REVIEW

復讐者たち【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『復讐者たち』アウグスト・ディール

この物語は史実を基に、ホロコーストを生き延びたユダヤ人達が1945年敗戦直後のドイツで秘かに企てていた恐ろしい復讐計画の行方を追ったものです。原題は“Plan A”。主人公のマックスは強制収容所で妻子と離ればなれになり、彼等の行方を追っていたなか難民キャンプに辿り着き、妻子がナチスに殺されたことを知ります。第二次世界大戦中、ナチス・ドイツは600万人のユダヤ人を虐殺し、生き残った多くのユダヤ人が家族や大事な人を失いました。そんななか、秘かに報復しようとしていた集団がいることを知ったマックスは仲間に入りたいと志願。でも、同じく復讐しようとする者は他にもいて、事態は思わぬ方向へ進んでいきます。
邦題が『復讐者たち』となっていますが、同じ復讐でもそれぞれにやり方や考え方が違っているところに通じています。マックスをはじめ、メインキャラクター達が復讐心に燃える一方で人間としての良心と葛藤する姿がとてもリアルで、観る側も彼等に共感しながら、その葛藤も一緒に味わえます。ストーリーの組み方、シーンの構成も見事で、“Plan A”という原題もラストで真相が明かされる際に一段とインパクトを放ちます。
そして「繰り返さない」という台詞が出てきますが、場面毎にこの言葉が表す意味が変化しているように感じる点にもぜひご注目ください。観ていて本当に辛い物語ですが、ラストにアッと驚く展開があります。史実ということでより説得力もあり、人間への絶望だけでなく希望を描いている点でとても救われます。誰かから酷い仕打ちを受けて、復讐心を拭えず苦しんでいる方は特に観て欲しいし、そうでない方もこれから生きていく上でヒントになることが得られると思うので、ぜひご覧ください。

デート向き映画判定
映画『復讐者たち』アウグスト・ディール/シルヴィア・フークス

重い内容なので初デートには不向きだと思いますが、観終わった後に語り甲斐がある作品なので、お互いの価値観、人間観を知るには一緒に観るのも良さそうです。あまり露骨には映りませんが、ホロコーストや報復のシーンは観ていて辛くなるので、そういったシーンが大丈夫かどうかは誘う時に予め確認したほうが良いでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『復讐者たち』アウグスト・ディール

平和な現代の日本に暮らす私達からすると、マックス達の壮絶な経験は縁遠いものと感じるかもしれませんが、最後の最後まで観ると今の私達にも通じる大切なことがメッセージとして込められていることがわかるでしょう。彼等ほどのことは起きなくても、生きていれば多少なりとも理不尽なことを経験したり、誰かに腹を立てることは出てきます。そんな悶々とした気持ち、怒りをどうすることが正しいのか、1つの答えをもらえます。

映画『復讐者たち』アウグスト・ディール

『復讐者たち』
2021年7月23日より全国公開
アルバトロス・フィルム
公式サイト

© 2020 Getaway Pictures GmbH & Jooyaa Film GmbH, UCM United Channels Movies, Phiphen Pictures, cine plus, Bayerischer Rundfunk, Sky, ARTE

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『けものがいる』レア・セドゥ 心理学から観る映画53:感情は有害か有用か

『けものがいる』と『シンシン/SING SING』は全く内容は異なるものの、感情の必要性について考えさせられるストーリー…

映画『秋が来るとき』エレーヌ・ヴァンサン/ジョジアーヌ・バラスコ 『秋が来るとき』特別一般試写会 10組20名様ご招待

映画『秋が来るとき』特別一般試写会 10組20名様ご招待

映画『#真相をお話しします』大森元貴/菊池風磨 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年4月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年4月】のアクセスランキングを発表!

映画『未完成の映画』チン・ハオ/マオ・シャオルイ 未完成の映画【レビュー】

物語の始まりは2019年。10年間、電源が入れられずにいたパソコンを起動し…

映画『アンジーのBARで逢いましょう』草笛光子 草笛光子【ギャラリー/出演作一覧】

1933年10月22日生まれ。神奈川県出身。

映画『サンダーボルツ*』フローレンス・ピュー/デヴィッド・ハーバー/セバスチャン・スタン/ワイアット・ラッセル/オルガ・キュリレンコ/ハナ・ジョン=カーメン/ジュリア・ルイス=ドレイファス サンダーボルツ*【レビュー】

こりゃ、おもしろい!いろいろ新鮮で…

映画『サンダーボルツ*』オリジナル ユニセックスクルーネック(M) 『サンダーボルツ*』オリジナル ユニセックスクルーネック(Mサイズ)2名様 プレゼント

映画『サンダーボルツ*』オリジナル ユニセックスクルーネック(Mサイズ)2名様 プレゼント

映画『ロザリー』ナディア・テレスキウィッツ ロザリー【レビュー】

自分で作った美しいドレスを身にまとったロザリー(ナディア・テレスキウィッツ)は、父(ギュスタヴ・ケルヴェン)に連れられて…

映画『マリリン・モンロー 私の愛しかた』マリリン・モンロー 『マリリン・モンロー 私の愛しかた』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『マリリン・モンロー 私の愛しかた』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『サスカッチ・サンセット』ジェシー・アイゼンバーグ/ライリー・キーオ 『サスカッチ・サンセット』先行試写会 10名様ご招待

映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』ジャパンプレミア試写会 5組10名様ご招待

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『プラダを着た悪魔』アン・ハサウェイ/メリル・ストリープ 元気が出るガールズムービーランキング【洋画編】

正式部員の皆さんに“元気が出るガールズムービー【洋画編】”をテーマに、好きな作品を選んでいただきました。果たしてどんな結果になったのでしょうか?

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『けものがいる』レア・セドゥ
  2. 映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス
  3. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性

REVIEW

  1. 映画『#真相をお話しします』大森元貴/菊池風磨
  2. 映画『未完成の映画』チン・ハオ/マオ・シャオルイ
  3. 映画『サンダーボルツ*』フローレンス・ピュー/デヴィッド・ハーバー/セバスチャン・スタン/ワイアット・ラッセル/オルガ・キュリレンコ/ハナ・ジョン=カーメン/ジュリア・ルイス=ドレイファス
  4. 映画『ロザリー』ナディア・テレスキウィッツ
  5. 映画『女神降臨 After プロポーズ編』Kōki,/渡邊圭祐/綱啓永

PRESENT

  1. 映画『秋が来るとき』エレーヌ・ヴァンサン/ジョジアーヌ・バラスコ
  2. 映画『サンダーボルツ*』オリジナル ユニセックスクルーネック(M)
  3. 映画『マリリン・モンロー 私の愛しかた』マリリン・モンロー
PAGE TOP