REVIEW

教皇選挙【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『教皇選挙』レイフ・ファインズ

REVIEW

圧倒されっぱなしの120分でした。教皇に“ふさわしい”人間の境界線をテーマに、神に仕える聖職者達の言動、ひいては人格を通して、社会の諸問題の是非を問う内容です。本作は、ロバート・ハリス著「CONCLAVE」を原作として、ハリス自身が本作の製作も務め、『西部戦線異状なし』(2022年 Netflix)を手掛けたエドワード・ベルガーが監督及び製作総指揮、『裏切りのサーカス』(2011年)を手掛けたピーター・スローハンが脚本と製作総指揮を務め、映画化されました。

映画『教皇選挙』レイフ・ファインズ

キリスト教最大の教派、カトリック教会の最高指導者であるローマ教皇が死去し、バチカン市国では次のローマ教皇を選出すべく、首席枢機卿のトマス・ローレンス(レイフ・ファインズ)が教皇選挙(コンクラーベ)を執り仕切ります。そして、世界各国から集まった100人を超える候補者達が、システィーナ礼拝堂に隔離され選挙に参加。選挙が進むなか、ローレンス枢機卿は野心をみなぎらせる有力候補者それぞれの教皇にふさわしくない側面を目の当たりにし、究極の選択を何度も迫られます。

映画『教皇選挙』ジョン・リスゴー

枢機卿も人間なので、誰もが清廉潔白というわけではない点は理解できるとして、それでもやっぱり信徒が10億人(調査時点によって12億人とも14億人ともいわれます)を超えるカトリック教会のトップに立つ人間として考えると、その影響力の大きさから人間性を問わずにはいられません。信者ではない部外者にとっても、誰が教皇になるのかは重要です。

映画『教皇選挙』イザベラ・ロッセリーニ

本作では、教皇になるための裏工作の疑惑や、人種差別、LGBTQ、性差別に関する思想、宗教観、キリスト教の伝統などが議論にあがります。どれも重要な論点であり、選挙の結果が枢機卿達の倫理観、道徳観の表れだと捉えられます。つまり、選ばれた教皇だけではなく、投票した側の枢機卿一人ひとりの資質も浮き彫りになるわけで、この人達に任せて大丈夫なのかと、観ていてハラハラドキドキさせられます。

映画『教皇選挙』レイフ・ファインズ

そして、結末が何とも見事です。ある意味でとても辛辣で、この先避けては通れない課題をカトリック教会に突きつけた挑戦的な結末といえるでしょう。
こうした問題提起や、ローレンス枢機卿の演説など、心に留めておきたい事柄が複数ある本作は、何度も丁寧に観返したい秀作です。

デート向き映画判定

映画『教皇選挙』レイフ・ファインズ/スタンリー・トゥッチ

テーマが深く、緊張感が続く展開から目が離せないので、隣りにいる人の存在を忘れてしまうほど、没頭させられると思います。なので1人でじっくり観るのがオススメだと思いつつ、観終わった後に議論したくなる内容である点で、社会派作品を好きなカップルならデートで観るのもアリだと思います。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『教皇選挙』スタンリー・トゥッチ

社会問題を扱ったテーマであり、教皇選挙そのものが興味深いので、社会見学のつもりで観るのも良いでしょう。教皇選挙の執り行われ方には儀式も多く含まれていて、文化的行事としても観察のし甲斐があります。そして、教皇選挙における生々しい駆け引きを観ると、皆さんの聖職者のイメージにも刺激をもたらすかもしれません。

映画『教皇選挙』レイフ・ファインズ

『教皇選挙』
2025年3月20日より全国公開
キノフィルムズ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら
映画館での鑑賞にU-NEXTポイントが使えます!無料トライアル期間に使えるポイントも

© 2024 Conclave Distribution, LLC.

TEXT by Myson


関連作:教皇選挙(コンクラーベ)/ローマ教皇、ローマ法王

『ローマ法王の休日』
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定  映画を処方4/【壊れた私】の修理法1
Amazonプライムビデオで観る AmazonでDVDを購入する

『2人のローマ教皇』
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定
Netflixで観る

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2025年3月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ツーリストファミリー』シャシクマール/シムラン/ミドゥン・ジェイ・シャンカル/カマレーシュ・ジャガン/ヨーギ・バーブ 『ツーリストファミリー』特別試写会 10組20名様ご招待

映画『ツーリストファミリー』特別試写会 10組20名様ご招待

Netflixシリーズ『イクサガミ』岡田准一 イクサガミ【レビュー】

今村翔吾著のベストセラー「イクサガミ」シリーズを原作とする本シリーズでは、岡田准一が主演、プロデューサー、アクションプランナー、藤井道人、山口健人、山本透が監督と脚本を担当…

映画『TOKYOタクシー』蒼井優 蒼井優【ギャラリー/出演作一覧】

1985年8月17日生まれ。福岡県出身。

映画『バーフバリ エピック4K』来日舞台挨拶イベント、プラバース、ショーブ・ヤーララガッダ(プロデューサー) プラバース、ショーブ・ヤーララガッダ来日!『バーフバリ エピック4K』には追加シーンも

2025年に劇場公開10周年を迎える大ヒット作『バーフバリ 伝説誕生』と『バーフバリ2 王の凱旋』を一つの作品として再編集し、壮大な物語を4K映像で体験できる『バーフバリ エピック4K』の日本公開を目前にして、バーフバリ役のプラバースと、プロデューサーのショーブ・ヤーララガッダが来日しました。

映画『楓』福士蒼汰/福原遥 楓【レビュー】

残酷過ぎて、切な過ぎて、優し過ぎて、どうしましょ(笑)。ネタバレを避けると、ほぼ何も書けませんが…

【東京コミコン2025】オープニング:イライジャ・ウッド、カール・アーバン、リー・トンプソン、トム・ウィルソン、クローディア・ウエルズ、ダニエル・ローガン、ジョン・バーンサル、クリスティーナ・リッチ、イヴァナ・リンチ、ノーマン・リーダス、ショーン・パトリック・フラナリー、ジャック・クエイド、マッツ・ミケルセン、浅野忠信、ピルウ・アスベック、セバスチャン・スタン、ジム・リー、C.B.セブルスキー、フランク・ミラー、クリストファー・ロイド、中丸雄一(MC)、伊織もえ(PR大使)、山本耕史(アンバサダー) 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』一行や人気アメコミ出演者達が勢揃い!【東京コミコン2025】オープニングセレモニー

年末恒例行事となった東京コミコンのオープニングセレモニーを取材してきました。今年は過去最高といえるのではないかという数のスター達が来日してくれました。

映画『ズートピア2』 ズートピア2【レビュー】

さまざまな動物達が人間と同じように暮らすズートピアを舞台にした本シリーズは…

映画『エディントンへようこそ』ホアキン・フェニックス/ペドロ・パスカル エディントンへようこそ【レビュー】

アリ・アスター監督とホアキン・フェニックスの2度目のタッグが実現した本作は、メディアの情報に翻弄される人々の様子を…

映画『愚か者の身分』林裕太 林裕太【ギャラリー/出演作一覧】

2000年11月2日生まれ。東京都出身。

映画『ペンギン・レッスン』スティーヴ・クーガン ペンギン・レッスン【レビュー】

『ペンギン・レッスン』というタイトルが醸し出す世界観、スティーヴ・クーガンやジョナサン・プライスといった名優がメインキャストに名を連ねていることからして…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. Netflixシリーズ『イクサガミ』岡田准一
  2. 映画『楓』福士蒼汰/福原遥
  3. 映画『ズートピア2』
  4. 映画『エディントンへようこそ』ホアキン・フェニックス/ペドロ・パスカル
  5. 映画『ペンギン・レッスン』スティーヴ・クーガン

PRESENT

  1. 映画『ツーリストファミリー』シャシクマール/シムラン/ミドゥン・ジェイ・シャンカル/カマレーシュ・ジャガン/ヨーギ・バーブ
  2. 映画『楓』旅からはじまるトラベルポーチ
  3. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
PAGE TOP