプライムで観る

『地上より何処かで』

母が自分が叶えたかった夢を娘に押し付けたり、自分が勝手に娘の輝く未来を思い描いてしまうことはいつの時代、どこにでもありそうだけれど、母自身は意外に気付けないことも多いのかもしれません。

『ホワイト・オランダー』

強い愛情がオールOKなわけではない。愛情のかけ方、向け方次第で、娘が辛い思いをすることも。

Amazonプライムで観る

『私の中のあなた』

『私の中のあなた』というタイトルの意味するところが何なのかを知ると、娘としては本当に切ない気持ちになります。

Amazonプライムで観る

『八日目の蝉』

複雑な状況が発端で母娘として暮らしてきた2人。子どもに何の罪もないですが、きっかけがきっかけなだけに辛い関係です。

REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定 Amazonプライムで観る

『ルージュの手紙』

血の繋がらない母娘の物語。性格が真逆だから、なおややこしい。

REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定 Amazonプライムで観る

『真実』

女性はいろいろな顔を持っています。だから、ある顔を守るために母親の顔を素直に出せないことも。

REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定 Amazonプライムで観る

母親は特に「こうあるべきだ」というような社会通念があって、世のお母さん達はその色眼鏡で見られることに窮屈さを感じることが大いにあると思います。でも、十人十色だし、愛情の形も表現の仕方も違えば、個人のそれぞれの生き方も違います。
ここでご紹介した作品の他にもさまざまな母娘の関係を描いた作品がありますので、いろいろ観ていただくことで母も娘のどちらの立場でも何か自分なりに折り合いが付けられるといいなと思います。

TEXT by Myson

©Remotamente Films AIE & El Deseo DASLU
©2021 F Comme Film – Trois Brigands Productions – Le Pacte – Wild Bunch International – Auvergne-Rhône- Alpes Cinéma – Division
©2022「わたしのお母さん」製作委員会
©2022映画「母性」製作委員会
©MENUETTO FILM, ONE FOR THE ROAD,LES FILMS DU FLEUVE, MOBRA FILMS&TEOREMA

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『愚か者の身分』林裕太 林裕太【ギャラリー/出演作一覧】

2000年11月2日生まれ。東京都出身。

映画『ペンギン・レッスン』スティーヴ・クーガン ペンギン・レッスン【レビュー】

『ペンギン・レッスン』というタイトルが醸し出す世界観、スティーヴ・クーガンやジョナサン・プライスといった名優がメインキャストに名を連ねていることからして…

映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』水上恒司/木戸大聖/八木莉可子/綱啓永/JUNON(BE:FIRST)/中沢元紀/曽田陵介/萩原護/髙橋里恩/山下幸輝/濱尾ノリタカ/上杉柊平 WIND BREAKER/ウィンドブレイカー【レビュー】

にいさとる作の同名漫画を原作とする本作は、不良グループが街を守るというユニークな設定…

映画『ナイトフラワー』北川景子 北川景子【ギャラリー/出演作一覧】

1986年8月22日生まれ。兵庫県出身。

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年11月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年11月】のアクセスランキングを発表!

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚 映画に隠された恋愛哲学とヒント集80:おしどり夫婦こそ油断禁物!夫婦関係の壊れ方

どんなに仲が良く、相性の良さそうな2人でも、夫婦関係が壊れていく理由がわかる3作品を取り上げます。

映画『マルドロール/腐敗』アントニー・バジョン マルドロール/腐敗【レビュー】

国民を守るためにあるはずの組織が腐敗し機能不全となった様を描いた本作は、ベルギーで起き、1996年に発覚したマルク・デュトルー事件を基に…

映画『消滅世界』蒔田彩珠 消滅世界【レビュー】

ジェンダー、セックスのどちらにおいてもこれまでの常識を覆す価値観が浸透した世界を描いた本作は、村田沙耶香著の同名小説を原作として…

映画『ナイトフラワー』森田望智 森田望智【ギャラリー/出演作一覧】

1996年9月13日生まれ。神奈川県出身。

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚 佐藤さんと佐藤さん【レビュー】

同じ佐藤という苗字のサチ(岸井ゆきの)とタモツ(宮沢氷魚)は、セリフにも出てくるように「結婚しても離婚しても佐藤」です…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. 映画『ペンギン・レッスン』スティーヴ・クーガン
  2. 映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』水上恒司/木戸大聖/八木莉可子/綱啓永/JUNON(BE:FIRST)/中沢元紀/曽田陵介/萩原護/髙橋里恩/山下幸輝/濱尾ノリタカ/上杉柊平
  3. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人
  4. 映画『マルドロール/腐敗』アントニー・バジョン
  5. 映画『消滅世界』蒔田彩珠

PRESENT

  1. 映画『楓』福士蒼汰/福原遥
  2. 映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ
  3. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
PAGE TOP