【前編】
映画『百円の恋』やNetflixドラマ『全裸監督』を手掛けてきた武正晴監督が、キャストに森山未來、北村匠海、勝地涼を迎え、再びボクシングを題材に描いた物語。前後編と分かれており、前編では森山未來が演じる崖っぷちボクサーの晃を中心とした人間関係が見えてくると同時に、彼のどん底状態のプライベート、さらに北村匠海が演じる天才ボクサーや、勝地涼が演じる芸人ボクサーとの出会いも映し出されています。かつてはチャンピオンの座も手にしかけた晃ですが、その道を外れてからはボクシングとの向き合い方も中途半端になり、周囲からは“噛ませ犬=アンダードッグ”と呼ばれています。でも彼だけではなく、実は芸人ボクサーの宮木も上手くいかない芸人人生に悩んでいたりと、それぞれが心の奥底に深い闇を抱えて生きています。彼らほど落ちぶれていなかったとしても、心にモヤモヤした感情がある部分は誰にでも共感ができると思いますし、そこから抜け出す努力をすることの大切さも感じられます。前編のみだとやはり気になる点がいくつか残ったままになるので、そのまま後編もご覧ください。
ベッドシーンが多いので、初デートや付き合いたてのカップルが一緒に観ると、少々気まずくなるかもしれません。ボクシング好き、映画好きのカップルなら一緒に楽しめると思いますし、試合のシーンは本物の試合かと思うくらい迫力があるので、一緒に観戦する気分で楽しんでください。また、メインキャラクター以外にも気になる人物がたくさん登場するので、前編ではまず誰が気になったのか話し合って後編の予想をするのも良いと思います。
R-15なのでキッズは15歳以上になってから観てください。15歳以上のティーンは観られますが、ボクシングの映画だと思って観ていると、ベッドシーンがかなり出てきてビックリしそうなので、事前にそういうシーンがあることは頭に入れておくほうが良さそうです。人間ドラマとしては皆さんにも共感できる部分が多く、前編では特に宮木に注目して観てください。芸人としてはなかなか上手くいかない彼がどうやって再起をかけるのか、もし自分が同じ立場ならどうするのかも考えつつ、彼を見届けてください。
【後編】
前編で気になっていた箇所が一気に回収されつつ、さらに物語が加速する後編。こちらでもやはり晃のボロボロ状態が映し出されていますが、彼と北村匠海が演じる天才ボクサー龍太の関係性が、あることを機にグッと近づいていきます。さらに、脇にいたキャラクター達についても一気に物語が展開するので、観ていて「次はどうなるの?」の連続。前編が131分、後編が145分とかなり長い作品ではありますが、その分各キャラクターの人物像にしっかり触れられているのが嬉しい点です。そして、いろいろな経験を経てリングに上がっていく晃達の姿を観ていると、試合の勝敗だけではわからない複雑な人生の苦労や喜びも感じられます。 男性キャラが多い作品ですが、瀧内公美、水川あさみ、萩原みのりらが演じた女性キャラも本作をしっかりと支える重要人物となっていて女性視点でも楽しめますよ。ボクシングが題材の作品ではあるものの、そこから見えてくる人間ドラマはとてもリアルで誰もが身に染みる部分があるのではないでしょうか。いろいろなものと戦う晃達の姿から、きっとご自身の人生も振り返りたくなりますし、何よりもこれだけの長編作品を観終わった余韻と満足感を存分に味わえます。
後編も前編と同様にベッドシーンは多めなので、付き合いたてのカップルにはオススメできません。ただ、後編のほうが親子関係などにも焦点が当てられているので、将来子どもを持つことを考えている方なら、よりリアルに感じられる部分がありそうです。もし1人や友達と観る場合は、晃と龍太の対照的な女性との付き合い方も観られるので、相手が誰タイプなのか分析してみたり、自分だったら本作の男性達とどんな付き合い方をするのか考えてみてもおもしろいかもしれません。
後編もR-15です。キッズは15歳以上になってから観てもらうとして、ティーンは龍太に注目して観てください。後編では彼の過去についても明かされますが、ボクサーになるまでの経緯や、その彼を支える奧さんの様子を観ていると、人生は本当にいろいろなことが起きると感じるでしょう。そんな彼の姿を参考に、皆さんもいつどんな時も後悔しないよう、ご自身の道を切り拓いていってくださいね。
『アンダードッグ【前編】【後編】』
2020年11月27日より全国公開
R-15+
東映ビデオ
公式サイト
© 2020「アンダードッグ」製作委員会
TEXT by Shamy