REVIEW

AGANAI 地下鉄サリン事件と私【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『AGANAI 地下鉄サリン事件と私』さかはらあつし/荒木浩

本作は、1995年3月20日に起きた、地下鉄サリン事件の被害者の1人、さかはらあつし監督によるドキュメンタリーです。地下鉄サリン事件では、14名の死者(後遺症で寝たきりの生活の後、2020年3月にお亡くなりになられた女性を含む)と、6000人余りの負傷者が出たといわれています。事件を起こしたのは、オウム真理教の教祖である麻原彰晃(本名・松本智津夫)と信者達。麻原彰晃と逮捕された元幹部12名の死刑は2018年7月に執行されていますが、本作の公式資料によると、オウム真理教の信者達は今でも複数のグループに分かれて、“Aleph(アレフ)”“ひかりの輪”などと名前を変えて活動しており、さかはら監督は1年間彼らと撮影の交渉を行ったそうです。さかはら監督は今もPTSDや身体の不調を抱えながらも、若き日に自ら命を絶った友人との約束を胸に2014年から本作の制作に取りかかり、2015年から撮影を開始していますが、決して妥協しないと決め、5年の歳月をかけて本作を完成させています。
本作には、Alephの広報部長とさかはら監督が、偶然にも同じだったという故郷の丹波を旅する様子が描かれています。多くの犠牲者を出し、さかはら監督自身も被害に遭っていることを思うと、怒りをぶつけたくなってもおかしくありませんが、さかはら監督は敵意ではなく、1人の人間同士として彼に向き合っているのが伝わってきます。公式資料でさかはら監督は「私は荒木浩については自殺した友人にもう一度思いとどませられる機会があれば必ずそうするように友人、いや、兄弟のように真剣に向き合ってみようと思いました」と述べています。時に優しく、時に厳しく彼に接するさかはら監督の様子にはそんな思いが滲み出ていますが、なぜあんな事件が起こったのか、なぜ信者達は家族や社会を捨てて入信するのかを追究しようとする強い意志も感じられます。さかはら監督は、事件後、後遺症に苦しむばかりでなく、被害者団体に入ろうとするも断られたことがあったそうですが、オウム真理教に興味を示しても、被害者にはあまり関心が向けられない現実にも直面し、映画を作ることで一石を投じたいという思いがあったとのことです。決して彼らを赦しているわけではないけれど、公平で真摯な姿勢で撮られた本作は、「人にとって何が大切なのかに立ち戻れば見えてくるものがあるのではないか」と投げかけてくれる作品です。26年後の2021年、事件が起きた3月20日に公開となる本作をぜひ多くの人に観て欲しいと思います。

デート向き映画判定
映画『AGANAI 地下鉄サリン事件と私』

本作は、あれほど残酷なテロ事件を起こした後でも、まだ同じ教祖、宗教を信じ続ける理由は何なのかに迫る内容で、語られる言葉の一つひとつには、とても身近な感情がきっかけになっていることが映し出されています。また、被害者の気持ちを体感させるよう働きかけるシーンも印象的です。さまざまな視点で観ることができる作品なので、こういった作品を大事な人と一緒に観ることで普段相談しづらいことを打ち明けるきっかけにできれば良いなと思います。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『AGANAI 地下鉄サリン事件と私』さかはらあつし/荒木浩

皆さんが生まれる前に起こった事件ですが、すごく大きな事件で今でも話題になることがあり、“地下鉄サリン事件”という言葉だけでも知っている人もいるでしょう。宗教についてはまだ縁遠く感じるかもしれませんが、宗教が云々以前に、人間が幸せに生きていく上で何が大切かを考えさせられる内容になっているので、改めて考えるきっかけにして欲しいと思います。

映画『AGANAI 地下鉄サリン事件と私』さかはらあつし/荒木浩

『AGANAI 地下鉄サリン事件と私』
2021年3月20日より全国順次公開
Good People
公式サイト

©2020 Good People Inc.

TEXT by Myson

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『28年後... 白骨の神殿』ジャック・オコンネル/レイフ・ファインズ 28年後… 白骨の神殿【レビュー】

おもしろすぎる!テーマが深い上に、遊び心もちゃんとあって、観賞中はテンション爆上がり…

映画『AFRAID アフレイド』ジョン・チョウ ジョン・チョウ【ギャラリー/出演作一覧】

1972年6月16日生まれ。韓国出身。アメリカ、ロサンゼルス育ち。

映画『万事快調〈オール・グリーンズ〉』南沙良/出口夏希/吉田美月喜 万事快調〈オール・グリーンズ〉【レビュー】

原作者の波木銅は、現役大学生だった21歳の時に、同名小説で松本清張賞を受賞…

映画『長安のライチ』ダーポン(大鵬)/テレンス・ラウ(劉俊謙) 長安のライチ【レビュー】

REVIEW『熱烈』で監督・脚本を務めたダーポン(大鵬/ダー・ポンと表記される場合もある)…

映画『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』ヒュー・ボネヴィル/ローラ・カーマイケル/ジム・カーター/ラケル・キャシディ/ブレンダン・コイル/ミシェル・ドッカリー/ケヴィン・ドイル/マイケル・フォックス/ジョアン・フロガット/ハリー・ハッデン=パトン/ロブ・ジェームズ=コリアー/アレン・リーチ/フィリス・ローガン/エリザベス・マクガヴァン/ソフィー・マックシェラ/レスリー・ニコル/ダグラス・リース/ペネロープ・ウィルトン ダウントン・アビー/グランドフィナーレ【レビュー】

テレビシリーズ、映画版と全部観てきた者として、15年の歴史を振り返ると、感慨深いものがあります…

映画『恋愛裁判』齊藤京子 恋愛裁判【レビュー】

アイドルは恋愛禁止という風潮が社会に浸透しているなか、改めて本作はその是非を問います…

海外ドラマ『グレイズ・アナトミー シーズン13』ジェシー・ウィリアムズ ジェシー・ウィリアムズ【ギャラリー/出演作一覧】

1981年8月5日生まれ。アメリカ、イリノイ州シカゴ出身。

映画『YADANG/ヤダン』公開記念来日舞台挨拶:カン・ハヌル、ユ・ヘジン、ファン・ビョングク監督 一緒に仕事をしたい日本人俳優・監督名を告白!『YADANG/ヤダン』カン・ハヌル、ユ・ヘジン、ファン・ビョングク監督、来日舞台挨拶

『YADANG/ヤダン』が日本劇場公開された初日、主演のカン・ハヌル、本作を含めさまざまな作品でキーパーソンを演じ、名脇役として活躍するユ・ヘジン、ファン・ビョングク監督が揃って来日しました。

映画『SEBASTIANセバスチャン』ルーアリ・モリカ SEBASTIANセバスチャン【レビュー】

キービジュアルに写るルーアリ・モルカの美しさと独特なオーラに目を奪われ、本作に興味が湧いた方は少なくないはず…

映画『アウトローズ』ジェラルド・バトラー 『アウトローズ』ムビチケオンライン券 2組4名様プレゼント

『アウトローズ』ムビチケオンライン券 2組4名様プレゼント

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集 昨日よりちょっと賢く生きるための【映画学ゼミ第4回】参加者募集!

ネットの普及によりオンラインで大抵のことができ、AIが人間の代役を担う社会になったからこそ、逆に人間らしさ、人間として生きる醍醐味とは何かを映画学の観点から一緒に探ってみませんか?

映画『チャップリン』チャーリー・チャップリン『キッド』の一場面 映画好きが選んだチャーリー・チャップリン人気作品ランキング

俳優および監督など作り手として、『キッド』『街の灯』『独裁者』『ライムライト』などの名作の数々を生み出したチャーリー・チャップリン(チャールズ・チャップリン)。今回は、チャーリー・チャップリン監督作(短編映画を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

学び・メンタルヘルス

  1. 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集
  2. 映画『殺し屋のプロット』マイケル・キートン
  3. 映画学ゼミ2025年12月募集用

REVIEW

  1. 映画『28年後... 白骨の神殿』ジャック・オコンネル/レイフ・ファインズ
  2. 映画『万事快調〈オール・グリーンズ〉』南沙良/出口夏希/吉田美月喜
  3. 映画『長安のライチ』ダーポン(大鵬)/テレンス・ラウ(劉俊謙)
  4. 映画『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』ヒュー・ボネヴィル/ローラ・カーマイケル/ジム・カーター/ラケル・キャシディ/ブレンダン・コイル/ミシェル・ドッカリー/ケヴィン・ドイル/マイケル・フォックス/ジョアン・フロガット/ハリー・ハッデン=パトン/ロブ・ジェームズ=コリアー/アレン・リーチ/フィリス・ローガン/エリザベス・マクガヴァン/ソフィー・マックシェラ/レスリー・ニコル/ダグラス・リース/ペネロープ・ウィルトン
  5. 映画『恋愛裁判』齊藤京子

PRESENT

  1. 映画『アウトローズ』ジェラルド・バトラー
  2. 映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』チャージングパッド
  3. 映画『ただ、やるべきことを』チャン・ソンボム/ソ・ソッキュ
PAGE TOP