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ペナルティループ【レビュー】

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映画『ペナルティループ』若葉竜也

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『人数の町』で奇妙なディストピアを描いた荒木伸二監督の2作目となる本作は、恋人を殺された主人公がタイムループの中で犯人に何度も復讐しながら変化する様を描いています。正直タイムループ映画は山とあるので、どこまで工夫ができるのか少し懐疑的に観始めました。ところが、中盤から「おやおや本作は様子が違うぞ」となるんです。復讐とタイムループの組み合わせがこんな化学反応を生むとはお見事です。テーマが深い一方で、意外にもコミカルな展開があるのも本作の見どころです。そうした緩急のある展開も、復讐の不毛さを際立たせています。
本作からどんなメタファーを受け取るかは観る方それぞれだと思いつつ、個人的には復讐心がいかに人を呪縛するか、そして復讐する者、される者の関係は容易に切れないこと、復讐がいかに不毛であることを見せられた気がします。もちろん、大切な人を奪われたことを安易に許せというつもりはありません。ただ、復讐に溺れて苦しむのは自分自身であるのだと痛感させられます。さらに、タイムループを繰り返すなかで主人公がどんどん行動の目的や理由を見失っていく様子は、同じ毎日を繰り返すだけの日々を送ることへの警鐘にも思えます。タイムループ映画がお好きな方も、ちょっとお腹いっぱいだなと思う方も、ぜひご覧ください。

デート向き映画判定

映画『ペナルティループ』若葉竜也/伊勢谷友介

何度も殺すシーンが出てくるので、穏やかな気持ちでは観られないでしょう(苦笑)。ただ、恋人との出会いを振り返るシーンなどロマンチックな要素もあります。恋人を殺されて復讐するという設定だけ聞くとありきたりなストーリーに思えるかもしれませんが、それだけでは終わらない部分こそ本作の魅力なので、お互いにどんな感想を持ったかに興味が湧くと思います。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『ペナルティループ』若葉竜也

PG-12とはいえ、大人が一緒だとしてもさすがに小学生以下の皆さんには刺激が強いと思うので、せめて中学生になってから観るほうが良いのではないでしょうか。なぜタイムループが実現できるのかという疑問以外に、いろいろと謎が出てきます。ティーンの皆さんは、どんなカラクリがあるのかを考えながら観たり、もし自分が主人公だったらこのタイムループを経験するとどう変化するのかなど想像しながら楽しんでください。

映画『ペナルティループ』若葉竜也

『ペナルティループ』
2024年3月22日より全国公開
PG-12
キノフィルムズ
公式サイト

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© 2023『ペナルティループ』FILM PARTNERS

TEXT by Myson

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