特集

あなただけのキャリア9:職場でのジェンダーギャップに泣き寝入りしないために知っておきたいこと

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『サムジンカンパニー1995』コ・アソン/イ・ソム/パク・ヘスほか

韓国で起きた実話を基にした『サムジンカンパニー1995』では、1995年の韓国企業を舞台に、学歴社会が職場にもたらす影響と男女の待遇の違いが印象的に描かれています。『サムジンカンパニー1995』の公式サイトによると、1995年に某大企業で実際に商業高校卒の社員のためにTOEICのクラスが開設されていたことや、斗山電子のフェノール流出水質汚染事件(1991年)がモデルとなっているそうです。さらに、本作に登場するジャヨン(コ・アソン)というキャラクターのモデルは、現パリバゲットのイム・ジョンリン支会長で、彼女が若い頃に経験した会社での不当な扱いに立ち向かったエピソードから着想を得たとされています。

本作は1995年の韓国が舞台となっていますが、日本でも同じようなことがあると実感させられる内容です。今は大学に進学する女性も増えたので少しは状況が変わってきているかもしれませんが、本作に登場する大企業での組織図として、高卒の女性はどんなにやる気とセンスがあっても、事務的な役割や雑務を中心に任されていて、年下の男性が上司ということも当たり前の状況であることが伝わってきます。

映画『サムジンカンパニー1995』コ・アソンほか

現代日本ではどうかと見てみると、コロナ禍が就業状況に大きく影響していることも男女の差を浮き彫りにしています。男女共同参画白書(令和3年版)「コロナ下で顕在化した男女共同参画の課題と未来」では、2019年1月以降の就業者数において男女共に,緊急事態宣言が発出された2020年4月に前月と比べて就業者数が大幅に減少していることが示されていると同時に、女性は70万人減少,男性は39万人減少と女性の減少幅のほうが大きいとされています。この背景には女性は非正規雇用の割合が高く、雇用整理の対象になりやすいことも理由の1つとして挙げられます。また、在宅勤務や学校や保育園等の休校、休園によって、女性の家事の負担が増えたことも悪影響となっているとみる意見もあります(白波瀬, 2021)。

女性の社会進出が進んでいく一方、職場環境や社会の意識の変化がそれに追いついていないことは、私達女性の多くが日々感じていることと思います。また、女性の管理職が少ないこと、男性よりも昇進が難しいことの背景には、女性がいずれ結婚や出産で休職したり退職する可能性があるという先入観を持たれていることも少なからず影響しているでしょう。

ただ、採用について、日本国憲法第二十二条で、“職業選択の自由”が基本的人権との一つとして保障されており、第十四条では“法の下の平等”を保障しています。厚生労働省は「公正な採用選考をめざして(令和3年度版)」の中で、採用選考について、応募者の基本的人権を尊重すること、応募者の適性・能力に基づいた基準により行うことを基本的な考え方とすることを謳っています。このことから、本人に責任のない事項【本籍・出生地/家族に関すること(職業・続柄・健康・病歴・地位・学歴・収入・資産など)/住宅状況/生活環境・家庭環境】の把握、本来自由であるべき事項【宗教/支持政党/人生観・生活信条/尊敬する人物/思想/労働組合や学生運動などの社会運動に関すること/購読新聞や雑誌、愛読書など】について把握することも、就職差別につながる恐れがあるとしています。

映画『サムジンカンパニー1995』コ・アソン

つまり、女性でいうと結婚願望があるか、将来子どもを産みたいと思っているかといったことは個人の自由であり、そのことが採用選考に影響があってはいけないと考えられます。とはいえ実態が伴っていない現状はもちろんあると思いますが、政府によって男女共同参画が謳われているという背景や、不当な雇用や就労に関する問題がSNSなどによって個人から発せられることで社会の関心は少しずつ高まっていることが少しでも風向きを変える一助になる可能性はあるのではないでしょうか。

泣き寝入りしないためにも、もし皆さんも同じようなことで困っていたり悩んでいたら、専門家に相談してみることをオススメします。例えばキャリアコンサルタントは、個人のキャリア形成に関する相談を受けるだけでなく、環境への働きかけも役割の1つとして担っています。職場で困難を抱えている場合に個人として直接職場に相談するという手段以外に、専門家経由で職場に働きかけを行うということも視野に入れてみてください。

<参考・引用文献>
「コロナ下で顕在化した男女共同参画の課題と未来」令和2年度男女共同参画社会の形成の状況 男女共同参画白書
「公正な採用選考を目指して」厚生労働省 令和3年度版
「コロナ禍のジェンダー格差」白波瀬 佐和子(東京大学)労働政策フォーラム2021

オススメのお仕事映画

映画『サムジンカンパニー1995』コ・アソン/イ・ソム/パク・ヘス

『サムジンカンパニー1995』
2021年7月9日より全国公開

REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

本作では、それぞれにこういう仕事がしたいという夢を持ちながらもまだそこに繋がる仕事をさせてもらえる状況にない女性社員達が、会社のある大きな不正に気づき、内部から正そうと奔走する物語です。さまざまな立場の女性達が行動で自分達の実力や価値を見せつけるストーリーはとても爽快で勇気をもらえます。

© 2020 LOTTE ENTERTAINMENT & THE LAMP All Rights Reserved.

TEXT by Myson(国家資格キャリアコンサルタント)

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『流麻溝十五号』余佩真(ユー・ペイチェン) 流麻溝十五号【レビュー】

本作の原作は、曹欽榮(ツァオ・シンロン)と鄭南榕基金会による「流麻溝十五號:綠島女生分隊及其他」です…

映画『ツイスターズ』オリジナルハンディファン 『ツイスターズ』オリジナルハンディファン 2名様プレゼント

映画『ツイスターズ』オリジナルハンディファン 2名様プレゼント

映画『このろくでもない世界で』ホン・サビン/ソン・ジュンギ このろくでもない世界で【レビュー】

冒頭から緊張感のあるシーンで始まる本作は、ろくでもない世界でもがく18歳の少年を主人公に…

映画『OUT』公開初日舞台挨拶、杉本哲太 杉本哲太【プロフィールと出演作一覧】

1965年7月21日生まれ。神奈川県出身。『白蛇抄』(1983)で映画デビューし…

映画『あのコはだぁれ?』清水崇監督インタビュー 『あのコはだぁれ?』清水崇監督インタビュー

昨年話題となった『ミンナのウタ』のDNAを引き継ぐ最新作『あのコはだぁれ?』。今回は本作を手掛けた…

映画『デッドプール&ウルヴァリン』ライアン・レイノルズ/ヒュー・ジャックマン デッドプール&ウルヴァリン【レビュー】

たくさん言いたいことはありながら、ネタバレになるので言えないことが多過ぎ…

映画『時々、私は考える』デイジー・リドリー 時々、私は考える【レビュー】

主人公のフラン(デイジー・リドリー)はとても静かだけれど、ここぞという時には…

映画『お隣さんはヒトラー?』デヴィッド・ヘイマン/ウド・キアー お隣さんはヒトラー?【レビュー】

タイトルは『お隣さんはヒトラー?』で、物語の舞台は1960年のコロンビア…。「むむむ?アドルフ・ヒトラーって…

映画『ロイヤルホテル』ジュリア・ガーナー/ジェシカ・ヘンウィック ロイヤルホテル【レビュー】

『アシスタント』のキティ・グリーン監督と、主演を務めたジュリア・ガーナーが再びタッグを組んだ本作は…

映画『チャレンジャーズ』ゼンデイヤ 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】個性部門

映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】番外編として、今回は<個性部門>のランキングを発表します。特に個性が光る俳優としてどの俳優に投票が集まったのでしょうか?

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『チャレンジャーズ』ゼンデイヤ 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】個性部門

映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】番外編として、今回は<個性部門>のランキングを発表します。特に個性が光る俳優としてどの俳優に投票が集まったのでしょうか?

Netflix映画『悪魔はいつもそこに』トム・ホランド 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】演技力部門

映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】番外編として、今回は<演技力部門>のランキングを発表します。演技派揃いのなか、どのような結果になったのでしょうか。

海外ドラマ『THE GREAT 〜エカチェリーナの時々真実の物語〜』エル・ファニング 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】雰囲気部門

映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外10代、20代編】番外編として、今回は<雰囲気部門>のランキングを発表します。雰囲気の良さが特に評価されているのは、どの俳優でしょうか。

REVIEW

  1. 映画『流麻溝十五号』余佩真(ユー・ペイチェン)
  2. 映画『このろくでもない世界で』ホン・サビン/ソン・ジュンギ
  3. 映画『デッドプール&ウルヴァリン』ライアン・レイノルズ/ヒュー・ジャックマン
  4. 映画『時々、私は考える』デイジー・リドリー
  5. 映画『お隣さんはヒトラー?』デヴィッド・ヘイマン/ウド・キアー

PRESENT

  1. 映画『ツイスターズ』オリジナルハンディファン
  2. 映画『サユリ』
  3. 映画『ボストン1947』ハ・ジョンウ/イム・シワン
PAGE TOP