REVIEW

冬時間のパリ

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『冬時間のパリ』ジュリエット・ビノシュ

原題“Double Vies”は二重生活という意味で、ストーリーを直球でタイトルにしていますが、邦題は『冬時間のパリ』。“冬時間”とついている割には、そんなに冬をアピールした要素は感じないなと思ったら、“冬時間”って、夫婦の倦怠期、仕事の停滞期などを表現しているのかなというのが見えてきて、うまい喩えだなと思いました。本作は、時代の変化に伴う出版業界の移り変わりについての議論が活発にされている点でも興味を増しますが、同時に好きな小説、嫌いな小説の議論も出てきて、それが男女の腹の探り合いの場面にも巧妙に仕掛けられているのが印象的です。夫婦は秘密をもつべきでないのか、はたまた夫婦だからこそお互いに知らなくていいこともあるのかという議論は、長らく万国共通でありますが、登場する2組の夫婦の在り方を通して、その価値観の違いをリアルに表現しています。やっぱりオリヴィエ・アサイヤス監督の作品っておもしろいと感じた1作でしたが、ジュリエット・ビノシュ、ヴァンサン・マケーニュら俳優陣の演技も見事です。そして、短髪でシュッとした敏腕編集者を演じたギョーム・カネがめちゃカッコイイな見とれました(笑)。セリフもウィットに富んでいて、思わず笑ってしまう遊び心のあるシーンも見どころです。本が好きな人も、劇中の議論に参加したくなるはず。いろいろな魅力のある作品です。

デート向き映画判定
映画『冬時間のパリ』ジュリエット・ビノシュ/ギョーム・カネ

夫婦生活の亀裂と再生を描いていて、最後にはすがすがしい気持ちにはなりますが、似たような状況を経験した夫婦の場合は、心穏やかに観られないかも知れません(笑)。でも、夫婦だからこそ直感が働く部分と、夫婦だからこそ鈍感でいたい部分とが見えて、「だからこの夫婦はこうしてられるんだ」と思えるところもあります。なのでお互いの夫婦観を探るために、一緒に観て感想を言い合うのも良いでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『冬時間のパリ』ギョーム・カネ/パスカル・グレゴリー

大人の恋愛の複雑さ、好きか嫌いかだけではないものを、リアルに描いている作品です。若いうちはまだこういうややこしい状況を知らないほうが、これからの恋愛に純粋に取り組めるように思います。なので、何度か恋愛を体験してから本作のさまざまな恋愛関係を観たほうが、より共感できるし、自分自身の恋愛観を考える参考にできるでしょう。

映画『冬時間のパリ』ジュリエット・ビノシュ

『冬時間のパリ』
2019年12月20日より全国順次公開
トランスフォーマー
公式サイト

TEXT by Myson

©CG CINEMA / ARTE FRANCE CINEMA / VORTEX SUTRA / PLAYTIME

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『キャンドルスティック』阿部寛 キャンドルスティック【レビュー】

金融をテーマとした映画に、なぜ“『キャンドルスティック』というタイトルが…

映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット 映画好きが選んだDCコミックス映画ランキング

今回は正式部員の皆さんに好きなDCコミックス映画について投票していただきました。“スーパーマン”や“バットマン”など人気シリーズが多くあるなか、上位にはどんな作品がランクインしたのでしょう?

映画『夏の砂の上』オダギリジョー/髙石あかり/松たか子/満島ひかり 夏の砂の上【レビュー】

松田正隆による戯曲を映画化した本作は、演出家の玉田真也が監督、脚本を務め、オダギリジョーが…

映画『DROP/ドロップ』メーガン・フェイヒー DROP/ドロップ【レビュー】

主人公のバイオレット(メーガン・フェイヒー)は、幼い一人息子を育てるシングルマザーで、壮絶な過去を乗り越え…

映画『君がトクベツ』畑芽育 畑芽育【ギャラリー/出演作一覧】

2002年4月10日生まれ。東京都出身。

映画『この夏の星を見る』桜田ひより この夏の星を見る【レビュー】

2020年、新型コロナウィルス感染症が世界中に広まった1年目、私達の日常は大きく変わりました。本作では、その2020年に、長崎県、茨城県、東京都に住む中高生達が過ごした日々…

映画『国宝』吉沢亮/横浜流星 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年6月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年6月】のアクセスランキングを発表!

映画『ナチス第三の男』ジャック・オコンネル ジャック・オコンネル【ギャラリー/出演作一覧】

1990年8月1日生まれ。イギリス出身。

映画『ハルビン』ヒョンビン ハルビン【レビュー】

『KCIA 南山の部長たち』『インサイダーズ/内部者たち』のウ・ミンホが監督と、『ソウルの春』の制作スタッフとタッグを組んだ本作は…

映画『ハルビン』ジャパンプレミア:ヒョンビン、リリー・フランキー、ウ・ミンホ監督 リリー・フランキーがヒョンビンの優しさを感じたエピソードとは?『ハルビン』来日ジャパンプレミア

ヒョンビン主演のサスペンス・アクション映画『ハルビン』が、7月4日より全国公開となります。その公開を記念し、ヒョンビンとウ・ミンホ監督が来日し、さらに本作で伊藤博文役を演じたリリー・フランキーが登壇するジャパンプレミアが行われました。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『スーパーマン』デイビッド・コレンスウェット 映画好きが選んだDCコミックス映画ランキング

今回は正式部員の皆さんに好きなDCコミックス映画について投票していただきました。“スーパーマン”や“バットマン”など人気シリーズが多くあるなか、上位にはどんな作品がランクインしたのでしょう?

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』トム・クルーズ 映画好きが選んだトム・クルーズ人気作品ランキング

毎度さまざまな挑戦を続け、人気を博すハリウッドの大スター、トム・クルーズ。今回は、トム・クルーズ出演作品(日本劇場未公開作品を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

映画『シークレット・アイズ』キウェテル・イジョフォー/ジュリア・ロバーツ /ニコール・キッドマン 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.5

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『君がトクベツ』畑芽育/大橋和也
  2. 映画でSEL:告知1回目
  3. 映画『親友かよ』アンソニー・ブイサレートピシットポン・エークポンピシット

REVIEW

  1. 映画『キャンドルスティック』阿部寛
  2. 映画『夏の砂の上』オダギリジョー/髙石あかり/松たか子/満島ひかり
  3. 映画『DROP/ドロップ』メーガン・フェイヒー
  4. 映画『この夏の星を見る』桜田ひより
  5. 映画『国宝』吉沢亮/横浜流星

PRESENT

  1. 特製『平成狸合戦ぽんぽこ』ふんわりキーホルダー正吉
  2. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP