REVIEW

さがす【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『さがす』佐藤二朗

想像以上にいろんな意味でねじれにねじれていて、人間という生き物の複雑さと愚かさが見事に描かれたストーリーです。大阪の下町に住む中年男、原田智(佐藤二朗)とその娘で中学生の楓(伊東蒼)は2人暮らし。智は妻を亡くしてから自堕落な日々を送っていて、楓が智の面倒を見ているような親子が逆転した状況にあります。そんなある日、「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」と言っていた智は急に姿を消してしまいます。そこから楓は必死に父を探します。
楓は父を探し、父は恐らく連続殺人犯を捜しているのだろうと思いながら観るのですが、ここに想像を超える複雑なカラクリが隠れていて、そのカラクリが明かされていくほどにいろいろな人間の裏側、本性が露わにされ、この物語にどんどん引き込まれていきます。また、ここがクライマックスかと思わせておきながら、その後にさらに重要な展開が待っていて、そこには深い親子愛と温かさが感じられます。
そして、何といってもキャスト陣の演技が見もの。主演の佐藤二朗はコメディ作品でよく観るという方が多いかもしれませんが、シリアスな本作では違った顔が見られます。清水尋也もミステリアスで危ない男を見事に演じていて、その狂気にゾッとさせられます。伊東蒼が演じた楓は物語の軸となっていて、いろいろな感情が渦巻く難しい役どころだったと思いますが、堂々たる演技が印象的です。喩えようのないブラックユーモアと狂気が描かれた本作は、きっと映画好きの皆さんに気に入ってもらえるはずです。

デート向き映画判定
映画『さがす』伊東蒼/清水尋也

連続殺人という要素が含まれているので、それなりにおぞましいシーンが出てきます。なのでデートで観るにはちょっと向いていないでしょう。ただ、大切な人の思いをどう受けとめるか、その思いが自分の望むものでない場合にどうすべきかといったことを考えさせられるので、ベテランカップルや夫婦は一緒に観ると、語り合いがあるネタが得られるのではないでしょうか。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『さがす』伊東蒼/石井正太朗

お母さんが亡くなってお父さんしか頼る人がいないのに、お父さんまでいなくなってしまう…。物語の軸となる楓はそんな状況に陥りますが、彼女はまだ中学生なので皆さんも身近な感覚で観られると思います。ただ、PG-12となっているように、刺激が強いシーンや理解するのに助言が必要なところがあるので、小学生が観る場合は大人と一緒に観てください。ただ今無理に観るよりは、内容的に中学生以上になってから観るほうが良さそうです。

映画『さがす』佐藤二朗/伊東蒼/清水尋也

『さがす』
2022年1月21日より全国公開
PG-12
アスミック・エース
公式サイト

©2022『さがす』製作委員会

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『レイブンズ』瀧内公美さんインタビュー 『レイブンズ』瀧内公美さんインタビュー

写真家、深瀬昌久の78年に渡る波瀾万丈の人生を、実話とフィクションを織り交ぜて描いた映画『レイブンズ』。今回は本作で、深瀬昌久の最愛の妻であり被写体でもあった洋子役を演じた瀧内公美さんにインタビューさせていただきました。

映画『ミッキー17』ロバート・パティンソン ミッキー17【レビュー】

『パラサイト 半地下の家族』で第92回アカデミー賞(作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞)を受賞したポン・ジュノ監督(脚本、製作を兼務)が、この度制作したハリウッド映画は…

映画『ANORA アノーラ』マイキー・マディソン マイキー・マディソン【ギャラリー/出演作一覧】

1999年3月25日生まれ。アメリカ出身。

映画『BAUS 映画から船出した映画館』染谷将太 BAUS 映画から船出した映画館【レビュー】

2014年、東京都、吉祥寺の映画館“バウスシアター”が閉館となりました。本作は、この映画館を親の代から運営してきた本田拓夫著…

映画『白雪姫』レイチェル・ゼグラー 白雪姫【レビュー】

1937年に製作されたディズニーの『白雪姫』は、世界初のカラー長編アニメーションであり、ウォルト・ディズニー・スタジオの原点とされています…

映画『ニンジャバットマン対ヤクザリーグ』 ニンジャバットマン対ヤクザリーグ【レビュー】

バットマン・ファミリーが戦国時代の歴史改変を食い止めた『ニンジャバットマン』の続編…

【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性 自分を知ることからすべてが始まる【映画でSEL】

SEL(社会性と情動の学習)で伸ばそうとする社会的能力の一つに「自己への気づき」があります。他者を知るにも、共感するにも、自己をコントロールするにも、そもそも自分のことを全く理解していなければ始まりません。

映画『悪い夏』北村匠海 悪い夏【レビュー】

REVIEW染井為人著の原作小説は、「クズとワルしか出てこない」と話題を呼び、第37回横溝…

映画『女神降臨 Before 高校デビュー編』Kōki,/渡邊圭祐/綱啓永 女神降臨 Before 高校デビュー編【レビュー】

本作は、縦スクロール形式のデジタルコミック“webtoon”で人気を博したyaongyi(ヤオンイ)作の同名コミックを原作としています…

映画『教皇選挙』レイフ・ファインズ 教皇選挙【レビュー】

圧倒されっぱなしの120分でした。教皇に“ふさわしい”人間の境界線をテーマに、神に仕える聖職者達の言動、ひいては人格を通して…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

学び・メンタルヘルス

  1. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  2. 映画『風たちの学校』
  3. 【映画でSEL】海辺の朝日に向かって手を広げる女性の後ろ姿

REVIEW

  1. 映画『ミッキー17』ロバート・パティンソン
  2. 映画『BAUS 映画から船出した映画館』染谷将太
  3. 映画『白雪姫』レイチェル・ゼグラー
  4. 映画『ニンジャバットマン対ヤクザリーグ』
  5. 映画『悪い夏』北村匠海

PRESENT

  1. 映画『ガール・ウィズ・ニードル』ヴィク・カーメン
  2. 映画『私の親愛なるフーバオ』
  3. 映画『デュオ 1/2のピアニスト』カミーユ・ラザ/メラニー・ロベール
PAGE TOP