REVIEW

コロニアの子供たち【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『コロニアの子供たち』

物語の舞台は1989年のチリにある“コロニア・ディグニダ”(現在名:ビシャ・バビエラ)。このコミュニティは元ナチス党員でキリスト教バプテスト派のパウル・シェーファーによって作られました。“コロニア・ディグニダ”については、Netflixでもドキュメンタリーシリーズ『コロニア・ディグニダ チリに隠された洗脳と拷問の楽園』が配信されています。Netflix上の同作についての情報によると、パウル・シェーファーは、第二次世界大戦後にドイツで青年の家を作り性的虐待で訴えられ、チリへ逃れて、“コロニア・ディグニダ”を創設したとあります。
話を本作に戻します。本作の主人公は12歳の少年パブロ。彼は奨学生として“コロニア・ディグニダ(以下、コロニア)”に迎え入れられます。一見、楽園のように見えるこの場所がまさか恐ろしい場所だとは知らず、パブロは好奇心満々です。一方、コロニアにいる他の少年や大人達はコソコソ、オドオドしています。そして、不可解な状況をいくつも目にしたパブロはコミュニティの中をいろいろ探っていきます。
本作は実話をベースにしています。“コロニア・ディグニダ”(現在名:ビシャ・バビエラ)を検索すれば、このコミュニティがどんなところかわかります。本作の劇中では露骨な描写はないものの、パウルによる支配がいかに徹底されていたかが伝わってきます。さらに恐ろしいのは、表向きに楽園のようなコミュニティだと思われているため、騙されて入所してしまう人がいることです。パブロもその1人といえます。また、この場所がどれくらい物理的に閉鎖されているのかは映画を観るだけではわかりませんが、どんなに虐げられても逃げようとする人がわずかなことです。そこにも、精神的な支配の恐ろしさが見えます。カルト宗教、グルーミングによる性虐待と、昨今の日本でも問題となっているテーマが取り上げられています。関心のある方は観てみてはいかがでしょうか。

デート向き映画判定
映画『コロニアの子供たち』

露骨な描写がないとはいえ、テーマが重いので、デートでには向いていないでしょう。虐げられるカップルも出てくるので、胸が痛むと思います。一方、お子さんがいらっしゃる方も心穏やかには観られないとは思いますが、注意喚起の意味で観てみるのもアリでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『コロニアの子供たち』ハンス・ジシュラー

子どものうちは特に、甘い言葉に釣られてしまうこともあるでしょう。一見悪く見えない人、組織もあるので、注意が必要です。本作を観て、こういう現実もあるのだということを知っておくと、普段から自分の身を守るために少し警戒心を持てそうです。

映画『コロニアの子供たち』

『コロニアの子供たち』
2023年6月9日より全国公開
シノニム、エクストリーム
公式サイト

© 2021 Quijote Films – Rampante Films – Mandra Films – Klinkerfilm – Autocroma – Septima films


関連作:“コロニア・ディグニダ”にまつわる物語

『コロニア』

ブルーレイ&DVDレンタル・発売中/デジタル配信中
Amazon Prime Videoで観る U-NEXT

TEXT by Myson

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『悪い夏』北村匠海 悪い夏【レビュー】

REVIEW染井為人著の原作小説は、「クズとワルしか出てこない」と話題を呼び、第37回横溝…

映画『女神降臨 Before 高校デビュー編』Kōki,/渡邊圭祐/綱啓永 女神降臨 Before 高校デビュー編【レビュー】

本作は、縦スクロール形式のデジタルコミック“webtoon”で人気を博したyaongyi(ヤオンイ)作の同名コミックを原作としています…

映画『教皇選挙』レイフ・ファインズ 教皇選挙【レビュー】

圧倒されっぱなしの120分でした。教皇に“ふさわしい”人間の境界線をテーマに、神に仕える聖職者達の言動、ひいては人格を通して…

映画『ディックス!! ザ・ミュージカル』ボーウェン・ヤン ボーウェン・ヤン【ギャラリー/出演作一覧】

1990年11月6日生まれ。オーストラリア出身。

ディズニープラス『スパイダーマン:フレンドリー・ネイバーフッド』 スパイダーマン:フレンドリー・ネイバーフッド【レビュー】

本シリーズは馴染み深い要素をベースにしながら、新しい設定が…

映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬 少年と犬【レビュー】

直木賞を受賞した、馳星周著の小説「少年と犬」は、『ラーゲより愛を込めて』を手掛けた平野隆プロデューサーと脚本家の林民夫、瀬々敬久監督により映画化…

映画『ガール・ウィズ・ニードル』ヴィク・カーメン 『ガール・ウィズ・ニードル』監督オンライン登壇!トークイベント付き試写会 10組20名様ご招待

映画『ガール・ウィズ・ニードル』監督オンライン登壇!トークイベント付き試写会 10組20名様ご招待

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『Broken Rage』ビートたけし Broken Rage【レビュー】

北野武監督作で殺し屋が主人公のストーリーなので、激しいバイオレンス映画かと思いながら観ていたら、途中から…

映画『私の親愛なるフーバオ』 『私の親愛なるフーバオ』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『私の親愛なるフーバオ』一般試写会 10組20名様ご招待

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『風たちの学校』
  2. 【映画でSEL】海辺の朝日に向かって手を広げる女性の後ろ姿
  3. 映画『ワンダー 君は太陽』ジュリア・ロバーツ/ジェイコブ・トレンブレイ

REVIEW

  1. 映画『悪い夏』北村匠海
  2. 映画『女神降臨 Before 高校デビュー編』Kōki,/渡邊圭祐/綱啓永
  3. 映画『教皇選挙』レイフ・ファインズ
  4. ディズニープラス『スパイダーマン:フレンドリー・ネイバーフッド』
  5. 映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬

PRESENT

  1. 映画『ガール・ウィズ・ニードル』ヴィク・カーメン
  2. 映画『私の親愛なるフーバオ』
  3. 映画『デュオ 1/2のピアニスト』カミーユ・ラザ/メラニー・ロベール
PAGE TOP