REVIEW

型破りな教室【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『型破りな教室』エウヘニオ・デルベス

REVIEW

アメリカとの国境近く、メキシコの治安の悪い地域にある小学校で2011年に実際に起きた出来事を映画化した本作の発端は、雑誌「WIRED」(2013年10月号)に掲載されていた1つの記事だったといいます(映画公式資料)。

映画『型破りな教室』エウヘニオ・デルベス

この記事の内容は、本作の結末に関わるのでここでは伏せておくとして、本作の主人公、教師のセルヒオ・フアレス・コレアは5年間、政府が定めた通りのカリキュラムで授業を行っていたものの、自分も生徒も退屈で何かを変える必要性を感じていたそうです。そうした思いがあったことは本作のシーンでも描かれています。

映画『型破りな教室』

映画公式資料をもとに、映画に描かれていない背景を少し補足しておくと、フアレスは子ども達の心に届かない状況から神経衰弱に陥った際、無料動画配信のTED(テッド)で、スガタ・ミトラによる新しい子ども向けの学習方法に出会い、それを実践することに決めたそうです。本作ではその学習方法を取り入れた“型破りな”授業の内容と、子ども達がみるみる輝いていく様子が映し出されています。

映画『型破りな教室』エウヘニオ・デルベス

本作で、フアレス(エウヘニオ・デルベス)は、学力が国内最低レベルの小学校に新たに就任し、そこでカリキュラムに縛られない授業を始めます。他の教師は保身に徹するなか、フアレスは子ども達に本当に必要な学びを体験させようと、さまざまな方法を試します。始めは戸惑っていた子ども達も徐々に興味を持ち始め、どんどん好奇心を発揮していきます。一方で、子ども達は明日生きていくのも困難な生活の真っ只中にいます。本作には、可能性が無限大でありながら、厳しい現実にさわされた子ども達とフアレスが葛藤し、奮闘する様子が描かれています。

映画『型破りな教室』

突然ですが、皆さんは、EQという言葉をご存じでしょうか。ダニエル・ゴールマンの「EQ: こころの知能指数」(1996)は、EQという言葉に一気に関心を集め、読んだ方もいらっしゃると思います。EQは、人間が生きていく上で欠かせない、いいかえると幸せになるのに欠かせない能力であるにもかかわらず、社会的には万国共通IQのほうが重視されてきました。フアレスの授業と子ども達の成長は、まさにそれを実証した例といえます。

映画『型破りな教室』

本作では、不遇な環境で暮らしていることで埋もれてしまった才能ある子ども達に希望があることを示すストーリーです。もちろん、当然のように勉強できる環境にある子ども達にとっても、自分や周囲が考えている以上に「自分には可能性がある」「やればできる」と思わせてくれるストーリーです。とにかく観てもらうのが1番伝わると思うので、ぜひ多くの方に観て欲しいし、特に大人が観るべきであると感じます。

デート向き映画判定

映画『型破りな教室』エウヘニオ・デルベス

本作では初々しい恋愛模様が映り、そこでもフアレス先生の気の利いたアドバイスがあります。全般的に人生観を問う内容になっているので、ぜひパートナーと観て、語り合ってください。本作を観た相手の感想にあまり共感できないなら、これからの人生で価値観が合わずに悶々とするかもしれません。相手との相性を占う参考に一緒に観るのもアリでしょう。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『型破りな教室』

皆さんはどこか義務的に勉強をしている感覚があるかもしれません。何のために勉強しなければいけないのか疑問に感じたことは誰にでもあると思います。本当はそこをちゃんと突き詰めて、自分なりの目的をつかんだ上で勉強ではなく、学びに取り組むほうが人生の役に立つと、本作を観ると感じられるはずです。自分の先生にフアレスのようになってもらうのは難しいとしても、自分で学ぶことはできます。将来の夢を自分で見つけて、自分の力で実現したいなら、ぜひ本作を観てください。

映画『型破りな教室』エウヘニオ・デルベス

『型破りな教室』
2024年12月20日より全国順次公開
PG-12
アット エンタテインメント
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

©Pantelion 2.0, LLC

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年12月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『THE MONKEY/ザ・モンキー』クリスチャン・コンヴェリー THE MONKEY/ザ・モンキー【レビュー】

怖いはずなのにどこか可笑しい絶妙なバランスの本作は、スティーヴン・キングの短編を原作としています…

映画『戦争と女の顔』ヴィクトリア・ミロシニチェンコ ヴィクトリア・ミロシニチェンコ【ギャラリー/出演作一覧】

1994年5月17日生まれ。ロシア出身。

映画『ファンファーレ!ふたつの音』エマニュエル・クールコル監督インタビュー 『ファンファーレ!ふたつの音』エマニュエル・クールコル監督インタビュー

フランスで3週連続NO.1(仏映画興収/実写映画において)を獲得し、260万人動員の大ヒットを記録した話題作『ファンファーレ!ふたつの音』。今回は本作のエマニュエル・クールコル監督にインタビューさせていただきました。

映画『ひゃくえむ。』 ひゃくえむ。【レビュー】

魚豊著の『チ。 ―地球の運動について―』がすごく好きなので、絶対に本作も…

映画『お嬢と番犬くん』櫻井海音 櫻井海音【ギャラリー/出演作一覧】

2001年4月13日生まれ。東京都出身。

映画『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』ビル・スカルスガルド ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝【レビュー】

実に楽しい!良い意味で「なんじゃこりゃ?」というハチャメチャなノリなのに…

ポッドキャスト:トーキョー女子映画部チャンネルアイキャッチ202509 ポッドキャスト【トーキョー女子映画部チャンネル】お悩み相談「どうしたらいい出会いがありますか?」他

今回は、正式部員の皆さんからいただいたお悩み相談の中から、下記のお2人のお悩みをピックアップして、マイソンなりにお答えしています。最後にチラッと映画の紹介もしています。

映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ ザ・ザ・コルダのフェニキア計画【レビュー】

REVIEWこれぞウェス・アンダーソン監督作という、何から何までかわいい世界観でありながら…

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

映画『こんな事があった』前田旺志郎/窪塚愛流 こんな事があった【レビュー】

2021年夏の福島を舞台に、主人公の17歳の青年のほか、震災後も苦悩しながら生きる人々の姿を…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 この映画で問いかけたい「宝」とは…大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート後編

前回に引き続き今回は映画『宝島』の部活リポートをお届けします。後編では、事前に正式部員の方々にお答えいただいたアンケート結果について議論しました。今回も熱いトークが繰り広げられています!

映画『宝島』部活:座談会/大友啓史監督 ファストムービー時代の真逆を行こうと覚悟を決めた!大友啓史監督と語ろう『宝島』部活リポート前編

『るろうに剣心』シリーズ、『レジェンド&バタフライ』などを手掛けた大友啓史監督が<沖縄がアメリカだった時代>を描いた映画『宝島』。今回、当部の部活史上初めて監督ご本人にご参加いただき、映画好きの皆さんと一緒に本作について語っていただきました。

映画『宝島』妻夫木聡/広瀬すず/窪田正孝 沖縄がアメリカ統治下だったことについてどう思う?『宝島』アンケート特集

【大友啓史監督 × 妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太】のタッグにより、混沌とした時代を自由を求めて全力で駆け抜けた若者達の姿を描く『宝島』が9月19日より劇場公開されます。この度トーキョー女子映画部では、『宝島』を応援すべく、正式部員の皆さんに同作にちなんだアンケートを実施しました。

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『ふつうの子ども』嶋田鉄太/瑠璃
  2. 映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダー
  3. 映画『バーバラと心の巨人』マディソン・ウルフ

REVIEW

  1. 映画『THE MONKEY/ザ・モンキー』クリスチャン・コンヴェリー
  2. 映画『ひゃくえむ。』
  3. 映画『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』ビル・スカルスガルド
  4. 映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ
  5. 映画『こんな事があった』前田旺志郎/窪塚愛流

PRESENT

  1. 映画『ホーリー・カウ』クレマン・ファヴォー
  2. 映画『ぼくらの居場所』リアム・ディアス/エッセンス・フォックス/アンナ・クレア・ベイテル
  3. 映画『ミーツ・ザ・ワールド』杉咲花/南琴奈/板垣李光人
PAGE TOP