REVIEW

ヴァチカンのエクソシスト【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ヴァチカンのエクソシスト』ラッセル・クロウ/ダニエル・ゾヴァット

実在したヴァチカンのチーフ・エクソシスト、ガブリエーレ・アモルト神父が遺した著書「エクソシストは語る」を基に映画化。ガブリエーレ・アモルト神父は、1925年生まれで、2016年に91歳で亡くなりました。生涯で数万回に及ぶ悪魔祓いを行なったといわれています。映画の公式資料によると、アモルト神父は幼い頃に天啓を受け、17歳でローマに行き聖職者になろうとしたけれど「天啓に従う前にもう少し人生を味わえ」といわれたそうです。そして、第二次世界大戦で出兵し、戦後はロースクールに通い、ローマカトリック系中道政党だったキリスト教民主主義青年部で後年イタリアの首相になったジュリオ・アンドレオッティの右腕も務めたとあります。こうしたユニークな経歴を持っているからこそ、劇中で描かれる親しみ易い人柄にも納得がいきます。劇中では、アモルト神父が悪魔にユーモアで立ち向かう姿も描かれており、そんなアモルト神父の魅力を、ラッセル・クロウが見事に体現しています。
また、ラッセル・クロウは、イタリア語やラテン語のセリフも流暢に話し、アモルト神父役になりきっていて、観る者を本作の世界に引き込みます。そして、やっぱりエクソシストにまつわる作品では、憑依された人物を演じる俳優の演技が要となります。本作では少年が名演を披露しています。
本作を観ると「悪魔なんていないでしょ!」と軽々しく言えなくなるくらい、臨場感、緊張感たっぷりに悪魔祓いの一部始終が描かれています。同時に宗教云々は別として、何かを強く信じる意義を実感させられます。また、悪魔祓いには、悪魔の正体、名前が重要であることが劇中で語られている点で、キリスト教の言い伝えに興味が湧きます。同時に悪魔の存在と企みの背景に何があるのかが、キリスト教が世界に広まる上での黒歴史と関係があったとされる背景も衝撃的です。
本作にはこうした見どころが複数あります。ホラーは苦手と観ず嫌いで終わるともったいない作品です。本作の公式サイトに掲載されている、LADBIBLEの「これはエクソシスト版『ダ・ヴィンチ・コード』だ」とあるように、歴史好き、ミステリー好きにも観ていただきたい作品です。

デート向き映画判定
映画『ヴァチカンのエクソシスト』

痛々しいシーンも出てくるので、苦手な方はいると思います。とはいえ、残虐さがウリのホラーではなく、実話ベースのストーリーであり、宗教史に深く関わりがある点で歴史が好きな方、知的好奇心が強い方には楽しめると思います。『ダ・ヴィンチ・コード』などが好きな方なら、試しに誘ってみてはどうでしょうか。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『ヴァチカンのエクソシスト』ラッセル・クロウ/ダニエル・ゾヴァット/アレックス・エッソー

見たまま怖いシーンも複数あり、憑依されるのが子どもという点でも、キッズにとってはだいぶ怖いと思います。背景がしっかりあるだけにストーリーもじっくり理解しながら観て欲しいので、ただ怖かったで終わるともったいない作品です。ホラーに免疫がついてから観るという選択もアリではないでしょうか。

映画『ヴァチカンのエクソシスト』ラッセル・クロウ

『ヴァチカンのエクソシスト』
2023年7月14日より全国公開
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚 映画に隠された恋愛哲学とヒント集80:おしどり夫婦こそ油断禁物!夫婦関係の壊れ方

どんなに仲が良く、相性の良さそうな2人でも、夫婦関係が壊れていく理由がわかる3作品を取り上げます。

映画『マルドロール/腐敗』アントニー・バジョン マルドロール/腐敗【レビュー】

国民を守るためにあるはずの組織が腐敗し機能不全となった様を描いた本作は、ベルギーで起き、1996年に発覚したマルク・デュトルー事件を基に…

映画『消滅世界』蒔田彩珠 消滅世界【レビュー】

ジェンダー、セックスのどちらにおいてもこれまでの常識を覆す価値観が浸透した世界を描いた本作は、村田沙耶香著の同名小説を原作として…

映画『ナイトフラワー』森田望智 森田望智【ギャラリー/出演作一覧】

1996年9月13日生まれ。神奈川県出身。

映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚 佐藤さんと佐藤さん【レビュー】

同じ佐藤という苗字のサチ(岸井ゆきの)とタモツ(宮沢氷魚)は、セリフにも出てくるように「結婚しても離婚しても佐藤」です…

映画『楓』福士蒼汰/福原遥 『楓』カバーアーティスト、十明による“楓”生歌唱付き&サプライズゲスト登壇!特別試写会 9組18名様プレゼント

映画『楓』カバーアーティスト、十明による“楓”生歌唱付き&サプライズゲスト登壇!特別試写会 9組18名様プレゼント

映画『兄を持ち運べるサイズに』柴咲コウ/オダギリジョー/満島ひかり/青山姫乃/味元耀大 兄を持ち運べるサイズに【レビュー】

原作は、村井理子が書いたノンフィクションエッセイ「兄の終い」…

映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ 『楓』旅からはじまるトラベルポーチ 3名様プレゼント

映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ 3名様プレゼント

映画『見はらし世代』井川遥 井川遥【ギャラリー/出演作一覧】

1976年6月29日生まれ。東京都出身。

映画『WEAPONS/ウェポンズ』 WEAPONS/ウェポンズ【レビュー】

ある町から突然17人の子どもが同時に行方不明になるところから始まる本作は、“IT/イット”“死霊館”シリーズなど、傑作ホラーを多数世に送り出してきた…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. 映画『マルドロール/腐敗』アントニー・バジョン
  2. 映画『消滅世界』蒔田彩珠
  3. 映画『佐藤さんと佐藤さん』岸井ゆきの/宮沢氷魚
  4. 映画『兄を持ち運べるサイズに』柴咲コウ/オダギリジョー/満島ひかり/青山姫乃/味元耀大
  5. 映画『WEAPONS/ウェポンズ』

PRESENT

  1. 映画『楓』福士蒼汰/福原遥
  2. 映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ
  3. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
PAGE TOP