キャリアデザイン

あなただけのキャリア8:キャリア観をアップデートしよう!【プロティアン・キャリア】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ミナリ』スティーヴン・ユァン

※ネタバレ注意!『ミナリ』

技術革新で私達の生活は大きく変わりつつあり、2019年からは長期に渡るコロナ禍の影響もあって、皆さんの仕事に対する価値観も変わってきていると思います。キャリアという言葉は多義的で、学者、学説によって定義も異なりますが、今回はダグラス・ホールの理論についてご紹介します。

今回取り上げる映画は『ミナリ』。この映画は、ある4人家族がトレーラーハウスに引っ越してくるところから始まります。どうも夫のジェイコブは、妻モニカに詳細を話していないようで、新居に到着するなり不穏な空気が流れます。ジェイコブは農業で生計を立てることを夢見て、妻に黙って広大な荒れた土地を購入していたのです。ただでさえ経済的に苦しい上に、見通しも立たない事業に大金を使ったとあれば、家族なら心配になるのは当然です。この後、一家がどうなるのかは映画を観ていただくとして、ジェイコブのケースを例に、ダグラス・ホールが提唱した「プロティアン・キャリア」という概念をご紹介したいと思います。

映画『ミナリ』ハン・イェリ/アラン・キム/ネイル・ケイト・チョー

ホールの「キャリア」の定義
・キャリアとは成功や失敗を意味するものではなく、「早い」昇進や「遅い」昇進を意味するものでもない。
・キャリアにおける成功や失敗はキャリアを歩んでいる本人によって評価されるのであって、研究者・雇用主・配偶者・友人といった他者によって評価されるわけではない。
・キャリアは行動と態度から構成されており、キャリアを捉える際には、主観的なキャリアと客観的なキャリア双方を考慮する必要がある。
・キャリアはプロセスであり、仕事に関する経験の連続である。

渡辺(2018)

ホールのこの定義の背景には、1980年代の産業社会における構造改革があるとされていますが、『ミナリ』の物語の舞台もちょうど1980年代です。モニカはヒヨコの仕分けをする仕事でコツコツと生計を立てようとしますが、ジェイコブは夢を捨てきれません。このジェイコブのキャリア観は、まさに時代の変化を象徴するものであるとも受け取れて、ホールが提唱したプロティアン・キャリアに紐付きます。

映画『ミナリ』スティーヴン・ユァン

渡辺(2018)によると、「プロティアン・キャリアとは、組織によってではなく個人によって形成されるものでありキャリアを営むその人の欲求に見合うようにそのつど方向転換されるものである(Hall,1976)。移り変わる環境に対して、自己志向的に変幻自在に対応していくキャリアともいえるだろう」と述べられています。

ここで伝統的キャリアとプロティアン・キャリアの比較表をご覧ください。

あなただけのキャリア8:伝統的キャリアとプロティアン・キャリアの比較表

これは私の肌感ですが、社会的、企業的にはまだ伝統的キャリアが根強いように思います。でも、個人が選べる時代に変わりつつあるので、前向きにキャリアを築いていきたいですね。

<参考・引用文献>
渡辺三枝子ほか(2018)「新版 キャリアの心理学[第2版]キャリア支援への発達的アプローチ」ナカニシヤ出版

オススメのお仕事映画

映画『ミナリ』スティーヴン・ユァン/ハン・イェリ/アラン・キム/ネイル・ケイト・チョー/ユン・ヨジョン/ウィル・パットン

『ミナリ』
2021年3月19日より全国公開中

REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

自分で新しい仕事の道を切り拓いていくことは簡単ではありません。とてもリアルな物語となっていて切ない展開もありますが、力強く生きる一家に勇気づけられます。

©2020 A24 DISTRIBUTION LCC.ALL Right Reserved

TEXT by Myson(国家資格キャリアコンサルタント/認定心理士)

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『TOKYOタクシー』倍賞千恵子/木村拓哉 TOKYOタクシー【レビュー】

クリスチャン・カリオン監督『パリタクシー』を原作とした本作は、東京にある柴又から神奈川の葉山にある高齢者施設までの道のりを舞台に、山田洋次監督が映画化…

映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ 心理学から観る映画59:研究倫理に反する実験とその被害『エクスペリメント』『まったく同じ3人の他人』

『まったく同じ3人の他人』というドキュメンタリーを観ました。生き別れた三つ子が再会する感動のストーリーかと思いきや、驚愕の背景を知り、研究倫理について改めて考えさせられました。そこで今回は研究倫理をテーマとします。

映画『コンビニ・ウォーズ~バイトJK VS ミニナチ軍団~』ヴァネッサ・パラディ ヴァネッサ・パラディ【ギャラリー/出演作一覧】

1972年12月22日生まれ。フランス出身。

映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮 ブルーボーイ事件【レビュー】

高度成長期にあった1965年の東京では、街の浄化のため、警察はセックスワーカー達を厳しく取り締まっていました。ただ、セックスワーカーの中には性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けて女性的な体をした通称ブルーボーイが…

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 君の顔では泣けない【レビュー】

高校1年生の夏、坂平陸(武市尚士)と水村まなみ(西川愛莉)はプールに一緒に落ちたことで体が入れ替わってしまいます。2人はすぐに元に戻ることができず15年を過ごし…

映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト スプリングスティーン 孤独のハイウェイ

物語の舞台は1982年。ブルース・スプリングスティーン(ジェレミー・アレン・ホワイト)は、名声を手に入れながらも、葛藤を抱えて…

映画『2つ目の窓』松田美由紀 松田美由紀【ギャラリー/出演作一覧】

1961年10月6日生まれ。東京都出身。

「第38回東京国際映画祭」クロージングセレモニー:受賞者 東京グランプリは『パレスチナ36』!第38回東京国際映画祭ハイライト

2025年10月27日(月)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕したアジア最大級の映画の祭典である第38回東京国際映画祭が、11月5日(水)に閉幕。今年も個性豊かな作品が多数出品され、さまざまなイベントが実施されました。以下に、第38回東京国際映画祭ハイライトをお届けします。

映画『平場の月』堺雅人/井川遥 平場の月【レビュー】

朝倉かすみ著の同名小説を実写化した本作は、『ハナミズキ』『花束みたいな恋をした』(2021年)などを手がけた土井裕泰が監督を務めて…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  2. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  3. 映画『おーい、応為』長澤まさみ

REVIEW

  1. 映画『TOKYOタクシー』倍賞千恵子/木村拓哉
  2. 映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮
  3. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人
  4. 映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト
  5. 映画『平場の月』堺雅人/井川遥

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP