REVIEW

この世の果て、数多の終焉

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『この世の果て、数多の終焉』ギャスパー・ウリエル

1945年3月、フランス兵のロベールは、フランス領インドシナで、それまでフランス軍と協力関係にあった日本軍によるクーデターで一斉攻撃に遭いましたが、現地の住民に助けられ生き延びます。彼は再び軍に戻りますが、彼の頭の中は、兄夫婦の殺害に関与したベトナム解放軍の将校ヴォー・ビン・イェンへの復讐心でいっぱい。本作はそんなロベールが、指令や軍規を無視して、復讐を遂げようとしながらも、現地で一人の女性に恋心を抱き、どう生きるのか葛藤する姿を映し出しています。現地の状況はとても複雑で、フランス領になっていることに反発するベトナム解放軍もいれば、食べ物に困りフランス軍に簡単に寝返る者もいます。なのである意味誰が味方で誰が敵かもわからない状態です。そんななか、ベトナム解放軍はものすごくむごいやり方で虐殺を繰り返したり、村の女性を犯したり、蛮行を繰り返していくのですが、ロベールの兄達の最期も彼が言葉で表すだけでいかに狂気的な行いがなされたかが伝わってきます。でも、自分の身の危険を顧みず、復讐することだけを願ってきたロベールは、マイと出会ったことで彼女への愛情と、ヴォー・ビン・イェンへの復讐で葛藤します。ロベールがどんな決断をするかは本編をご覧頂ければと思いますが、なかなか姿を現さないヴォー・ビン・イェンへの執着のために、ロベールの仲間が犠牲になったり、ロベール自身も人生を台無しにしようとしている姿を観ていると、何のための彼等はそこにいるのかと考えずにはいられません。なぜあんなにひどいことができるのかと目を疑うシーンが数々出てきますが、戦争はそれほど人を狂わせるということがわかります。観終わった後は何とも言えない感覚に陥りますが、それでもこういった状況があったことは、私達が知っておかなくてはいけないことなのだと思います。

デート向き映画判定
映画『この世の果て、数多の終焉』ギャスパー・ウリエル/ラン=ケー・トラン

性描写もあり、惨殺なシーンも多くあるので、デートには向いていません。ラブストーリーがキーポイントになっていますが、狂気に満ちた環境下でのことなので、ロマンチックな雰囲気で観るというよりは、彼等の苦悩に共感しながら観るといった感じになると思います。いろいろな映画を一緒に観慣れているカップルなら大丈夫かも知れませんが、初デートや交際がまだ浅いカップルにはあまりオススメできません。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『この世の果て、数多の終焉』ギャスパー・ウリエル/ギョーム・グイ

R-18なので、18歳未満の人は観られません。かなりむごい殺され方をした死体が映ったり、18歳以上であっても、映画を観慣れていないとショッキングなので、覚悟して観てください。歴史的背景に詳しくなくても、劇中の説明でついていけると思いますが、フランス軍を受け容れているベトナム人と、抵抗しているベトナム人とがいたり、ベトナム解放軍に対する現地の人の捉え方もさまざまなので、その辺は集中して観て理解してください。

映画『この世の果て、数多の終焉』ギャスパー・ウリエル

『この世の果て、数多の終焉』
2020年8月15日より全国順次公開
R-18+
キノフィルムズ、木下グループ
公式サイト

© 2017 Les films du Worso-Les Armateurs-Orange Studio-Score Pictures-Rectangle Productions-Arena Films-Arches Films-Cinéfeel 1- Same Player- Pan Européenne- Move Movie- Ce Qui Me Meut

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『悪い夏』北村匠海 『悪い夏』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『悪い夏』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『ゆきてかへらぬ』広瀬すず/木戸大聖/岡田将生 ゆきてかへらぬ【レビュー】

鈴木清順監督の大正浪漫三部作といわれる『ツィゴイネルワイゼン』『陽炎座』『夢二』や、相米慎二監督の『セーラー服と機関銃』などを手掛けた名脚本家、田中陽造のオリジナル脚本『ゆきてかへらぬ』は…

映画『奇麗な、悪』瀧内公美 奇麗な、悪【レビュー】

中村文則による原作「火」を映画化した本作は…

映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』アンソニー・マッキー キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド【レビュー】

ファルコンことサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)は、元祖キャプテン・アメリカのスティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)から盾を託され…

映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』 ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-【レビュー】

2017年9月に始動した音楽原作キャラクターラッププロジェクト“ヒプノシスマイク”は…

映画『ファーストキス 1ST KISS』松たか子 松たか子【ギャラリー/出演作一覧】

1977年6月10日生まれ。東京都出身。

映画『ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻』アリシア・ヴィキャンデル/ジュード・ロウ ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻【レビュー】

REVIEW政治的手腕を発揮しながらも、暴君としてイギリス史に悪名を刻んだヘンリー8世には…

映画『聖なるイチジクの種』ソヘイラ・ゴレスターニ/マフサ・ロスタミ/セターレ・マレキ 聖なるイチジクの種【レビュー】

REVIEWイランでは2022年に、ある若い女性がヒジャブ(髪の毛を覆う布)を付けておらず…

映画『コメント部隊』ソン・ソック コメント部隊【レビュー】

情報社会になった現代、大きな組織による世論操作が行われているのではないかと…

映画『リアル・ペイン〜心の旅〜』キーラン・カルキン キーラン・カルキン【ギャラリー/出演作一覧】

1982年9月30日生まれ。アメリカ出身。

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』トム・ホランド/ゼンデイヤ 映画好きが選ぶマーベル映画ランキング

2025年もマーベルシリーズ最新作が公開されます。そこでこれまでのマーベルシリーズも合わせて盛り上げたいということで、ランキングを実施しました。

映画『ベルヴィル・ランデブー』 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.3

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダーほか トーキョー女子映画部が選ぶ 2024年ベスト10&イイ俳優MVP

毎年恒例のこの企画では、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

REVIEW

  1. 映画『ゆきてかへらぬ』広瀬すず/木戸大聖/岡田将生
  2. 映画『奇麗な、悪』瀧内公美
  3. 映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』アンソニー・マッキー
  4. 映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』
  5. 映画『ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻』アリシア・ヴィキャンデル/ジュード・ロウ

PRESENT

  1. 映画『悪い夏』北村匠海
  2. 映画『ロングレッグス』マイカ・モンロー
  3. 映画『TATAMI』アリエンヌ・マンディ
PAGE TOP