REVIEW

ティル【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ティル』ダニエル・デッドワイラー/ジェイリン・ホール

REVIEW

1955年、アメリカ、ミシシッピ州のマネーで、アフリカ系アメリカ人の14歳の少年エメット・ティルが殺害された事件を映画化。当時母親とシカゴに住んでいたエメットは、夏休みに従兄弟が住むマネーへ1人で遊びに行きます。人種差別が一層酷い地域であるマネーでの“ルール”がまだわかっていないエメットは、悪気なく白人女性キャロライン・ブライアント(ヘイリー・ベネット)に口笛を吹いてしまいます。たったそれだけの行為で、彼はリンチの末、殺されてしまいます。エメットの母メイミーは息子の無惨な姿を見て、自身の身の安全も脅かされるなか、人種差別による理不尽な行為がまかり通る社会を相手に過酷な戦いに挑みます。
エメットが受けた仕打ちがあまりに酷く、衝撃を受けました。人種の違いだけでここまで酷いことを平気でできる神経は、同じ人間とは思えません。人種差別に年齢は関係ないとはいえ、14歳の子どもにさえこのような仕打ちをする犯人達の神経を疑います。ましてや彼等にも子どもがいることを思うと余計に理解不能です。本作に限らず、アメリカを舞台にした映画やドラマを観ていると、有色人種は白人に対して言動に注意する必要があるとされる場面をよく目にします。その状況自体がそもそもおかしいというのは置いておいたとして、気をつけていればどうにかなるという状況でもない事実を突きつける描写が本作にはあります。本作を観ると、本当に日常的に命の危険に晒されている実態を実感します。
劇中にはかなり衝撃的なシーンが出てきます。観ていると本当に辛くて涙が止まりませんでした。でも、このシーンはとても重要で、私達もこのシーンから目を背けてはいけないということに納得がいきます。この事件がきっかけで、“エメット・ティル反リンチ法”が2022年3月に成立しました。映画公式資料によるとこの法律は「人種差別に基づくリンチを連邦法の憎悪犯罪(ヘイトクライム)とする」法律とのことです。エメットの死後から67年もかかってからようやく成立したこと、逆に67年経った今でもこうした法律が必要である状況が続いていることを、私達は重く受けとめなければいけないと感じます。

デート向き映画判定
映画『ティル』ダニエル・デッドワイラー

とても重いテーマが描かれていて、観た後すぐに気持ちを切り替えるのは難しい方もいると思います。ただ、カップルとしてこういった社会問題をどう捉えるのか、自分達が当事者だったらどうするのか、一緒に観て感想を共有するのはとても有意義だと思います。初デートには少しハードルが高いかもしれませんが、何度か一緒に映画を観ている仲なら、デートで観るのもアリなのではないでしょうか。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『ティル』ダニエル・デッドワイラー/ジェイリン・ホール

エメットと同世代のティーンの皆さんにも観て欲しい作品です。こんなことがあってはならないけれど、世の中には自分達と全く倫理観が異なる人達がいます。そして、信じられないような差別や偏見をもとに、平気で人を傷つける人達がいます。たとえ日本であっても同じです。そうした事実を知っておいたほうが良いと思います。かなり衝撃的なシーンもある点は覚悟の上、観てみてください。

映画『ティル』ダニエル・デッドワイラー/ジェイリン・ホール

『ティル』
2023年12月15日より全国公開
PG-12
パルコ、ユニバーサル映画
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

© 2022 Orion Releasing LLC. All rights reserved.

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2023年11月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

Netflixシリーズ『イクサガミ』岡田准一 イクサガミ【レビュー】

今村翔吾著のベストセラー「イクサガミ」シリーズを原作とする本シリーズでは、岡田准一が主演、プロデューサー、アクションプランナー、藤井道人、山口健人、山本透が監督と脚本を担当…

映画『TOKYOタクシー』蒼井優 蒼井優【ギャラリー/出演作一覧】

1985年8月17日生まれ。福岡県出身。

映画『バーフバリ エピック4K』来日舞台挨拶イベント、プラバース、ショーブ・ヤーララガッダ(プロデューサー) プラバース、ショーブ・ヤーララガッダ来日!『バーフバリ エピック4K』には追加シーンも

2025年に劇場公開10周年を迎える大ヒット作『バーフバリ 伝説誕生』と『バーフバリ2 王の凱旋』を一つの作品として再編集し、壮大な物語を4K映像で体験できる『バーフバリ エピック4K』の日本公開を目前にして、バーフバリ役のプラバースと、プロデューサーのショーブ・ヤーララガッダが来日しました。

映画『楓』福士蒼汰/福原遥 楓【レビュー】

残酷過ぎて、切な過ぎて、優し過ぎて、どうしましょ(笑)。ネタバレを避けると、ほぼ何も書けませんが…

【東京コミコン2025】オープニング:イライジャ・ウッド、カール・アーバン、リー・トンプソン、トム・ウィルソン、クローディア・ウエルズ、ダニエル・ローガン、ジョン・バーンサル、クリスティーナ・リッチ、イヴァナ・リンチ、ノーマン・リーダス、ショーン・パトリック・フラナリー、ジャック・クエイド、マッツ・ミケルセン、浅野忠信、ピルウ・アスベック、セバスチャン・スタン、ジム・リー、C.B.セブルスキー、フランク・ミラー、クリストファー・ロイド、中丸雄一(MC)、伊織もえ(PR大使)、山本耕史(アンバサダー) 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』一行や人気アメコミ出演者達が勢揃い!【東京コミコン2025】オープニングセレモニー

年末恒例行事となった東京コミコンのオープニングセレモニーを取材してきました。今年は過去最高といえるのではないかという数のスター達が来日してくれました。

映画『ズートピア2』 ズートピア2【レビュー】

さまざまな動物達が人間と同じように暮らすズートピアを舞台にした本シリーズは…

映画『エディントンへようこそ』ホアキン・フェニックス/ペドロ・パスカル エディントンへようこそ【レビュー】

アリ・アスター監督とホアキン・フェニックスの2度目のタッグが実現した本作は、メディアの情報に翻弄される人々の様子を…

映画『愚か者の身分』林裕太 林裕太【ギャラリー/出演作一覧】

2000年11月2日生まれ。東京都出身。

映画『ペンギン・レッスン』スティーヴ・クーガン ペンギン・レッスン【レビュー】

『ペンギン・レッスン』というタイトルが醸し出す世界観、スティーヴ・クーガンやジョナサン・プライスといった名優がメインキャストに名を連ねていることからして…

映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』水上恒司/木戸大聖/八木莉可子/綱啓永/JUNON(BE:FIRST)/中沢元紀/曽田陵介/萩原護/髙橋里恩/山下幸輝/濱尾ノリタカ/上杉柊平 WIND BREAKER/ウィンドブレイカー【レビュー】

にいさとる作の同名漫画を原作とする本作は、不良グループが街を守るというユニークな設定…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. Netflixシリーズ『イクサガミ』岡田准一
  2. 映画『楓』福士蒼汰/福原遥
  3. 映画『ズートピア2』
  4. 映画『エディントンへようこそ』ホアキン・フェニックス/ペドロ・パスカル
  5. 映画『ペンギン・レッスン』スティーヴ・クーガン

PRESENT

  1. 映画『楓』福士蒼汰/福原遥
  2. 映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ
  3. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
PAGE TOP