REVIEW

Winter boy【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『Winter boy』ポール・キルシェ

REVIEW

同性愛者の17歳の青年リュカは、父を事故で亡くしたことをきっかけに、心の中で何かがプツッと切れてしまったような状況に陥ります。そんななか、兄のカンタンはリュカをパリの自宅に連れて行きます。そして、リュカはパリでの短期滞在中にさまざまな経験をし、成長していきます。
映画公式資料によると、本作はクリストフ・オレノ監督の自伝的な物語とのことです。主人公リュカは、無邪気さと自暴自棄の間にいるように見えて、そのつかみどころのなさがとてもリアルです。この点はオレノ監督による演出力と、主演のポール・キルシェの演技力の賜物だと思います。
リュカはあどけなさと親近感、危なっかしさが同居するキャラクターです。周囲から愛されていながらも、本人はどこか愛情に飢えているというか、自分が愛されているのか確信できずに不安に苛まれているようです。その思いが、父の死を機に吹き出します。彼の危なげな言動は、その不安な状況から抜け出すための手段なのかもしれません。
本作を観ると、改めて家族の死には大きなインパクトがあると実感します。その死は単純に悲しみをもたらすだけではなく、生前に解消できなかった思いに向かわせて、弱った心が追い打ちをかけるように苦しみを与えることもあります。そんななかリュカがもがきながらも前を向く姿はとても清々しく、最後には観ているこちらも心が救われる思いがします。

デート向き映画判定
映画『Winter boy』ポール・キルシェ/ヴァンサン・ラコスト/エルヴァン・ケポア・ファレ

最後は清々しいものの、テーマは重く、性描写が何度か出てくるので、手放しにデート向きとはいえません。ただ、いろいろな人達の思いやりを感じられるストーリーなので、観ていて優しい気持ちになれます。お互いの好みがわかっていて、映画デートをよくするカップルなら、デートで観るのもアリでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『Winter boy』ポール・キルシェ/ジュリエット・ビノシュ

アイデンティティができつつありながら、まだ自分とは何かという土台を探している真っ最中のティーンのお話なので、皆さんも身近な感覚で観られると思います。友達との関係、家族との関係、自分しか知らない新しい関係と、さまざまな人間関係が出てきます。親やきょうだいの手を離れて、自分で見る大人の世界はどのような世界か、シミュレーションしてみてください。ただし、R-15なので、15歳になってから観ましょう。

映画『Winter boy』ポール・キルシェ

『Winter boy』
2023年12月8日より全国順次公開
R-15+
セテラ・インターナショナル
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

© 2022 L.F.P・Les Films Pelléas・France 2 Cinéma・Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2023年12月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ 心理学から観る映画59:研究倫理に反する実験とその被害『エクスペリメント』『まったく同じ3人の他人』

『まったく同じ3人の他人』というドキュメンタリーを観ました。生き別れた三つ子が再会する感動のストーリーかと思いきや、驚愕の背景を知り、研究倫理について改めて考えさせられました。そこで今回は研究倫理をテーマとします。

映画『コンビニ・ウォーズ~バイトJK VS ミニナチ軍団~』ヴァネッサ・パラディ ヴァネッサ・パラディ【ギャラリー/出演作一覧】

1972年12月22日生まれ。フランス出身。

映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮 ブルーボーイ事件【レビュー】

高度成長期にあった1965年の東京では、街の浄化のため、警察はセックスワーカー達を厳しく取り締まっていました。ただ、セックスワーカーの中には性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けて女性的な体をした通称ブルーボーイが…

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人 君の顔では泣けない【レビュー】

高校1年生の夏、坂平陸(武市尚士)と水村まなみ(西川愛莉)はプールに一緒に落ちたことで体が入れ替わってしまいます。2人はすぐに元に戻ることができず15年を過ごし…

映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト スプリングスティーン 孤独のハイウェイ

物語の舞台は1982年。ブルース・スプリングスティーン(ジェレミー・アレン・ホワイト)は、名声を手に入れながらも、葛藤を抱えて…

映画『2つ目の窓』松田美由紀 松田美由紀【ギャラリー/出演作一覧】

1961年10月6日生まれ。東京都出身。

「第38回東京国際映画祭」クロージングセレモニー:受賞者 東京グランプリは『パレスチナ36』!第38回東京国際映画祭ハイライト

2025年10月27日(月)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕したアジア最大級の映画の祭典である第38回東京国際映画祭が、11月5日(水)に閉幕。今年も個性豊かな作品が多数出品され、さまざまなイベントが実施されました。以下に、第38回東京国際映画祭ハイライトをお届けします。

映画『平場の月』堺雅人/井川遥 平場の月【レビュー】

朝倉かすみ著の同名小説を実写化した本作は、『ハナミズキ』『花束みたいな恋をした』(2021年)などを手がけた土井裕泰が監督を務めて…

映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル ぼくらの居場所【レビュー】

カナダのトロント東部に位置するスカボローを舞台に、さまざまな背景を抱えた3組の親子の姿を…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画学ゼミ2025年11月募集用 AI時代における人間らしさの探求【映画学ゼミ第2回】参加者募集!

ネット化が進み、AIが普及しつつある現代社会で、人間らしさを実感できる映画鑑賞と人間にまつわる神秘を一緒に探求しませんか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  2. 映画学ゼミ2025年11月募集用
  3. 映画『おーい、応為』長澤まさみ

REVIEW

  1. 映画『ブルーボーイ事件』中川未悠/中村中/イズミ・セクシー/真田怜臣/六川裕/泰平史/錦戸亮
  2. 映画『君の顔では泣けない』芳根京子/髙橋海人
  3. 映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト
  4. 映画『平場の月』堺雅人/井川遥
  5. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル

PRESENT

  1. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP